【第4回】『ドラゴンクエストX』好きの建築家が「ガートラント城下町」の集落と建築について本気で考察してみた

建築家視点でみた『ドラクエX』の集落

 現実、仮想を問わず建造物という存在は空間を構成する大きな要素となっている。例えば現実における「駅」や「ビル」はランドマークともなり、そこを起点とした人々の営みなども生じ、都市空間を彩ってくれる。ゲームやアニメ、映画でも建築物がストーリーを語る上で、あるいはプレイヤーが没入するのになくてはならない要素となる。現役建築家が現実、仮想の建造物や都市空間について語っていく本連載。今回も『ドラゴンクエストX』の建築物や世界を解き明かしていこう。

 今回は五種族の中の「オーガ」が暮らす「オーグリード大陸」に位置する「ガートラント城下町」をご紹介する。主人公の種族にオーガを選んだ場合、オーグリード大陸の中で3番目に訪れる。屈強なオーガの治める国ということもあってか、街の中心にはガートラント城に通じる通りが堂々と配置されている。強い軸性はパリの「王の道」など現実世界でも歴史的に権威を感じさせる都市計画の手法として用いられてきた。とはいえ、オーガたちは権威的ということはなく『ドラゴンクエストX』の世界では身を呈して市民を守る意思の強い種族である。ガートラントでは後衛職を守りながら前衛職で戦いをリードする「パラディン」へ転職できる。

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 中心の通りの下には地下通路が配置されており、大陸間鉄道の駅に通じている。駅と直結した地下通路の左右には主要な施設が配置されており、街の構成はシンプルで利便性が高そうだ。

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 街は岩山の中心に配置されている。魔法が使える世界とはいえど、この規模を人力で削り掘るのは相当な時間と労力を必要とするはずである。クレーターを利用して開発されたドイツのネルトリンゲンや火山噴火によりできたカルデラに開発された阿蘇の街などが現実世界には存在する。屈強なオーガの自信の表れだろうか、正面に城の配置された軸性の強い構成は守備を疑うが、天然の要塞と考えるのが自然かもしれない。岩山を削って彫刻したのだろうか、城の裏にはオーガのツノのモチーフが見える。

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 ゲーム内では「地下通路」と表現されているが、地下通路の地盤面が1階面と捉えることもできる。地下通路自体の構造をよく見ると掘って作ったというより石積みのように見える。写真の正面に見える宿屋は岩山を削って作った施設のように見える。地盤の高低差を生かした街の作りが視線を上下に誘導し、色彩の乏しい石や岩などの地味な素材の街並みに豊かさを与えている。

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 街のところどこに見かけるバーゴラの柱部分の素材が気になる。木材を削ってツノをモチーフとしているのか、モンスターや動物の巨大なツノを利用しているのか気になるところ。屋根は布か皮を掛けたシンプルな作りである。

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 ガートラント城内へ。京都駅ビルを思い起こさせる迫力の大階段である。大規模な祭典や儀式を催す風景が想像できる。柱には目地が見えるので加工した石積みの円柱だろう。柱頭と柱脚には丁寧な装飾の掘りが確認される。屈強なオーガにも繊細な作業のできる技師がいるのだろう。

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 城の回廊にはオーガの彫像が立ち並び、威厳を感じさせる。斧の部分は鋳鉄だろうか。

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 ドワーフの街「岳都ガタラ」と同じく、オーグリード大陸も比較的乾燥した大陸の様子で緑は少ない。限られた材木をうまく活用するために石を加工して家具や什器を製作する技術が発達したのかもしれない。とはいえ、ベッドや椅子など体が直に触れる家具は本当に辛そうだ。体も冷えるし、痛くならないのだろうか......。

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