プラットフォーマーの枠を超えて、“すべての配信者を応援する企業”へ ミラティブCEOが語る、次なる一歩

ミラティブCEOが語る、次なる一歩

自社の都合は利用者には関係無い 「すべては配信者のために」

ーーその新たな展開として、株式会社アイブレイドと株式会社キャスコードが加入したミラティブグループが誕生しました。両社が抱える事業であるアイブレイドの「ぶいきゃす(VTuber案件紹介プラットフォーム)」、キャスコードの「CastCraft(配信ツール)」とのシナジーについてどのように考えますか。

赤川:「誰に何の価値を提供したいか」という事業の基本を走りながら考えていくなかで、「All for Streamers」という事業コンセプトにたどりつき、そのコンセプトに沿うと2社をグループに迎えることはとても良い初手になると思いました。「誰に」は配信者に向き合ってきた会社なのでミラティブの外の配信者と定めました。

 「何の価値を」は、ストリーマー自身がよりプラットフォーム的になっていく流れの中で、ミラティブの中だろうと外だろうと、プラットフォームを問わず彼らに共通する需要があると考えたんです。それは「①ファンを増やしたい」「②収益をあげたい」「③撮れ高をあげたい(神回を増やしたい)」という3つの需要です。この3つの需要にこたえることが「All for Streamers」コンセプトの基本です。

ーーたしかに誰もがいずれかには当てはまる気がします。

赤川:この軸に沿って考えた時、この2社はシンプルにストリーマーに欲しがられるものを作っているなと思いました。例えばキャスコードであれば、YouTubeやTwitchで活動している人が「CastCraft」を使うと、すごく簡単に配信中の画面にエフェクトを出すことができ、配信をより楽しいものにして、視聴者の満足度をアップさせることができます。さらに、視聴者をちゃんと覚えておけるCRM機能などもコミュニケーションの活性化につながります。

 個人VTuberさんと、VTuberさんと仕事をしたい企業をつなげるサービスであるアイブレイドの「ぶいきゃす」は、なかなか案件に携わる機会がない個人のVTuberさんにお仕事をお繋ぎすることで、収益の機会にもなって喜んでいただけています。本人も全力でやってくださるしファンの方々も機会を全力で応援するので、クライアントさんにも喜んでいただけています。

 結果、ミラティブという会社のアイデンティティである「配信者とファンの間にナラティブを生む」構造をさらに強固なものにできます。

ーー先ほどPC版を作らなかった理由についてお話いただきましたが、今回のグループ化では、直接PC版に踏み出さないものの、PCを使っている配信者の方々を含めてフォローしていくことになりますよね。これによって、今後は2社のサービスを経由して、スマホでの配信に興味を持った方にはミラティブを使ってもらう、という流れも考えられているのでしょうか?

赤川:グループ化によって「CastCraft」や「ぶいきゃす」の利用者がミラティブに来てくれるのか、ということは、正直あまり考えていません。それはあくまでこちらの都合であり、提供者論理でしかないですからね。いまVTuberとして活動している人がYouTubeやTwitchを選んでいるのには理由がありますし、基本的には活動している場所で伸びていきたいと思っているでしょう。彼らが「結果的にミラティブに来た方が良いことがある」と思ってくれたら嬉しいですが、一旦はYouTube、Twitchなどでの活動を支援させていただくだけです。

 その際、ミラティブが長年蓄積してきたアセットを使うことで、これまでの2社の価値をより増幅してユーザーさんへの価値提供ができます。例えば、ミラティブは世界中のゲーム会社さんとコミュニティ支援の取り組みをさせていただいているので、ゲーム会社さんに「VTuberさんやストリーマーさんを巻き込んでのコミュニティ支援もできますよ」とご案内できたりもします。

 向き合う対象がこれまでのミラティブの配信者さんに加えて、YouTube、Twitch、TikTokで活動しているストリーマーにも広がることで、掛け算で事業機会も増えるのを実感しています。これまでのミラティブでは、2018年頃は初期のにじさんじやホロライブに使っていただいていましたが、以降は独自路線を歩んでいたのでVTuber文脈としてはあまり捉えられていませんでした。ゲーム実況としても「友だちの家でゲームやってる感じ」路線だったのでプロプレイヤーの文脈とも違う路線でした。

 ただ、今回の戦略によって改めてVTuberやストリーマーの事務所さんと話す機会が増えており、今の規模になったからこそできる価値提供がたくさんあることを実感しています。大手か個人かなどの出自を問わず、、とにかく「配信者の求めているもの」を様々な形で価値提供していけることにも自信を持っています。

ーーたしかに、ファンから見ると、応援しているクリエイターの露出が増えたり、応援しやすくなったり、それをきっかけにコミュニケーションが生まれやすくなったり、という側面があるのはありがたいですもんね。今後どのような広がりを望まれているのでしょうか?

赤川:ミラティブはアプリ自体の海外展開に過去3度チャレンジしましたが、正直上手くいったとは言い難いです。一方で、YouTubeやTwitchのなかでは日本発のVTuber文化が世界的に成功しているように、配信の領域では日本もミラティブも世界から見ても独自のアセットやノウハウを持っていると感じています。今回のグループ化によって、世界中の方に「CastCraft」をはじめ配信者の喜ぶ価値を届けていけるんじゃないかと感じています。

 あとは、世界中のストリーマーやVTuberといった方々と、ゲーム会社さんやゲーマーに製品を届けたいクライアントの需要との間に立つことで、マーケティング支援のようなこともやっていきたいと思っています。配信文化を深く理解しているミラティブならではの「ゲーム・オタク文化に強いクリエイティブエージェンシー」のような形でもお手伝いができるのではないでしょうか。

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