現実から仮想まで。建築家・水谷元と巡る建築探訪記(第7回)
『ドラゴンクエストX』好きの建築家が「海底都市ルシュカ」の集落と建築について本気で考察してみた

現実、仮想を問わず建造物という存在は空間を構成する大きな要素となっている。例えば現実における「駅」や「ビル」はランドマークともなり、そこを起点とした人々の営みなども生じ、都市空間を彩ってくれる。ゲームやアニメ、映画でも建築物がストーリーを語る上で、あるいはプレイヤーが没入するのになくてはならない要素となる。現役建築家が現実、仮想の建造物や都市空間について語っていく本連載。今回も『ドラゴンクエストX』の建築物や世界を解き明かしていこう。
今回はバージョン3で訪れることのできる竜族の暮らす「ナドラガンド」の「水の領界」に位置する「海底都市ルシュカ」を紹介する。

「海底都市ルシュカ」は「ナドラガンド」の4つ目の「水の領界」で最初に訪れる街。「水の領界」は「オーフィーヌの海」の海中にも関わらず、神獣「カシャル」の加護により種族問わず呼吸でき、かつてのドラゴンクエスト・シリーズでも海中などに潜る際は、人魚の力で泡の中に入ったりと様々な演出があったが、ここはすんなりと水の領界を訪れることができてしまう。
一番奥には神獣「カシャル」を祀る神殿があり、神殿に向かって丘に沿って集落が形成されている。

海底なので、街の中には当然魚が泳いでいる。色鮮やかな魚を見る限り、熱帯魚なのか、水温も高くて過ごしやすいのかもしれない。「水の中なのだから、歩行に必要な床や階段は必要ないんじゃない?」と思われるかもしれないが、ほどよく重力があり、地上よりもジャンプ力が高く、ふわふわと移動することができる。

海底とはいえ、竜族の街なので、鱗やトゲや牙の装飾がそこかしこに見られる。海底でふわふわと移動できるためなのか、街中にある階段も勾配がいつもより急に設計されている。

海底で荷物が浮いてしまわないようにするためか、家財道具が網で抑えられている。これなら、浮いたり、流されて家財道具がどこかに行ってしまう心配がない。隣の銀行の看板は床に固定されているのだろうか。

街の中心にある橋の下には巨大なサンゴの階段がある。他の階段は人工的に建造されたものなので、このサンゴは繁殖してたまたま形成された、階段というよりも床が段上に重なったスキップ・フロアという呼び方が正しいのかもしれない。

丘の上から街全体を眺めると、周囲にはトゲ状に隆起した岩肌が見える。建物のデザインも頂点に向かって尖った形状で、周囲の風景に馴染ませる意図を感じ、景観への配慮が感じられる。

東西の谷を跨いで街を繋ぐ橋の橋脚は、一番重要な中央の部分の根元が倒壊している!しかし、水中だから気にしないのだろう。修繕予定はあるのだろうか、気になるところだ。もしかすると、橋の下に形成されたサンゴ群や生態系への配慮もあるのかもしれない。いずれにしても橋脚が崩れるくらいだから、相当の時間が経過していることが分かる。

町の酒場へ訪れてみる。住宅も他の店舗や施設も同じデザイン。竜族らしく鱗のモチーフの外壁や柱、大きなトゲや牙の装飾が施されている。

なんと入店してから裏側を見ると、外壁が倒壊している!ほぼ廃墟と言ってもいいかと思うが、屋根や外壁がなくたって、雨風がないのだから気にしない。もしかすると他の用途の施設や住宅だったものを再利用したリノベーションなのだろうか。現実の世界でも、内装や建築の一部分の解体時の痕跡を残して、インテリアに生かした店舗などがある。建築の歴史や時代の積層を感じ取ることができるため、落ち着いた雰囲気が演出できたり、あじわいのある空間を作ることができる。

酒場のメインのホールも屋根がない。今にも崩れそうな石積みが囲んでいる。海中とはいえ、開放的で気持ち良さそうだ。よく見ると椅子に使われている岩にはクッションのように貝殻が取り付けられている。

「カシャル海底神殿」に向かう途中に位置する広場は、海藻による植栽が施されており、鮮やかなサンゴや海藻がランドスケープを演出している。中央は浮水だろうか?海中なのに?噴水を囲む列柱もやはりここでも倒壊している。

「カシャル海底神殿」の方を眺めると「オーフィーヌの海」の海上から差し込む光は神秘的な様相だ。「カシャル海底神殿」の周りには、鮮やかな魚群が何度も行き来し、「オーフィーヌの海」の豊かさを感じ取ることができる。


「カシャル海底神殿」を訪れて建物の周囲を眺めて回ると、建物を支えるロープの模様が施されたバットレス(控え壁)や、内部も同じく様々な部分が倒壊している。廃墟のような雰囲気は神殿の神秘性を高めているが、建築士としてはやはり少し気になるところ。修繕や補強の計画はないのだろうか。

エントランスホールの中心には、神獣「カシャル」の石像が祀られており、計算されているのだろう、天窓からの光が差し込む神々しい雰囲気を醸し出している。


「カシャル海底神殿」の巫女「フィナ」の謁見の間には、貝やサンゴなどの海洋生物を模した調度品や家具が並べられ、海藻が観葉植物のように配されている。上部のトップライトからは、海上からの光が差し込む。やはりここでも建築の装飾は竜のモチーフがいたるところに散りばめられているが、それぞれの海と竜のエレメントは違和感なく統一されている。重厚な作りではあるが、内外が曖昧な空間は程よく開放的で「フィナ」の人柄を感じさせる大らかな空間である。

「カシャル海底神殿」神殿を後にするときに気づいたのだが、街の街路や家屋の床には、貝殻やヒトデが埋め込まれていて、海底の薄暗い空間に彩を添えていて、「海底都市ルシュカ」の街並みを豊かにしていた。

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