『Weekly Virtual News』(2025年10月30日号)
モバイル版『VRChat』、VTuber業界の“新顔”、サムスンの新型XRデバイス――新たな波が続々押し寄せるバーチャル業界
『VRChat』モバイル版が正式リリース 新たな変化の波を生み出すか
日本時間10月25日、iOS版およびAndroid版の『VRChat』アプリが正式にリリースされた。ついに、『VRChat』へ通じる門がモバイル端末にも開かれた。リリースと同時にアニメトレイラーも公開され、大々的な発表となった。
注意点としては、いずれも、PC上で起動できるバージョンと比較すると、利用できるワールドやアバターに制限がかかること。特にiOS版はAndroid版とは異なるワールドとアバターの仕様が設けられているらしく、iOS版向けのセッティングが求められる。Android版で訪問可能なワールドには足を運べるが、最適化はされていないようだ。
単純なアクセスだけでなく、「スマートフォンのアプリ」として提供されたことでハードルが下がった要素もある。一つは課金要素。『VRChat』内で利用できる専用通貨を、アプリ側から購入可能になった。これまでも『Steam』などで購入はできたものの、購入までのハードルはやはりスマートフォンのほうが低い。VRモード中にスマートフォンのアプリで課金し、再びVRモードに戻って、アバターやアイテムなどを購入する遊び方もできるだろう。
ためしにQuill買って動かしてカメラ撮影まで📸
できる!カメラはさすがに画面ちっちゃすぎて操作ちょいしんどいけどw pic.twitter.com/iIAlJ9sl2Y— 浅田カズラ (@asada_kadura_vb) October 25, 2025
もう一つは通知だ。『VRChat』側で発生する様々な通知――イベントの開始や、所属コミュニティの全体連絡などが、スマートフォン上でチェックできるようになった。これまでPCなどのクライアントか、Webブラウザのホーム画面でチェックするしかなかったが、これらをよりチェックしやすくなったのは大きい。
ユーザーやワールドの検索もアプリ側から可能になったため、出先でワールド検索・お気に入り登録やフレンド申請を行い、家に着いたらすぐにそれらへアクセスすることもできる。ソーシャル機能をモバイル端末に取り込むことで、ソーシャルVRとしてより生活に溶け込みやすくなった。
……が、やはり最大のポイントは、誰もが手にするスマートフォンから『VRChat』へアクセスできることに尽きるだろう。筆者の見える範囲でも、これを機に『VRChat』に触れてみた人の声や、iOS版・Android版から訪問可能な著名ワールドのアクセス数増加が報告されている。アクセスのハードル低下が、新たな人口増加につながるか、今後数カ月単位で注目していきたいところだ。
eスポーツチーム「SCARZ」とビクターエンタテインメントがVTuber事業参入
接近が続くVTuber業界とゲームストリーマー業界を象徴するような出来事が起きた。10月22日、プロeスポーツチーム「SCARZ」とビクターエンタテインメントが共同でVTuberプロジェクト「MeSTAGE」を始動した。
SCARZは、音楽の世界へ。
この度、ビクターエンターテインメントとともに、VTuberプロジェクト「MeSTAGE」を始動いたしました。
そして、Content Creator部門にDELUTAYA(@mgmgoi4)、煌イヴ(@evekiramekiii)の2名が加入いたします❤️🔥
今後の活躍にぜひご期待ください🤝
📝https://t.co/kf0osi0egI pic.twitter.com/txRlyxZVNM
— SCARZ (@SCARZ5) October 22, 2025
若年層を中心に支持を集めつつあるものの、ハードルの高さも依然としてあるeスポーツを、音楽の力と合わせてより広く発信していくことを目指すプロジェクトとのことで、始動と同時にDELUTAYA、煌イヴの参加が発表された。
eスポーツ/プロゲームチームには、近年VTuberの参加も増えつつある。ZETA DIVISION運営のGANYMEDEは、VTuberブランド「UltraLMTM」の始動とオーディション開始を発表したばかりだ。逆に、近年は「アバターを持つ通常の配信者」も存在している。VTuberとプロゲーマー/ゲームストリーマーの境目が融けてなくなる日も、そう遠くないのかもしれない。
事業譲渡や「誹謗中傷加害者の意識調査」など、VTuber業界でレアな動き
VTuber業界では移籍の動きも見られた。GREE子会社・REALITY Studios株式会社運営のVTuberグループ「Vebop Project」が、「あおぎり高校」を有する株式会社viviONへ事業譲渡・運営移管されたトピックだ。
「Vebop Project」のメンバーには大きな変化が起こらず、運営が別の会社へ変わる形だ。「あおぎり高校」は「おもしろければ、何でもあり!」、「Vebop Project」は「型通りより、型破り。」をコンセプトに掲げており、その共通する方向性も事業譲渡の決め手になっている様子だ。運営がまるごと移動するケースは、所属タレントの喪失などを回避する一手でもあるため、今後も選択肢として増えていくとよさそうだ。
にじさんじでは興味深い動きが見られた。所属タレントの甲斐田晴へ、悪質な誹謗中傷や荒らしを行っていた人物への和解が成立した報告の中で、「当該人物への意識調査」を公開したのだ。人物のプロフィールや行為内容、そして「なぜそうしてしまったのか」が提示されている。
【当社所属ライバー「甲斐田晴」に対する極めて悪質な誹謗中傷行為・荒らし行為等への対応結果について】
日頃よりバーチャルライバーグループ「にじさんじ」・「NIJISANJI EN」を応援いただき、誠にありがとうございます。…
— ANYCOLOR株式会社 (@ANYCOLOR_Inc) October 22, 2025
今回のケースでは、加害者は20代後半の女性。「強い承認欲求と日頃のストレス」から、タレントとの距離を縮めたいと考えて行為に及んだとのことだ。タレントや他のファンが困惑し、不快に感じることを「面白がっている」「自分に反応している」と捉え、それで承認欲求を満たしていたという心境を、自身でも異常だったと述懐している。
精神状態がよくない人が、なにかを埋め合わせようとこうした行為に及ぶという話は、チラホラと耳にするようになった。しかし、そうした状態の人間が行うべきは、休息や通院である。前例を示すことで、誹謗中傷行為等の抑止につなげたいという動きは、昨今の誹謗中傷対策の流れを象徴するかのような、前のめりな姿勢を感じさせる。
サムスンのXRデバイス『Galaxy XR』 ウリはGoogle連携か
ひさしぶりにXRデバイスの新顔が現れた。サムスンが10月22日に発表したXRデバイス『Galaxy XR』だ。
コンセプトはAppleの『Vision Pro』にそっくりだが、構造は『Meta Quest Pro』に近く、中身はAndroid XR。それゆえ、基本的なGoogleアプリに対応し、Google製AIのGeminiが組み込まれているのが最大の特徴だ。PVでもこの点がプッシュされており、AIと対話しながら日常生活を送る空間コンピュータとして打ち出されている印象だ。
価格は1,799.99ドル。2025年10月30日現在のレートでは約27.5万円だ。ただし、販売は米国と韓国向けで、日本向けにはリリースされていない。とはいえ、実戦レベルの生成AIも組み込まれたXRデバイスの実力は気になるところだ。日本上陸にも期待したい。




















