『Dice Gambit』運と貴族を味方につけて、美しき街を守り抜け――クセのあるビジュアルが素敵な高難易度SRPG

『Dice Gambit』レビュー

 『Dice Gambit』をプレイした。本作はChromatic Inkというスウェーデンのスタジオが初めて手掛けるSRPGだ。

 一作目とは思えないほど緻密に作られた戦闘バランスや、愛らしくてクセのあるビジュアル、ゲームを彩る多彩なBGMなど、とても高品質な作品だった。それでは要素をひとつずつ見ていこう。

Dice Gambit | Release trailer

 物語の舞台はネオタリスというローマ風の都市。しかし、クロマという怪物に襲われ、大変な目に遭っている。クロマを倒すはずの審問官も、戦いのなかで死んでしまった。

 主人公はそんな審問官の遠い親戚であり、死んだ人間の代わりに白羽の矢が立った。婚約者や世継ぎとともに戦いつつ、ネオタリスの大物貴族とも渡り歩き、街からクロマを一掃しなければならない。

 本作は大きく、拠点パートとSRPGパート(マップ探索と戦闘)に分かれている。

 拠点では、パーティーのビルドアップが行え、SRPGパートに備えることができる。まず、大事なのは「アカデミー」だ。こちらは各キャラクターにアビリティやパッシブ(スキル)を付与したり、経験値を買ってレベルを上げたりすることができる。

 最初は秘書のステッキしか技を教えてくれないが、後述する貴族たちと親睦を深めていくことで、アカデミーで教われる技の数を増やしていくことができる。ナイフを用いた手数で圧倒する技や、タンクとして防御力を上げていく技など、貴族によって得意分野が異なるので、バランスよく取得していきたいところだ。

 本作は仲間キャラクターが加入する代わりに、結婚によってパーティーメンバーを増やしていくことになる。審問官一族に嫁いでくる人間は誰もが腕に覚えがあり、最初からそれなりに戦うことができる(必ずしも男女でなくても結婚は可能だ)。スキル構成を見ながら、誰と結婚するか決めていこう。

 そして、ある貴族によって遺伝子改造技術を手に入れたのちは、両親のパラメータを参照したふたりの子供が加入していくことになる。中盤以降はこの子供たちが主力になっていくため、大所帯を管理していくシミュレーションゲームの様相も帯びてくるのだ。

 とはいえ、最初の段階は特に何をしたらいいのかもわからないので、しばらくは出撃を繰り返すことになる。SRPGパートのことだ。主人公たち一族は貴族たちによって三分割されたネオタリスの各地に赴き、クロマたちを根絶やしにしていく。

 本パートはいわゆる『XCOM』シリーズのような作りだ。数週間後までにクリアしなければいけない大目標(強力なクロマのいるボスステージの突破だ)を達成するために、中規模のステージを何度かクリアして、敵の行動パターンを理解し、パーティーを強くしていく。

 どれかひとつのミッションを選択すると、ノード型のマップ画面に飛ばされる。ここでは敵との戦闘や、回復ポイント、何が起こるかわからないイベント、貴族たちとの親睦など、さまざまなマスが用意されている。

 気を付けるべきは、移動の際にスタミナを消費する点だ。スタミナを消費すればするほど、キャラクターのステータスが段階的に下がってしまう。出撃させなければある程度回復してステータスも元に戻るので、やはり『XCOM』よろしくパーティーのローテーションをすることがカギになる。一応、拠点内の診療所でお金を払えばスタミナを回復できるが、最後の手段にしておきたい。

 戦闘もグリッド型のSRPGであり、行動順に沿って敵味方が入り乱れ、戦っていく形式だ。正直、SRPGファンなら親の顔より見たことのあるスタイルだろう。

 本作のキーとなるフィーチャーはここであり、キャラクターはまずターン開始時にダイスを5つ振る。出目は、アビリティ用、近接攻撃用、移動用、防御用、オールマイティの5つだ(最大2回だけ振り直すことができる)。

 近接攻撃、移動、防御は言わずもがななので省略するが、面白いのがアビリティとオールマイティだ。それぞれネオタリスを牛耳る貴族たちの家紋になっているのがかっこいい。

 アビリティは、先述した拠点のアカデミーで最大4つまで取得できるものである。出目のアビリティをひとつ支払うだけで使用できる固有アビリティと、色々な出目の組み合わせで使用できる3つのスキルがある。

 移動と近接攻撃だけをしていては、到底勝ち目のないほど敵が多いので、必然的にアビリティを駆使していくことになるし、タイミングによってはダイスが余ることもある。

 たとえば「火炎放射器」というアビリティは、近接攻撃と移動がひとつずつあれば使用できるので「今は敵に近づきたくないな……」という際に最適だ。

 また、このアビリティ構成はなかなか重要で、出目が偏りすぎると、その出目が一切出なかったときに、アビリティを全く使えないターンが来てしまうことがある。必ずしも強そうなアビリティだけで構成したからといって使えるわけではないのが肝である。

 そしてオールマイティの出目だが、これは何にでも使える代わりに、マップ内の敵が少しずつ強くなってしまう。あまりにオールマイティに頼りすぎるわけにはいかないが、リロールしたら要らない出目が出てしまうかもしれない……というリスクがあるわけだ。

 クリティカルと回避によって多少のランダム性はあるが、こちらの攻撃は必中なので、しょうもないファンブルで戦略を曲げられてしまう恐れはない。振られたダイスのなかでいかに立ち回るかがすべてだ。この運と戦略のバランスがとてもたまらないのである。

 ビジュアルは見ての通り、全キャラクターが三白眼で、骨格を強調した細身の体型をしており、刺さる人にはたまらないデザインだ。特に貴族たちの性格はユニークで、ナンセンスジョークが飛び交う会話劇は長すぎず短すぎずちょうどいい。おまけにデートイベントまで存在している。

 戦闘中から拠点に至るまで数多く用意されているBGMも心地よく、何の曲がかかっているか表示されるのもグッドだ。

 戦闘回数の割にマップや敵のパターンが少ない点や、大量のユニットが密集するとアイコンやゲージが重なって見づらくなる点は問題だが、数ある『XCOM』や『Darkest Dungeon』のフォロワーのなかでも、ここまで出来のよいものは珍しいだろう。骨太なSRPGや、マクロ&マイクロマネジメントを楽しみたいという人にはオススメの作品である。

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