プラズマクラスター技術で『VALORANT』の平均ADRが18ポイントも上がる!? 最新の研究結果&取材からわかった驚きの事実とは

各分野のプロによる検証、そこから見えた「テクノロジーと人間の可能性」
――今回のeスポーツでの検証を行うにあたり、なぜこのような座組になったのかという成り立ちを教えていただきたいです。
岡嶋: 2023年に九州産業大学人間科学部の萩原悟一准教授と「ヒトの作業能力が向上する効果のメカニズムを脳機能計測により検証」するための研究を行い、プラズマクラスター技術によって脳の血流が上がるという発見がありました。また、2021年には萩原先生が当時在籍されていた鹿屋体育大学とレーシングゲームを使った検証を行い、プラズマクラスター技術によってレースタイムが短縮することを確認していました。そこで、「次の検証はeスポーツにするのが面白いのではないか。より高い集中力が求められるプロの選手であれば、さらに明確な効果が期待できるのではないか」と考え、萩原先生から古門先生をご紹介いただき、今回の検証をスタートさせました。
古門:私は以前からeスポーツにおける熟達化研究、特に若者や高齢者のプレイヤーを対象に、彼らがどのように上達するのかを明らかにしたいと研究していました。先輩でもある萩原先生を経由してシャープさんからお声がけいただいたのですが、個人的にもプラズマクラスター製品を使っていましたし、これまでのシャープさんがやってこられた研究内容を拝見して「これならeスポーツ分野でも結果が出るだろう」と思い、ご協力させていただきました。
ーーそこから古門さんを経由し、福岡を拠点としたeスポーツチームである戦国の西田さんにお話があった、という流れですか?
西田:そうです。私たちもプロeスポーツチームとして、選手のプレイ環境をどう整備するかは常に大きな課題だったんです。通信環境やPCなどの「モノ」の課題は解決できても、温度や空気などの「環境」はなかなか操作しにくい部分ですから。プラズマクラスター技術がこの課題を解決する可能性があると聞き、他チームに対するアドバンテージにもなり得る、非常にチャレンジする価値があると感じました。
――検証結果を聞いた時の率直な感想はいかがでしたか?
岡嶋: 正直、ゲームのことはそれほど詳しくなかったのですが、結果を聞いた時にコーチや選手から「これだけのスコアが変わるのは相当なことだ」と言われ、それが一番嬉しくて印象的でした。現場で実際にプレイしている方々の言葉は何よりも説得力がありますから。「これは本当にいける」と確信しましたね。
古門: 統計的な意味でも、私の予想を上回る期待以上の数値が得られました。ただの送風かプラズマクラスターイオンを使用しているかどうかは選手たちには伏せていたのですが、感覚で言い当てている選手も数名いたことに驚きました。
――特に「直感力」と「視野」の向上が見られたとのことですが、そのメカニズムについて詳しく教えてください。
古門:「直感力」は過去の経験に基づいてそのいろんなパターンがある中で、認識したりとか早く意思決定する能力です。「視野」については、心理学的にいうと「注意の分配範囲」みたいなもので、普段気づけないことにも気づけるようになったという認知機能の向上がみられた、ということですね。いずれも「頭の中の作業スペース」が効率的に使えるようになった結果だと考えられます。容量が増えるというよりは、例えばこれまで10使っていた認知リソースが7や8で済むようになる、つまり効率的な情報処理が可能になった、と考えていただければと。
――今回の結果から、今後に向けた技術実装の理想像や可能性はありますか?
岡嶋: 集中力向上といった人への効果を考える場合、我々としては「顔周りのイオン濃度を約10万個/cm³に保つこと」を条件に結果が出たわけなので、できるだけ人に近い場所で濃度を保つような実装を考えなければいけないなと考えています。現状空間全体を考えると、技術的に満たすことが可能な平均イオン濃度は5万個/cm³ですが、距離によって濃度は変化するため、将来技術実装することで効果が確認できる環境を作れる可能性は十分にあると考えています。
――今回の取り組みを通じて見えてきた、テクノロジーと人間の可能性について、さらに広い視点でお聞かせください。
岡嶋: 当社は25年以上にわたり「空気をきれいにする」ことを追求してきましたが、その先には「そこにいる人が健康で幸せにいること」こそが本質だと考えています。人は1日に約20kgもの空気を吸い込んでいますが、これは食べ物(1.3kg)や飲み物(1.2kg)の何倍もの量なんです。これほど大量に触れている「空気」が、我々が気づかないうちにポジティブな影響を与えているとしたら、それは非常に面白いことではないでしょうか。目に見えない効果を検証によって「見える化」していくことで、プラズマクラスター技術が持つ、人がまだ出せていないポテンシャルを引き出す可能性を追求したいと考えています。
古門: 私の研究理念は「現場ファースト」であり、得られた研究成果を受け取った人が「楽しくいきいきと生活し続けられること」を根底に置いています。今回のプロ選手の研究もそうですが、例えばアマチュアのeスポーツプレイヤーには効率的なトレーニング方法を教えたり、高齢者のeスポーツ研究では、ゲームによる認知機能改善・維持にプラズマクラスター技術を組み込むことで、健康寿命の延伸や社会的孤立の解消に貢献したいと考えています。
テクノロジーの発展と新たな関わり方は“シーンの底上げ”にもつながる?
筆者も以前に担当した取材でゲーマーの間でも空気清浄機をオススメし合う現場に遭遇した機会(※1)があるし、喉の調子を崩しやすいため、一人暮らしを始めた瞬間から現在に至るまで、家にはずっと空気清浄機・加湿器が欠かせない。
これらの製品は、どちらかといえば喉の乾燥を防止したりと、いわば「デバフ状態を解除してくれるもの」と認識している。
それに対して、プラズマクラスター技術は、今回の取材を通して「バフをかけてくれるもの」といえるのではないかと考えた。少しのプレイングの差が勝敗に直結するeスポーツにとって、プラスの効果が出るというのは興味深い。
テクノロジーが人間の身体能力を引き上げる例は多く、スポーツ分野でいえば水着や靴の進化が競技のタイムを底上げした歴史もある。テクノロジーもeスポーツも取り扱うメディアの人間としては、今回の取り組みを通して様々な技術を持つ会社がeスポーツの分野で実験を行ったり、新たな関わり方を模索してくれれば面白いと思うし、それがシーン全体における実力の底上げになれば、なんて妄想も捗ってしまう。
これらは夢物語ではなく、実際にシャープは「QT DIG∞」とのスポンサー契約を発表していたり、先日行われたVALORANTの公式大会である『VCT(VALORANT Champions Tour Pacific Stage 2 Finals Tokyo)』にもオフィシャルパートナーとして協賛。会場内にロゴを掲出したほか、空気浄化技術“プラズマクラスター”搭載の空気清浄機・イオン発生機を会場に設置し、快適な空気環境を提供して選手を応援&大会をサポートするという同社ならではの協賛方法を取っていた。
今回はあくまで製品の話ではなく、技術検証の結果を元にした発表会ではあるが、先述したようなeスポーツシーンやテクノロジー全体の未来に想いを馳せるようなワクワクを抱かせてくれるものだった。岡嶋氏も取材時に語っていたが、プラズマクラスター技術が人体にポジティブな影響を与える理由については、まだ未解明な部分も多いという。今後も様々な研究や検証を行っていくというシャープのプラズマクラスター技術からは、ますます目が離せない。
※1:https://realsound.jp/tech/2021/08/post-842078_2.html



















