「情報発信にはエンタメが必要」ホリプロデジタル鈴木秀が語る、自治体×SNS発信の成功の要因

鈴木秀が語る、自治体×SNS発信の成功の要因

「情報発信にはエンタメが必要」だと示す企業でありたい

ーーマーケティング事業とタレント事業、そして自治体の事業は、親和性が高いとお話されていましたが、コンプライアンス意識以外で、シナジーを感じたポイントや自社のタレント育成に活かされた瞬間はありますか?

鈴木:景井ひなが「くまもと大好き大使」に就任したんですが、これは自治体の事業がなければ実現しなかったことだと思います。就任には知事の署名が必要で、様々なチェックをクリアしなければならないので難易度がかなり高いんです。自治体としっかり向き合って成功事例を作り、会社、そして所属タレントへの信頼を獲得できたことは、シナジーのあるポイントだと思います。またクライアントとしても、弊社のタレントをキャスティングする心理的ハードルがぐっと下がります。さらにタレントの親御さんにとっても、お子様の未来を一緒に担っていくパートナーとして、安心して弊社を選んでいただけるようになりました。そういった相乗効果を強く感じています。

ーー実績と信頼が得られると、できることの幅もまた広がりそうですね。新たな事業の創出に向けて、どんなことに取り組まれていますか?

鈴木:次の種でいえば、“α(アルファ)世代”に対してのアプローチですね。僕らが今この業界で生き残れているのは、Z世代に強い、Z世代のタレントが揃っていただけに過ぎません。ただ他社もZ世代がどこにいるか、どんなプロモーションが有効か、その生態系がわかってきたので、おそらく3年後にはZ世代へのプロモーションの価値が下がってきます。なので僕らとしては、α世代を取りに行く必要があります。実は5年前から粛々とやっていたんですけどね。

ーー5年前というと、まだα世代が1桁台の年齢の頃からということですね。

鈴木:僕らが4つ目の柱に「eスポーツ事業」を掲げている理由として、α世代にはリアルとメタバースの境目がないことが挙げられます。彼らのほとんどが(Nintendo)Switchを買うと無料でインストールできる『Fortnite(フォートナイト)』に触れていて、アバター文化には慣れているので、メタバースにも抵抗がないんですよ。弊社では何年も前から『Fortnite』が得意な10代のタレントを育成していて、今では多くのα世代のファンから応援していただけるようになっています。そして実は約1年半前に『Fortnite』のゲーミングクランも立ち上げました。タレント事業はいきなり跳ねるのではなく、コツコツと地道に成長していくイメージですね。

ーーリアルとメタバースのお話で言うと、景井さんがゲーム配信のYouTubeチャンネル「陰ひなののぞきあな」を始められましたね。アバターの設計を鈴木さんが担当されたと聞きました。

(参考:陰ひなののぞきあな

鈴木:経営の傍らで作るのは本当に大変で、完成まで半年かかりました。コンセプトは、うるさいマーケティングをしないことと、チャンネル登録数を重視しないこと。景井にはTikTokのフォロワーが1000万人いて、投稿も慎重にならざるを得ないなか、彼女が好きなゲームを自由にできる場所として別人格を作ろうと思い描いていました。そんななか『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』のアンバサダーになったり、『おはスタ』(テレビ東京系)に出演したことで、α世代のファンが増えてきて、ついにこのときが来たなと。自分が昔エンジニアをやっていたこともあり、自分で夜な夜な作ってどうにかリリースしました。女優、クリエイターとして1000万フォロワーをもつ景井の、新たな一面が見られるチャンネルによって、素の彼女へのエンゲージメントが高まっていきます。そしてYouTubeから見始めた人がTikTokも見にいくようになるといった循環ができると、α世代のマーケティングの成功事例になると思います。

ーーZ世代マーケティングの成功事例である景井さんを、今度はα世代の成功事例にするプロジェクトなんですね。会社としては、今後どんなことを目指しますか?

鈴木:僕らは“情報にエンターテインメントを掛け算して、より魅力的に届ける存在”でありたいです。「世界にエンタメは必要だ」と世の中に示していけたらと思っています。難しい分野の情報発信でも、弊社と一緒に取り組めば、人々に届けることができるし、理解してもらうことができる、そう思ってもらえる企業を目指していきます。

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