中国と日本では「市場が異なる」TikTok Shopの“勝ち筋”とは? UUUMのライブコマース責任者に聞く

UUUM、TikTok Shopの“勝ち筋”
UUUM株式会社 社長室ユニット ライブコマースグループ グループリーダー小塚雄基氏、株式会社フリークアウト・ホールディングス East Asia (China/Taiwan/South Korea) CEO岡田梨佐氏

 Bytedance社が運営するショートムービープラットフォーム「TikTok」にて、6月30日よりアプリ内で商品の販売から購入が可能となるEC機能「TikTok Shop」が提供開始された。

 TikTok Shopはクリエイターがオススメしたいと思った商品をショッピング機能付きの動画やLIVE配信内に表示し、アプリ内で直接販売できるサービス。スタートしたばかりとあって今後の動向が気になるが、率先してその市場に参入している会社のひとつがUUUMだ。

 今回はUUUM株式会社 社長室ユニット ライブコマースグループ グループリーダーの小塚雄基氏と株式会社フリークアウト・ホールディングス East Asia (China/Taiwan/South Korea) CEOの岡田梨佐氏にインタビューを行い、両者がTikTok Shopに感じる可能性とUUUMならではの”勝ち筋”について語ってもらった。

「日本国内ではライブコマースはなかなか定着していない」

ーーTikTok Shopは既存のECやライブコマースとどのように違うのか、仕組みやユーザー・セラー側のメリットを含めて教えてください。

岡田:従来のECはユーザーが能動的に買い物をするのに対し、TikTok Shopは動画やライブ配信を見て偶然出会った商品を購入する「発見型」という点が一番の違いです。Bytedance社は中国の人口14億人の膨大なデータを駆使し、破格の年収で優秀なエンジニアを採用するなど、TikTokの強さの源泉となるレコメンドアルゴリズムに徹底的に投資しています。だからこそ、TikTokはユーザーがついつい見続けてしまうほど、好みに合わせて最適化されており、TikTok Shopはまさに彼らにしかできないECの新しい形だと感じています。セラーにとっては「発見型」だからこそ、潜在的なニーズを持つ新規ユーザーを取り込める点が最大のメリットです。

ーー岡田さんは以前中国に住んでいたとのことですが、中国のライブコマース市場の変化や重要性についてどのように捉えていますか?

岡田:2018年6月に上海に住み始めた頃には、すでにライブコマースが当たり前のように存在していました。プラットフォームも進化を続け、特に11月11日の「独身の日」や6月18日のセール時には、お祭り騒ぎのように商品が販売されます。ユーザーにとってはそのタイミングで買うのが最も安いという認識があり、私もそこで初めてライブコマースを体験しました。中国のライブコマース市場には「Austin(口紅一哥)」という圧倒的なトップライバーがおり、彼一人の裏には100人規模のチームがいて、機材や広告配信などをリアルタイムで動かしています。先日の中国出張でも「ECの未来」を見てきたと感じています。

ーー小塚さんにお伺いしたいのですが、国内のライブコマース市場については、この数年でどのように変化していると見ていますか?

小塚:日本国内では、ライブコマースはなかなか定着していないのが現状です。いくつかのプレイヤーやプラットフォームが一巡しましたが、事業化やマネタイズにまでは至っていません。ビジネス界隈では動画やSNSを活用したコンテンツ販売は検討されるべき面白さがあるものの、ユーザー側がなかなか付いてこないのが国内市場における大きなポイントだと感じています。

ーー日本でこうしたサービスが定着しない要因について、どのような仮説を立てられているのでしょう?

小塚:いくつかの要素がありますが、ビジネス界隈で言えば、小売流通の仕組み自体が中国などとは全く異なる点が大きいと思います。メーカー側から見ると、既存流通との大規模取引がベースにあり、ライブコマースのような新しいチャネルでは価格調整の幅が自分たちで持てなかったり、均一価格での売価に合わせる必要があったりするなど、業界の古い慣習やリテール上の縛りが非常に大きいです。TikTok Shopがこれをどう打破できるかが、ある意味「2周目の勝負」だと考えています。

ーーTikTok Shopが始まって約1カ月ですが、どういった印象をお持ちですか?

小塚:最初ということもあって、まずは海外のライブコマースで成功体験を持つ企業や、日本市場への本格参入を狙う海外企業が多いという印象で、中国製品や海外製品が多く、美容系のプチプラ商品が7割くらいですね。

ーー実際にUUUMさんがやり取りしている企業さんはどうでしょう?

小塚:弊社が取引するセラーも初動では美容系メーカーからのお問い合わせが多いですが、UUUMの強みとして大手のナショナルクライアント様も多いので、そうした企業様へのアタックも進めています。ただ、日本の大手企業では、SNS担当、マーケティング担当、EC担当など部署が分かれており、社内での意思決定や承認プロセスに時間がかかり、スピード感が出にくいという課題があります。広告宣伝費か販促費かといった予算配分の問題もあり、なかなかトライできない企業が多い印象で……現状はよりコンパクトでPDCAを早く回せるD2Cブランドの方が相性が良いと考えています。

ーーUUUM社として、TikTok Shopについてどのような取り組みをされているのか、改めて教えてください。

小塚:Bytedance社がTikTok Shopに関してリリースしている認定パートナープログラムが大きく3つあります。ひとつは「TSP(TikTok Shop Partner)」。こちらではセラー側の出店サポートや、TikTok上での公式アカウント運用サポートを行います。弊社はEC機能を持たないため、アカウント運用代行をメインにご支援しています。ふたつ目は「CAP(Creator Agency Partner)」。TikTokクリエイター側のマネジメントで、弊社の従来のYouTubeクリエイターマネジメントのノウハウを活かしています。最後は「TAP(TikTok Affiliate Partner)」。セラーとクリエイターをマッチングさせるアフィリエイトプログラムです。

ーーセラーとクリエイター、相互にどのようなアプローチをしていますか?

小塚:TikTok Shopでは、売る人が商材を自由に選べるのが特徴です。クリエイターがショップの商品から能動的にピックアップして紹介できます。しかし、実際には販売利益やアフィリエイト手数料だけでは能動的に動かない場合が多いので、アフィリエイトプログラムとして具体的な案件を提供し、可能であれば固定報酬もセットで活動を後押ししています。

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