『ポケポケ』がトレード機能の改修計画を発表 成否の分岐点は“適切なコスト数の設定”か

『ポケポケ』トレード機能改修の注目点

 『Pokémon Trading Card Game Pocket』(以下、『ポケポケ』)公式は3月14日、トレード機能の今後の改修計画を発表した。

 2025年1月の実装直後から、ユーザーの不評が目立っていた同機能。改修の実現によって『ポケポケ』は失った求心力を回復できるか。本稿では、既存システムの問題を踏まえつつ、改修の注目点を考える。

2025年1月実装のトレード機能。ユーザーの不評を受け、改修計画が発表に

【公式】『Pokémon Trading Card Game Pocket(ポケポケ)』紹介映像

 『ポケポケ』は、「ポケットモンスター」シリーズを題材としたアナログTCG『ポケモンカードゲーム』をスマートフォンで楽しめるモバイルアプリだ。プレイヤーは現実の世界と同様に、さまざまなカードが収録されたパックを開封することで、手に入れたものをコレクションしたり、それらをもとにデッキを構築し、他者とカードバトルを行ったりすることができる。

 今回、改修計画が発表となったトレード機能は、今年1月に満を持して実装されたもの。リリース当時からロードマップに盛り込まれ、多くのプレイヤーから期待を寄せられていた同機能だが、特にUI/UXなどの面において、不十分な点が多いと不満の声が集まっていた。詳しくは、私が当時執筆した記事を参照してほしい。

『ポケポケ』トレード機能実装も集まる疑問の声 運営と善良なユーザーの“落としどころ”は見つかるのか

1月29日、『Pokémon Trading Card Game Pocket』(以下、『ポケポケ』)にトレード機能が実装された…

 現時点で明らかとなっている変更点は以下のとおり。

(1)「トレードメダル」について
・「トレードメダル」を廃止し、カード交換のためにカードを消費する必要がなくなります。
・代わりに♢3、♢4、⭐︎1のカードのトレードには「ひかりのすな」が必要となります。「ひかりのすな」は、拡張パックの開封などの際に、入手したカードが図鑑に登録済みだった場合、自動的に付与されます。
・現在、「ひかりのすな」はエフェクトの入手に必要なアイテムですが、トレードでの用途が追加されることを考慮し、提供量を増やすことを検討しています。これにより、以前よりも多くのカードをトレードできるようになる見込みです。
・機能変更に伴って、既に所持している「トレードメダル」は、アイテムの廃止時に「ひかりのすな」などに変換できるようになります。
・なお、♢1、♢2のトレードに変更はありません。

(2)トレードで自分の欲しいカードを、ゲーム内で公開できる機能を追加します。

 アップデートのタイミングは2025年夏から秋ごろを予定しているという。また、このほか「現在トレード対象となっていないカードのうち、⭐︎2のカードのトレードや、特定のプロモカードの再入手についても、別途検討を進めている」とのこと。こちらの続報については、変更内容や実装時期の目処がたち次第、あらためてアナウンスされるようだ。

 なお、公式はお知らせのなかで「リリース以来(いただいたユーザーの意見を踏まえ)改善のあり方について検討してきた」「今回の変更により、プレイヤー同士のカード交換がこれまでよりスムーズになり、より多くの皆様にコレクションを楽しんでいただくことを目指している」と明かしている。悪い意味で話題となることが多かった『ポケポケ』のトレード機能だが、運営側の誠実な態度、前向きな対応によって、ユーザー満足度に変化が生まれるのか。他の部分に対する調整の動向も含め、今後に注目が集まっている。

新システムは既存の問題を解消できるか。明暗をわけそうな“必要コスト”をめぐる設定

【公式】『Pokémon Trading Card Game Pocket(ポケポケ)』アルセウス登場

 先にも述べたが、私は2025年2月、トレード機能が実装されたタイミングで、運営側とユーザーのすれ違いについて取り上げている。記事のなかで問題点としてピックアップしたのは、「高レアリティのカードがトレード対象に選べないこと」「一定以上のレアリティを持つカードの交換には、『トレードメダル』という専用のアイテムが必要なこと」などだ。こうした性質によって、同機能では、本来ユーザーがトレードしたかったはずの「入手しづらいカード」を「交換できない」「交換しづらい」状況となっていた。

 また、ゲーム内において、ユーザー同士のコミュニケーションの手段が限定されている点も問題だった。条件を満たすカードの交換を希望する場合でも、「どのカードが欲しいのか」「それを手に入れるためにどのカードを提供できるのか」といった意思が表明できず、実際には掲示板やSNSなど、外部のツールを活用しなければならなかった。大きな期待のなかで実装に至ったトレード機能だったが、一連の背景からユーザーの満足度は低く、機能そのものが形骸化していた面もある。

 もちろんここには、マルチアカウントへの対策、リアルマネートレードを誘発しない仕組みづくり、基本プレイ無料であるからこその課金への導線の確保といった、ゲームを安心/安全に存続していくための運営側の意図もあったと推測する。実際に公式は実装直後の2月1日、これらが「BOTや複数アカウントによる不正を防ぎ、ユーザー間の公平性や収集の楽しさ、ゲームバランスを維持するため」に設けられたものだと説明している。しかしながら、そうした“配慮”が結果的には善良なユーザーのためになっていなかったことが、同機能をめぐる問題の本質であった。

 そのような前提を踏まえたうえで、今回発表された改修計画の内容を振り返る。上述のように『ポケポケ』公式は、「『トレードメダル』を廃止し、その役割をすでにゲーム内に存在する『ひかりのすな』に代替させること」「用途の多様化にともない、『ひかりのすな』の入手量を増やすこと(※これについては検討段階)」「自分の欲しいカードを表明できる機能を実装すること」を当該アップデートの軸とし、さらに将来的には「⭐︎2のカードをトレードの対象に含めること」「特定のプロモカードを再入手できる仕組みを設けること」を検討しているとした。

 仮にすべてが予定どおりに実装に至った場合でも、これまでのように「⭐︎3」や「クラウン」といった高レアリティカードはトレード対象にできないが、少なくとも「⭐︎2」については交換が可能となり、かつ、コストとして必要なアイテムは入手しやすくなる。くわえ、ゲーム内で交換の意思表示ができるようになるため、トレード市場の活性化も期待できるだろう。つまり、現在同機能が抱えている問題は、すべて解決に向かうというわけだ。

 こうした“青写真”をプレイヤーはどのようにとらえているのか。SNSなどを見ると、好意的に受け止めている声が目立つ一方で、まだ手放しでは喜べないという声もあった。彼らが危惧しているのは、「各カードの交換に必要な「ひかりのすな」の数、それを集める負担が、現時点では明らかとなっていない」という点だ。たしかに上述の変更がすべて盛り込まれたとしても、コスト面が足かせとなってしまっては意味がない。気軽にカードを交換できる土壌を整えることが、トレード市場の活性化、ひいてはユーザー満足度の向上へとつながるはずだ。

 そもそも「ひかりのすな」はすでにゲーム内に存在しているアイテムであり、その用途の少なさから大半のプレイヤーが余らせている実態がある。コストが「トレードメダル」から「ひかりのすな」へと変更になった結果、これまで交換のために前者を工面していたプレイヤーの努力は水泡に帰すこととなった。また、マルチアカウントで遊ぶユーザーほど、「ひかりのすな」を多く所有しており、アカウント間で自在に交換が行える見込みとなる点にも注意が必要だ。現時点で明かされている情報を見るかぎり、当初の方向性より極端に「交換しやすい」仕組みとなっている可能性がある。「システムの不備から損失を被ったプレイヤーをどの程度救済できるか」も、あらためて信頼を獲得するための分岐点となりそうだ。

 公式は今後、安心/安全な運営の維持と、多くのユーザーにとって不満のない仕組みづくりを両立できるコスト量を模索していくことになるだろう。もしかすると、双方を満たす解は存在しないのかもしれないが、それでもギャップの小さい場所に着地させることが求心力の回復には肝要となる。

 はたして『ポケポケ』はトレード機能をめぐる問題を解決できるのか。アナログTCGの良さをトレースする同機能の実装は、デジタルTCGとそのプレイヤーにとって宿願だった面もある。新興勢力ながら、すでにメインストリームとなりつつある『ポケポケ』が、ジャンルの常識をくつがえす仕組みづくり、フォーマットの確立に成功すれば、やがてはそうした新たな要素が定番のシステムとして、競合タイトルにも影響を与えていくことになるだろう。TCGのいちファンとして、『ポケポケ』が与えられた課題を無事乗り越えられることを願っている。

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