『超探偵事件簿 レインコード』“忘れられても忘れられない”記憶に残るバディ 相棒としての信頼感、箱入り令嬢との友情から見る「死に神ちゃん」の魅力

記憶に残るバディ「死に神ちゃん」の魅力

 未解決事件に挑むダークファンタジー推理アクション『超探偵事件簿 レインコード』が、6月30日にゲームリリースから2周年を迎えた。筆者は、過去に執筆していたゲーム雑誌で本作の紹介記事を手掛けたことがあり、以前から存在は知っていた。だが、興味を持ちつつも当時はプレイに至らなかった。

 その後、本作の開発元・トゥーキョーゲームスが世界観等を手掛けた『TRIBE NINE』にハマり、同社の他作品にも触れてみたくなった。そして今年3月に本作を手に取った。そして、雨が降り続ける街「カナイ区」の独特な雰囲気、あまりにも個性的なキャラクターたちに一瞬にして心を奪われた。

 そのなかで心を鷲掴みにされた人物がいる。それは、主人公・ユーマに取り憑く「死に神ちゃん」である。現実では人魂のような姿、謎迷宮ではゴシック衣装を身にまとう女の子の姿になり、ユーマを導く相棒的な存在だ。本稿では、ゲームを通して筆者が感じた彼女の魅力について迫っていく。

※本稿には『超探偵事件簿 レインコード』のネタバレが一部含まれます。

コミカルな存在感ながら、主人公をしっかりサポートする頼れる相棒

 ゲーム開始時、紫色のふわふわした人魂のようなかわいらしい生き物に会う。それが死に神ちゃんだ。彼女は、とある契約により主人公・ユーマに取り憑き、その姿はユーマのみ認識できる。ユーマの横でふよふよと浮き、彼をいじったり、時には推理の手助けをしてくれる。

 死に神ちゃんと一緒にいると、とにかく楽しい。彼女は昭和の漫画キャラクターのような見た目をしており、感情豊かでコロコロと顔が変化するところが、見ていて飽きない。

 本作の要でもある現実世界の謎が具現化した「謎迷宮」では、死に神ちゃんの見せ場が待っている。

 迷宮に入ると、彼女は人型に変身。ピンク色の大きな三つ編みを下げ、ゴシック調の華やかな衣装を着用し、スラリとした長身の姿だ。姿が変わっても中身はそのままで、現実世界以上にユーマを困らせる存在になる。人型になり更に可愛さが増し、より彼女の良さが魅力的に映り、筆者は彼女の虜になってしまった。とにかく可愛くて、お転婆で目が話せないのだ。

左が人型に変身した死に神ちゃん

 迷宮内での彼女は、これでもかというほどやりたい放題。謎を解く鍵を出すと思いきや、虹色の嘔吐物とともに吐き出したり、ユーマの首を鎌で切ったり、殴ったりと、なかなかのバイオレンスっぷり。だが、キメるところはキメるのが死に神ちゃんだ。ユーマの推理中は、彼にサラッとヒントを与え進むべき道を示し、しっかりとサポートする頼もしい姿が見られる。そのギャップにハマり、終始彼女に翻弄されてしまった。

ユーマを殴る死に神ちゃん

ユーマとの信頼で築き上げた「箱入り」超探偵・フブキとの友情

 彼女の姿は、現実ではユーマにしか見えない(一部例外はある)。そのため、ユーマと同じく未解決事件の撲滅を掲げる組織「世界探偵機構」に属する超探偵らとは謎迷宮で初めて顔を合わせる。

 死に神ちゃんの魅力が詰まったとある超探偵とのエピソードがあるので、ぜひ紹介したい。それは第3章「探・偵・失・格」で共に調査をする超探偵・フブキクロックフォードとのエピソードだ。

 フブキは名門一家の令嬢で、とてもマイペースな女性である。世間知らずで独特な思考を持っており、ユーマたちといつも会話が噛み合わない。お転婆な死に神ちゃんとは、真逆な性格だが相性がバツグンなのだ。

 と言っても、2人の出会いは「ビッチ」「暗黒神」とお互いを呼び合い罵り合う、最悪なものだった。その後もフブキは、死に神ちゃんをずっと暗黒神と呼び続けたり、推理に穴があると強く当たる。だが、一緒に推理を進めていくなかで、彼を信じ支える死に神ちゃんの姿を見て、考えが変わっていくのだった。

推理中に言い争う死に神ちゃんとフブキ

 章の終盤で謎迷宮を出る際、フブキはユーマと会話を終え、笑顔で死に神ちゃんに駆け寄る。それまでの無礼をフブキは謝罪し、死に神ちゃんは驚く。謎迷宮の冒険(出来事)を通し、「あなたは立派な案内人だった」と死に神ちゃんに伝えたのだった。そして、フブキは「あなたが大好きになった」「お友達になってください」と笑顔で詰め寄る。

死に神ちゃんに詰め寄るフブキ

 死に神ちゃんは頬を赤らめ、フブキの目を見ずに「どうせ忘れちゃうから…意味ないんだけどね」とこぼしながら、ブンブンと手を上下に揺らし強い握手を交わすのだった。その後ユーマと話すフブキの横で、2人から目を反らし寂しそうな表情を浮かべる死に神ちゃん。

 謎迷宮内にいる間でしか超探偵との思い出は紡げない。案の定、フブキは迷宮を出ると死に神ちゃんを忘れてしまっていた。とても切ない展開ではあるが、ユーマと死に神ちゃんが覚えていることは救いではある。

 憶測になるが、死に神ちゃんにとって友人のような存在は、フブキが初めてだったのではないだろうか。フブキは人前で怒るタイプではなかったのだが、死に神ちゃんの前では怒りを素直に表していた。2人が腹を割って言い合う姿は、まるで親友のようだった。きっとフブキにとっても、彼女は特別な存在になっていたのではないだろうか。2人の様子を見て、筆者もフブキのように、死に神ちゃんと仲良くなりたいという願望まで湧いてしまった。

 いつか続編が出たら、死に神ちゃんとフブキが一緒に買い物へ行ったり、仲良く遊んでいるところを見てみたいものだ。

 ただかわいいだけではなく、相棒としてしっかりとユーマを支える死に神ちゃん。彼女の明るく破天荒な性格は、カナイ区の秘密を暴くにつれ荒んでいく心に、火を灯してくれるような存在だった。きっとプレイヤーだけでなく、ユーマや超探偵たちも同じ心境だったのではないだろうか。ネタバレになるので詳細は省くが、死に神ちゃんとのラストシーンは、彼女がさらにさらに好きになってしまう要素の詰め合わせのようだった。

 筆者は雨の日が苦手だ。だが、本作をプレイした後は「雨」が大好きになっていた。梅雨真っ最中で、憂鬱な気分が続いている人もいるであろう。そんなときはぜひ本作をプレイしてみてはいかがだろうか。クリア後には、死に神ちゃんたちとの思い出が蘇る雨が、きっと好きになっていることだろう。

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