シチリア“裏社会”の美しくも恐ろしい生き様を知る 『マフィア:オリジン ~裏切りの祖国』をプレイして

『マフィア:オリジン ~裏切りの祖国』をクリアした。
本作はHanger 13が開発し、2Kが販売するクライムアクションゲームだ。元炭鉱夫の青年・エンツォを操作し、美しくも恐ろしいシチリアの裏社会でのし上がっていくことを目的とする物語である。
20世紀初頭のシチリアを克明に描いたアートワークは素晴らしく、クラシックカーでどこまでもドライブしたい気持ちに駆られる。ストーリーも王道ながらドラマチックで、マフィア“映画”に求められている要素がしっかりと詰まっていた。反面、ゲーム自体の作りは前時代的で、遊びの面では大きな感動は得られないだろう。それでも、本作には手に取ってもらいたいだけの魅力があるということをお伝えしたい。
物語は、1904年のシチリア島で始まる。主人公のエンツォ・ファヴァーラは、父親が借金のカタとして鉱山に売ったせいで、幼少期から激務を強いられていた。青年期に差しかかった彼は、友人のガエターノとともに鉱山の奥地にまとまった金を隠していた。その金で高跳びしてやろうと画策していた最中、鉱山の崩落と現場監督の不手際によってガエターノが亡くなってしまう。
ついに堪忍袋の緒が切れたエンツォは、現場監督であるイル・メルロにナイフを向ける。揉み合いになり、ようやく鉱山から逃げられたものの、行き着いた先はドン・トリージというマフィアが仕切っているエリアだった。しかし、エンツォの闘志を認めたトリージは、イル・メルロからの追撃を払ってやったうえ、エンツォに下働きをさせてやることにした。かくしてエンツォは、マフィアたちの血で血を洗う薄暗い世界に入っていくことになる。
『マフィア:オリジン ~裏切りの祖国』は、Hanger 13が開発してきた「マフィア」シリーズの過去作同様に、オープンワールドのマップのなかで、一本道のシナリオを追っていく作りになっている。本作では「過去作のように広いオープンワールドが存在しない」と開発が明言していたが、たしかに広さはそこまでではない。くわえて従来と同じく、ストーリーパートと探索パートがぱっきりと分かれており、クリアするだけならマップ探索は一切行う必要がない。
ゆえに、道中で手に入れる通貨や収集物を使用したアップグレードなどに大した意味がない点が残念だが(この点は後述する)、逆に言えばゲーム性によってストーリーが邪魔されることはないため、純粋に映画的なシナリオを楽しみたいプレイヤーにとっては良いことだろう。
ゲーム自体も過去作からほぼ変わっておらず、カットシーンや会話劇ののち、馬や車で移動して、銃撃戦やステルスパートを行い、章が終わる……という形だ。当然ドラマの展開によってこれらのパートは前後するが、何かミニゲームがあったり、大きなメカニクスの変更があったりといったことはない。
これらについても出来が悪いわけではないが、基本的に平凡な作りである。飽和しつつあるTPSやステルスゲームの傑作に比べると、見劣りする箇所は多分にある。しかし、本作最大の魅力は何と言ってもそのシナリオの重厚さと、丁寧な描き方だ。

























