中国と日本では「市場が異なる」TikTok Shopの“勝ち筋”とは? UUUMのライブコマース責任者に聞く

「TikTok Shopはクリエイター先行で盛り上げるのは難しい」
ーー実際に運用してみての手応えと課題はいかがですか?
岡田:まだ市場が立ち上がり始めたばかりで、我々だけでなく、セラー様もクリエイター側に向き合う会社も、全員で市場を作っている状態です。例えば、我々が抱える数万人のクリエイターネットワークのクリエイターでも、現状ではTikTok Shopで数万円しか売れず、そのうちの10%しか収益にならないとなると、その時間を使ってYouTubeを更新した方が収益に繋がる、と優先度がなかなか上がらない状況です。市場が大きくなってからでは遅いため、先行者有利という点で、いかにクリエイターをモチベートし、アシストしていくかが重要です。成功事例をいかに早く作れるかが課題であり、準備を進めているところです。
小塚:YouTubeはクリエイターが先行して成長し、そこに企業案件などが付随していきましたが、TikTok Shopではクリエイター先行は難しいと感じています。セラー先行でSMB(中小企業)から始めるのが現状の流れであり、いかにクリエイターが「面白そう」と思ってもらえるように見せるかが、我々の介入ポイントだと考えています。
ーーこれまでアフィリエイトプログラム等でクリエイターと話してきた上で、興味深い反応はありましたか?
岡田:面白いと思ったのは、現行ルールではサンプル受け取り後14日以内に投稿が必要なのですが、サンプル発送のタイミングもセラー側の都合によるため、クリエイターの活動計画に影響が出ることが課題として挙げられました。 一方で、基本的にクリエイターからはポジティブな反応をもらっています。これまでは案件で指定された商品を紹介することが多かったですが、オープンなプラットフォームで自分が気になる商品や実際に愛用している商品を紹介して収益を得られることに、新しさや面白さを感じているようです。
小塚:クリエイター自身が使っている商品だと熱量が全く異なり、レコメンドのクオリティも格段に上がると感じています。
ーーUUUM様の競合他社との差別化や優位性について教えてください。
小塚:クリエイターマネジメントの競合では、もともとTikTok LIVEを中心にライバーマネジメントや広告ビジネスを行っている会社が多く、マイクロ・ミドルのクリエイターと深く関わっています。彼らは数を囲い込む戦略ですが、弊社はYouTubeクリエイターを多数マネジメントしており、大手事務所との連携もあるため、大きく仕掛けていけるようなクリエイターを発掘する戦略を取っています。市場からの期待は、UUUMが長年培ってきた対クリエイターのマネジメント力にあると考えています。
岡田:フリークアウトグループ全体として、LINEの広告システムやTVerの広告など、メディアやサービス提供者が最良のサービス・コンテンツづくりに専念できるよう、テクノロジーでマネタイズ面を支援してきました。クリエイターマネジメントも同様で、クリエイターが安心して世の中に面白いコンテンツを生み出し続けられるよう、我々が支援するという「縁の下の力持ち」のような役割を担っています。AI時代においてフリークアウトグループならではのテクノロジーと、「人」によるクリエイターマネジメントを組み合わせることで差別化を図っていきたいと考えています。
ーーライブ配信とショート動画、どちらに可能性を感じていますか?
小塚:我々の仮説としては、プラットフォーム側の特性とアーリーフェーズである現状から、ショート動画に注力しています。ファンがいる一定規模のクリエイターであればライブ配信で集客しコンバージョンを狙えますが、現時点では商品の力がまだ強くないこともあり、ショート動画を重ねてコンテンツの賑わいを演出する方が良いと考えています。また、ライブコマースは短期的な売上スパイクになりやすく、事業コントロールがしにくいという側面もあります。キャンペーンや大型セール時には有効ですが、現状はショート動画をベースにしています。
岡田:北米ではライブコマース比率が10%程度というデータもありますが、日本における初動1ヶ月のデータではライブコマースからの売上が約半数という情報もあります。これは、元々外部誘導でライブコマースを行っていた方々がまずTikTok Shopに参入した影響が大きいと考えています。しかし、これまでライブコマース経験のないクリエイターが対応できるようになるには時間がかかり、我々のような会社が育成していく必要があります。トップクリエイターであっても、編集型のエンタメコンテンツ制作と、商品のストーリーを魅力的に伝え購買につなげるライブコマースのスキルは、全く別物です。その他にも、インスタライブがファン向けであるのに対し、TikTokは9割以上がファン以外に見られるというプラットフォーム特性も理解し、適切なコミュニケーションデザインが必要です。
ーー相性が良いと考える業界や業種、クリエイターとは?
岡田:個人的に非常に楽しみにしているのは「推し活系」です。日本のユーザーはVTuberや宝塚、K-POPなどへの投げ銭や課金といった「推し」に対する熱量が非常に高く、配信とファンエコノミーがマッチする可能性が高いと考えています。
小塚:アパレルは既存のライブコマースでも人気があり、価格調整のしやすさや着用感の分かりやすさから相性が良いと言われています。今後機能開放される可能性のある分野としては、医療機器商材(コンタクトレンズなど)、子ども向け商材、無形商材、出版物などが考えられます。特に書籍は、TikTokのコンテンツでも本の紹介が多く、知識欲を掻き立てる点で可能性を秘めています。
岡田:中国ではスターバックスのクーポンやノーブランドの商品も売れており、特に「TikTok映え」する商品が強いと感じています。例えば、水に入れるとタオルになる圧縮タオルや、顔に乗せると泡立つ洗顔料のように、動画として分かりやすく、面白く、低価格で試しやすい商品の相性が良いでしょう。我々は、日本に先行してTikTok Shopが上陸・急成長している東南アジアなどにも拠点があるため、それらの国での見せ方を学び、日本のセラー企業に対して「TikTok ShopならこのSKU(商品)が良い、この見せ方が良い」とコンサルティングできると考えています。
ーーその他、この領域におけるUUUM社の強みだと言える部分はありますか?
小塚:日本はペイメントや個人情報の取り扱いなどにおいて、より厳重な文化と大前提があるため、中国のやり方をそのまま持ち込むことはできません。 しかし、弊社の強みとして、アフィリエイトパートナーとしてクリエイターに商品を紹介してもらう際、社内外のチェック体制をきちんと引き、薬機法などの規制を遵守した上で、安全にクリエイターがトライできる環境を提供しています。
岡田:近年、PR表記をめぐる不備などが原因で炎上した他社事例も散見されます。弊社は質の高いクリエイターアサインとコンテンツ管理で差別化を図っていますし、これは今回のTikTok Shopの取り組みにおいても強く打ち出せる部分だと考えています。






















