『メタファー:リファンタジオ』が『TGA2024』3冠獲得 示唆されるのは“JRPGへの大回帰”か
世界最大級のゲーム表彰式典『The Game Awards 2024』が12月13日に開催され、各部門の受賞作品が発表となった。最優秀作品賞にあたる「GAME OF THE YEAR(GOTY)」には、Team ASOBIが開発を、ソニー・インタラクティブエンタテインメントが発売を手掛けたアクション『アストロボット』が選出された。その裏で、新規IPながら「Best RPG」「Best Narrative」「Best Art Direction」の3部門に輝いたのが、『メタファー:リファンタジオ』だ。
アトラス35周年の記念タイトルとして開発された経緯を持つ同タイトル。本稿では、その快挙がゲーム市場に持つ意味を考えていく。
アトラスが贈る完全新作の王道ファンタジーRPG『メタファー:リファンタジオ』
『メタファー:リファンタジオ』は、アトラスが手掛けたファンタジーRPGだ。舞台となっているのは、異なる3つの国がまとまり成立した「ユークロニア連合王国」。世継ぎの王子が10年前に暗殺された同国では、現在の統治者である王までもが凶刃に倒れ、次の玉座を狙う者たちによる争いが生まれていた。被差別種族である「エルダ族」出身で、王子の幼いころからの親友でもある主人公は、相棒の妖精・ガリカとともに、彼の死の呪いを解くための旅に出る。プレイヤーはその目線から、王国全土を巻き込む王位争奪戦の行方を見つめていく。
『メタファー:リファンタジオ』の存在が明らかとなったのは、2016年12月のこと。『PROJECT Re FANTASY』の名でアトラス社内の制作プロダクション「スタジオ・ゼロ」から開発が発表されていた。当時から、同社の人気シリーズ「真・女神転生」や「ペルソナ」の主要スタッフが関わっていることで注目され、広く話題を集めてきた経緯がある。
しかしながら、その後は主だった情報が出てこず、発売が不安視される状況に。そうした動向も影響してか、2023年6月に正式タイトルが決定すると、ふたたび界隈の大きな注目を浴びることとなった。2024年4月には、発売日が同年10月11日になることが明らかに。各所での体験会を経て、発売直前の9月末には無料体験版も配信となっている。
少しずつその輪郭が見えてくるにつれ、「期待の新作RPG」としての立ち位置を確立していった『メタファー:リファンタジオ』。結果的には、そうした大きな期待に応えるだけのクオリティを持ち合わせたタイトルであったことになる。
対応プラットフォームは、PlayStation 5/PlayStation 4、Xbox Series X|S、PC(Steam)で、価格は9,878円(税込)。上記通常版のほか、パッケージ豪華版、デジタル豪華版も同時展開されている。
『メタファー:リファンタジオ』の戴冠は、JRPGを再評価する機運の一端か
ゲームカルチャーには、「RPG」とは別の文脈で使用される「JRPG」という言葉がある。接頭語として付け加えられている「J」の文字は「Japan」を意味するもの。本来は「1990年代前後に日本で生まれ、独自の進化を遂げたRPG作品」を指す言葉だったが、近年では、そこから転じ、「(金字塔ともされる)ドラゴンクエストやファイナルファンタジーの影響を受けたと考えられるゲームデザイン」「エンカウント方式による戦闘への移行」「コマンド形式のバトル」「プレイヤーに第三者の視点から物語を追体験させるストーリーテリング」といった要素を持つタイトルの総称として扱われている。
その一方で、「(特定の主人公が用意されている、キャラクターメイキングの要素がないなど)一人称視点でのロールプレイができないゲームデザイン」「一本道のシナリオ」「ポリティカル・コレクトネスに配慮しないキャラクターの存在」などを揶揄し、蔑称のように使われるケースもある。その文脈により、大きく意味を変えるのが「JRPG」という言葉である。
本稿で取り上げている『メタファー:リファンタジオ』もまた、その分類に漏れないタイトルであると言われている。ごく一部には、そのゲーム性をネガティブに捉える層も存在しているが、大半には好意的に受け止められている現状だ。Steamプラットフォームにおけるユーザーレビューでは、全体の92%が「好評」とし、上から2番目のランクである「非常に好評」へと分類されている。
『メタファー:リファンタジオ』を彩る要素のなかで、特にその個性となっているのが、「アトラスの人気シリーズから引用されたさまざまなシステム」「考えさせられるテーマを内包しつつも、万人向けでわかりやすいシナリオ」「ゲームへの没入感を高めるグラフィック/音楽」だ。上述のユーザーレビューにおいても、これらは頻繁に評価のポイントとして挙げられている。同作のゲーム性を語るうえで外せない要素がこの3つであると言っても過言ではない。こうした点が評価されたからこそ、『メタファー:リファンタジオ』は該当する「Best RPG」「Best Narrative」「Best Art Direction」を戴冠することができたのだろう。
他方、昨年の開催では、「Best RPG」をLarian Studiosの『Baldur's Gate 3』が、「Best Narrative」「Best Art Direction」をRemedy Entertainmentの『Alan Wake 2』が獲得した。どちらもフリークにとっては、“洋ゲー”に分類される作品として広く知られている。『メタファー:リファンタジオ』とは、ゲーム性や開発背景の部分で対極に位置するタイトルとも言えるだろう。
また、それぞれの賞のノミネート作品を見ていくと、国産からは、『ファイナルファンタジーXVI』や『スーパーマリオブラザーズ ワンダー』『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』『Hi-Fi Rush』が、JRPGのジャンルからは、(上述の『ファイナルファンタジーXVI』にくわえ)『Sea of Stars』がラインアップされている。もちろん対象となる年ごとに多少の振り幅が出ることは前提だが、今年の各賞を(本稿で扱う『メタファー:リファンタジオ』のほか、)『アストロボット』や『ELDEN RING SHADOW OF THE ERDTREE』『ドラゴンズドグマ2』『ファイナルファンタジーVII リバース』『龍が如く8』『SILENT HILL 2』といった、「国産」さらには「JRPG」に分類される作品たちが賑わせたことを考えると、その対照性が浮き彫りとなってくる。
私は先月末に掲載された記事のなかで、『The Game Awards 2024』のノミネート作品において、国産タイトルが躍進している状況に言及した。各部門の受賞作品が決まり、あらためて思うのは、そうしたムーブメントをJRPGに集まる再評価が後押ししているのではないかということだ。ご存知のとおり、ゲーム市場では、往年の名作をリメイクやリマスターといった形で復刻する動きが広がっている。そのようなトレンドを背景に、ここ最近では、歴史に埋もれていたシリーズが再始動するケースも増えてきた。『The Game Awards 2024』開催のタイミングで発表された『大神』の続編プロジェクトは、その最たる例と言えるのではないか。同作もまた、根本的なジャンルの違いはあれど、JRPGからの文脈を色濃く受け継いだ往年の名作であると言える。こうしたタイトルを中心に、2025年以降のゲーム業界では、さらにJRPGを再評価する機運が高まっていく可能性もある。
『メタファー:リファンタジオ』の戴冠が示唆する、ゲーム業界の少し先の未来。JRPGへの大回帰は現実のものとなるだろうか。今後の動向に注目したい。
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