『終天教団』は小高和剛&トゥーキョーゲームスの本質が詰まった作品に? 『HUNDRED LINE』との共通点が示す“成功の確度”

DMM GAMESを運営するEXNOAは5月22日、小高和剛氏率いるトゥーキョーゲームスとタッグを組んだ新作『終天教団』を9月5日に発売すると発表した。
「ダンガンロンパ」シリーズのファンを中心に、大きな注目を集めている同タイトル。本稿では、トゥーキョーゲームスが今年リリースした2つの作品との共通性、相違性から、『終天教団』の成功の可能性を考えていく。
「ダンガンロンパ」制作陣による新作“マルチジャンルアドベンチャー”『終天教団』
『終天教団』は、さまざまなジャンルの要素をふんだんに取り入れたゲームシステムを持つ「マルチジャンルアドベンチャー」だ。舞台は、終焉のときを迎えようとしている絶望と混沌に満ちた世界。そのような環境下で大きな影響力を獲得した異様な新興宗教「終天教」の教祖が何者かに殺害されたことから物語は動き出す。プレイヤーは記憶を失った教祖の生まれ変わりである主人公・下辺零として、真の復活に向けて与えられた4日間で犯人の追及と殺害を目指していく。
特徴となっているのは、誰を疑うのかによってストーリーだけでなく、 ゲームシステムも5つに分岐するというゲーム性。1つのタイトルのなかで、推理アドベンチャーや極限脱出アドベンチャー、マルチ視点ザッピングノベル、恋愛アドベンチャー(?)、ステルスアクションホラーに分類されるシステムを堪能できることが、同タイトル最大の個性である。
主要スタッフとしてクレジットされている小高和剛氏は、「ダンガンロンパ」シリーズや『超探偵事件簿 レインコード』のシナリオライティングなどで知られるゲームクリエイター。2018年、これらの作品の開発/発売元であるスパイク・チュンソフトを退社し、シナリオライターの打越鋼太郎氏(『Ever17』「極限脱出」シリーズ)、イラストレーターの小松崎類氏(「ダンガンロンパ」シリーズ)、しまどりる氏(『絶対絶望少女 ダンガンロンパ Another Episode』)らとともに、トゥーキョーゲームスを設立した。
同社にとって『終天教団』は、2020年の『デスカムトゥルー』『ワールズエンドクラブ』、2023年の『超探偵事件簿 レインコード』、2025年の『TRIBE NINE』『HUNDRED LINE -最終防衛学園-』(以下、『HUNDRED LINE』)に次ぐ、通算6作目のゲームタイトルとなる。特に今年に入ってからは、これで3作目と動きが活発化している。
『終天教団』は、2025年9月5日発売予定。対応プラットフォームは、PC(DMM GAMES/Steam)、Nintendo Switchで、価格は、通常版が税込6,980円となっている(※)。
※通常版のほか、さまざまな特典を同梱した豪華版、デジタルデラックス版が展開されている。詳しくは公式サイトを参照のこと。
『TRIBE NINE』『HUNDRED LINE』との相違性、共通性から考える『終天教団』の期待度は

小高氏やトゥーキョーゲームスが携わっていることから、「『ダンガンロンパ』の影響を感じさせる作品になるのではないか」と、シリーズのファンから注目が集まっている『終天教団』。同タイトルの成功の可能性を考えるとき、触れておかなければならないのが、2025年リリースの2作『TRIBE NINE』と『HUNDRED LINE』についてだろう。両作もまた、発表時には同様の文脈から話題性を獲得した。
前者の『TRIBE NINE』は、『八月のシンデレラナイン』や『ロマンシング サガ リ・ユニバース』『レスレリアーナのアトリエ 〜忘れられた錬金術と極夜の解放者〜』などの作品で知られるアカツキゲームスとのタッグで制作されたソウルライク・アクションRPG。プレイヤーは、デスゲームによって支配された近未来のネオトーキョー国を舞台に、失った自由と夢を取り戻すための過酷なバトルへと身を投じていく。
同作は2021年、両社によるメディアミックスプロジェクトとして発表され、2022年にTVアニメ化。一方で、もうひとつの軸とされていたゲーム化は難航し、2025年2月にようやくリリースを迎えた経緯を持つ。対応プラットフォームは、モバイル(Android/iOS)、PC(Steam)で、料金モデルは、基本プレイ無料・アイテム課金型。去る5月15日には、2025年11月をもってサービスを終了するというアナウンスも反響を呼んだ。
他方、後者である『HUNDRED LINE』は、アニプレックスとのタッグで贈るアドベンチャーだ。プレイヤーは主人公・澄野拓海の目線から、謎に満ちた学校「最終防衛学園」をめぐる「侵校生(しんこうせい)」との異能力バトルを見つめていく。対応プラットフォームは、Nintendo SwitchとPC(Steam)。価格は、通常版が税込7,700円、デジタルアートブックやデジタルサウンドトラックを同梱したデジタルデラックスエディションが税込9,900円となっている。
同作では、小高氏、小松崎氏、しまどりる氏といった「ダンガンロンパ」でおなじみの制作陣に、はじめて打越氏が合流。それぞれに輝きを放ってきた両者がどのような化学反応を示すのかに、発表時から注目が集まった。2025年4月24日の発売から約1か月ほどが経過し、Steamプラットフォームには好意的な声が集まりつつある。本稿執筆時点では全体の約90%が「おすすめ」とし、上から2番目のレビューランクである「非常に好評」へと分類されている。

このように両作に集まる評価は現状、明暗が顕著となっている。『終天教団』に期待するファンにとっては、同タイトルがどちらに近い出来であるのかが気がかりなのではないか。終末的な世界観はどちらも共通である一方で、ジャンルや対応プラットフォームには違いがある両者。現時点で明らかになっている情報から判断すると、『終天教団』は後者の『HUNDRED LINE』とより距離が近いタイトルになりそうだと言える。それは同作とのあいだに、アドベンチャーをベースにしたゲーム性、CS機に向けたパッケージ買い切り型のマネタイズモデルという共通項があるからだ。
ファンのなかには、『TRIBE NINE』が発表されたとき、「基本プレイ無料・アイテム課金型なのか…」と、その料金モデルを憂いた人もいたのではないか。おそらくそこには、「制作陣が表現する世界観を買い切りパッケージとして楽しみたい」という本音があったはずだ。同作がサービスの終了という結末を迎えてしまったことのひとつの理由には、そうした支持層の気持ちに寄り添えなかったことがあると感じている。その点、現時点で明らかとなっている『終天教団』の輪郭は、ファンが求めていた形に近いものだと言えるのではないか。
実際に過去のインタビューで小高氏は、「『TRIBE NINE』では、世界観設定やキャラクターデザイン、サウンドをトゥーキョーゲームス(※)が担当しているが、実際にゲームの中身を作っているのはすべてアカツキゲームスである」「僕がディレクションをしてシナリオを担当するタイトルは、やはりシングルプレイのゲームにこだわっていきたい」「『HUNDRED LINE』には身の丈に合わないほどの金額をかけている」と、両作の違いや自身の制作スタンスについて述べている。こうした発言の内容もまた、『終天教団』がどちらかと言えば『HUNDRED LINE』の文脈に続くタイトルであることを補強するものとなるに違いない。
そして、リリース後、『終天教団』に高評価が集まれば、業界内における小高氏やトゥーキョーゲームスの求心力はより高まっていくはずだ。そのために、彼らにとっては是が非でも成功へとつなげたい作品となるだろう。そうした背景から考えても、『終天教団』はファンが大きな期待を寄せるに値するだけの、実をともなったタイトルになる可能性が高い。
『終天教団』の発売までは、あと3か月ほど。遅れてやってきた2025年屈指の注目作に存分に期待していきたい所存である。






















