『空の軌跡 the 1st』体験版プレイレポ 新たなスタイルで蘇った名作RPG、5時間以上遊べて引き継ぎ可の濃密さに歓喜

日本ファルコムの『空の軌跡 the 1st』体験版をプレイした。
本作は2004年に発売された『英雄伝説VI 空の軌跡』のリメイク作品だ。ファンタジー世界を舞台にした王道のコマンドバトルRPGであった原作に、さまざまな要素を追加し、大胆な調整を施したリメイク作は、独創的かつ安心感のあるRPG体験になっていた。
なお、本作は「英雄伝説」というシリーズの6作目ではあるが、この作品から「軌跡」シリーズとしてストーリーが一新されたため、本作から入っても問題はない。しかしながら、原作は『英雄伝説 空の軌跡FC』『英雄伝説 空の軌跡SC』と、外伝的な位置づけである『英雄伝説 空の軌跡 the 3rd』という3本のゲームに分かれていくため、このリメイク作一本で完結するわけではないことには注意していただきたい。

本作は導力という機器によって発達した世界。物語の舞台は小国リベールで、明るく前向きな少女エステルと、思慮深い少年ヨシュアが、遊撃士(ブレイサー)の職に就くため、日々研鑽を積んでいた。
ようやく遊撃士として認められたさなか、エステルたちの父であり有名な遊撃士でもあるカシウスの乗っていた飛行船が消息不明になるという事故が起きた。エステルとヨシュアは父を探すため、旅立つことになる。

これは序章までのストーリーであり、本作は5章仕立てになっている。序章の段階でほとんどのゲームシステムを楽しめただけでなく、内容も充実しており、全部で10個以上のクエストを受注することができた。全体で5時間から10時間ほどの体験が詰まっており、製品版にセーブデータの引き継ぎも可能なので、購入を考えている人には最良の体験版と言えるだろう。
本作は非常にオーソドックスなJRPGである。ベタだが安定感のある世界観に、武器・防具の購入やレベリング、歯応えのある戦闘システムと、ジャンルファンの心を掴んで離さない要素が余すことなく盛り込まれていた。特徴的な点を拾っていこう。

まずは、リメイクにあたって刷新されたバトルシステムだ。原作ではコマンドバトルを採用していたが、本作は「クイックバトル」と「コマンドバトル」の両方が組み合わさっている。
クイックバトルというのは、リアルタイムアクションの戦闘で、同開発の「イース」シリーズなどから輸入される形で導入されたものだ。マップを探索している最中にシームレスに敵シンボルと戦いに移行する形で、バックステップやローリングを駆使して少しずつ敵のHPを削っていくことが求められる。

そしてコマンドバトルは、その名の通りターンごとにキャラクターに命令を下していく形の、JRPGの花形ともいえるシステムだ。こちらでは回避動作が存在しない代わりに、アーツという大技を使用することができるが、次に行動が回ってくるのが遅くなってしまう。戦略的に立ち回ることが求められる。

クイックバトルである程度敵のHPを削り、敵のスタンゲージを100%にしてスタンさせると、ブレイブアタックという連携技を叩き込むことができ、その際にコマンドバトルへと移行することになる。敵とのバトルは多くの場合こういった流れになっている。ただし、リーダーキャラクターがピンチの状態で攻撃を受けると、敵の先制攻撃から始まるコマンドバトルに移行してしまうので、ダラダラとクイックバトルを続けるのは危険だ。
やってみると、雑魚戦で同じコマンドを何度も入力するような従来のJRPGと異なり、どうでもいい戦闘はサクッと済ませられるうえに、同じくらいの強さの敵にはどこまで攻撃を仕掛けるか考える必要が生まれるため、なかなか良いバランスになっていた。

なお、ボス戦は最初からコマンドバトルでスタートするので、基本的にはコマンドバトルに重きを置いたゲームであることは変わりない。
他には、グラフィックの刷新も大きい点である。元々は見下ろし型のグラフィックスタイルだったが、今回はフル3Dに変更し、キャラクターの等身もリアル寄りになった。

カットシーンはアニメチックにキャラクターが動き回り、コミカルで可愛らしい。少々ギャグのセンスが古臭いところもあるが、昨今のRPGと遜色ない作りになっていた。
戦闘中のカットインも豪華で、キャラクターが威勢よくクラフト(スキルに相当するもの)を放つところを眺めることができる。見飽きてきたら、スキップできるのも素晴らしい点だ。

そして、原作にも存在した要素だが、オーブメントという独自の成長システムが肝だ。
キャラクターそれぞれが所有する懐中時計のような機器「オーブメント」に空いた穴に「クオーツ」を嵌め込んでいくことで、キャラクターのステータスを上げたり、使用できるアーツを増やしたりすることができる。

単に入手順に埋めていけばいいものではなく、序盤から大量に手に入るうえに、それぞれに効果が細かく決まっていて、好きなようにビルドを組むことができる。店売りの単純な効果しかないクオーツから、特定の条件下で光るクオーツなど、さまざまだ。
本作のボスはなかなかに手強く、レベル上げが必要になる場面もあるが、クオーツの組み合わせ次第では意外と突破できたりと、プレイヤーがシステムに介入できる余地が多いところが気に入った。

他にも、モブキャラの会話が進行度で変化したり、素材を集めて料理をするのが楽しかったりと、ファンがJRPGに求めているものがしっかりと詰まっていた。UIも直感的で隙がなく、かなり満足度の高い一本だった。今から製品版を遊ぶのが楽しみでならない。






















