誰もが目を疑った「リズム天国」「トモコレ」新作発表 「プチプチおみせっち」との共通性に見た“任天堂らしさと原点回帰の姿勢”

最新『ニンダイ』に見た原点回帰の姿勢

 任天堂は3月27日、『Nintendo Direct 2025.3.27』を配信した。

Nintendo Direct 2025.3.27

 数多くの注目作が発表されるなかで、とりわけ話題を集めたのが『リズム天国 ミラクルスターズ』と『トモダチコレクション わくわく生活』の2タイトルだ。本稿では、「リズム天国」「トモダチコレクション」のゲーム性から、両シリーズの復活に見え隠れする任天堂の思惑を考えていく。

ニンテンドーDSの時代を彩る名作シリーズ「リズム天国」「トモダチコレクション」

リズム天国 ミラクルスターズ [Nintendo Direct 2025.3.27]

 「リズム天国」は、2006年にゲームボーイアドバンスで発売された音楽ゲーム『リズム天国』を初作とするシリーズだ。プレイヤーは流れる音楽のリズムに合わせてボタンを押すことで、与えられた課題のクリアや、高スコアの獲得、新たなリズムゲームの解放などを目指していく。

 対応ハードの普及状況からくる影響もあり、初作こそ30万本ほどを売り上げるにとどまったが、その後の2008年にニンテンドーDSで発売された第2作『リズム天国ゴールド』は、日本国内で約200万本、全世界で300万本以上を売り上げる大ヒットを記録した。このほか、シリーズからはこれまでに、第3作『みんなのリズム天国』(Wii・2011年)、第4作『リズム天国 ザ・ベスト+』(ニンテンドー3DS・2015年)が発売されている。

トモダチコレクション わくわく生活 [Nintendo Direct 2025.3.27]

 一方の「トモダチコレクション」は、2009年にニンテンドー3DSで発売されたコミュニケーションゲーム『トモダチコレクション』を初作とするシリーズだ。プレイヤーは自身や家族、友達などに似せたアバター「Mii」を作成し、架空の島のマンションにいっしょに住まわせることで、彼らの暮らしぶりを見つめ、そのあいだに生まれる、現実とは異なる人間模様などを楽しんでいく。

 特徴となっているのは、明確なゴールが用意されていない点。住人の満足度の向上を目指したり、お宝を収集したりなど、それぞれに楽しみ方を選べるゆるいゲーム性が、特にライト層に受け入れられた。その後、2013年には、続編にあたる『トモダチコレクション 新生活』が発売に。同作はシリーズ作品としてはじめて北米やヨーロッパ、オーストラリア、韓国向けにローカライズされ、全世界で約700万本を売り上げている。ニンテンドーDSの時代を彩る名作として、現在もなおコアなファンに愛されているのが、「リズム天国」「トモダチコレクション」の両シリーズである。

 『リズム天国 ミラクルスターズ』『トモダチコレクション わくわく生活』は2026年発売予定。対応プラットフォームは、Nintendo Switchとなっている。

25年、26年は任天堂“原点回帰”の1年に

 先にも述べたとおり、過去に人気を博した「リズム天国」「トモダチコレクション」だが、両シリーズともにしばらく新作はリリースされておらず、前者では約12年ぶり、後者では約10年ぶりの新展開となった。ファンのなかには、続編の登場を期待する反面で、「もう新作が発売されることはない」となかば諦めていた人も多かったのではないか。『リズム天国 ミラクルスターズ』『トモダチコレクション わくわく生活』の発表は、当時を知るフリークの誰もが目を疑う、『Nintendo Direct 2025.3.27』最大のサプライズとなった。

 私は2025年1月、Nintendo Switch 2が正式発表されたタイミングで、同機のリリースと同時、もしくはそれほど遠くない時期に発売されるであろうタイトルを予想した。恥ずかしながら「リズム天国」「トモダチコレクション」の新作を私は選外としてしまったが、同記事への反響のなかには、それらに期待する声があったことをよく覚えている。両タイトルは2026年の発売を予定しているため、(2025年中のリリースが公表されている)Nintendo Switch 2のローンチタイトルとなることはない。しかしながら、満を持して登場する十数年ぶりの新作が、その普及に大きな意味を持っていくのは、否定しようのない事実だと言えるだろう。

Nintendo Switch 2 予告映像

 「最新技術を詰め込んだハイエンド機」というよりは、「ゲームという遊びの本質を追求したファミリー機」の性質が強いNintendo Switchとその後継機にとって、『リズム天国 ミラクルスターズ』『トモダチコレクション わくわく生活』は、そのスタンスを明確化する象徴的なタイトルとなっていくのではないか。

 そのような観点に立つと、おなじく『Nintendo Direct 2025.3.27』にて発表され、両タイトルに勝るとも劣らないほどの注目を集めた『たまごっちのプチプチおみせっち おまちど~さま!』にも共通性を感じとることができる。これを含めた3タイトルのサプライズ発表に、Nintendo Switch 2のローンチ期を前にしてもまったくブレることのない“任天堂らしさ”を感じたのは、私だけではないはずだ。

たまごっちのプチプチおみせっち おまちど~さま! [Nintendo Direct 2025.3.27]

 一部では、大きな話題性を獲得した3タイトルの発表を、「DS世代狙い撃ちの新作発表」と回顧する向きもある。2005年に誕生した「たまごっちのプチプチおみせっち」シリーズは、過去4作すべてがニンテンドーDSで展開されており、こちらもまた、2008年11月の第4作『たまごっちのキラキラおみせっち』発売以降、約17年にわたり、新作がリリースされていなかった。

 このような背景を踏まえると、2025年、2026年は任天堂にとって、ある意味で原点回帰のような年となるのかもしれない。任天堂ハードのファミリー機としての立ち位置を決定づけたニンテンドーDSの普及は、Nintendo Switchの成功の文脈とともに語られる機会が少なくない。後継機がローンチされる年にあえて、同社史上最多の販売台数を記録するハードで人気を博したシリーズの新作を発表してくることには、特別な意図があるとも考えられるのではないか。任天堂は、すでにローンチタイトルとしてのリリースが濃厚と目される「マリオカート」新作など、いわば定番の作品のリリースと、「リズム天国」「トモダチコレクション」など、往年の人気シリーズの復活に、“ニンテンドーDS超え”の青写真を描いているのかもしれない。

 余談にはなるが、個人的には、かねてから「リズム天国」や「トモダチコレクション」「たまごっちのプチプチおみせっち」に入れ込んで配信を行ってきたストリーマーのドコムスや、直近にこれらの実況・動画投稿を行っていたキヨが、「ドコムスダイレクト」「任天堂とズブズブ」などとミーム化されたことも印象的だった。

【ニンダイ反応】大好きなゲームの新作が3つ同時に発表されておかしくなる実況者

 『リズム天国 ミラクルスターズ』『トモダチコレクション わくわく生活』は、長いブランクで膨れあがったファンたちの大きな期待に応えられるタイトルとなるだろうか。発売の日を楽しみに待ちたい。

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