『メタファー:リファンタジオ』の物語と世界観とは? 「ペルソナ」「メガテン」との共通点と相違点

『メタファー』の物語と世界観とは?

 7月6日、2024年10月11日発売予定のアトラスの新作『メタファー:リファンタジオ』から、その内容を明かす新たな動画「ATLUS Exclusive『メタファー:リファンタジオ』ストーリー編」が公開となった。

 同動画の内容から見えてきた『メタファー:リファンタジオ』の物語と世界観の姿とは。比較される機会の多い「ペルソナ」「真・女神転生」両シリーズとの共通点と相違点を考える。

「ペルソナ」シリーズのクリエイターが贈る完全新作RPG『メタファー:リファンタジオ』

『メタファー:リファンタジオ』ファーストトレーラー

 『メタファー:リファンタジオ』は、『ペルソナ3』『ペルソナ4』『ペルソナ5』のクリエイターが集結し制作されている、アトラス開発・発売の新作ファンタジーRPGだ。舞台となるのは、暗殺によって統治者である王を失い、混迷と不安のなかにあるユークロニア連合王国。本来であれば跡を継ぐはずの王子にも死の呪いがかけられ、同国では、歴史上前例のない王位争奪戦がはじまっていた。王子の親友である主人公は、その呪いを解くため、相棒の妖精「ガリカ」とともに旅に出る。プレイヤーは彼らの目線から、種族をまたぐ絆の物語を見つめていく。

 特徴となっているのは、アクションとコマンドを融合した独自のバトルシステム。関わる制作陣の名前や実績から「ペルソナ」シリーズとの関連性が取り沙汰されやすい『メタファー:リファンタジオ』だが、ことバトル部分に関しては、完成されたシリーズの良い部分は残しつつ、まだ見ぬ領域にも挑戦した革新性のあるものとなっている。また、公開されている情報を見るかぎり、スキルボードによるキャラクターの成長システムも実装されている模様。公式ウェブサイトによると、「自由度と攻略性の高さを実現したパーティーカスタマイズ」も魅力となっているようだ。

 対応プラットフォームは、PlayStation 5、PlayStation 4、Nintendo Switch、Xbox Series X|S、PC(Steam)。価格は、通常版が9,878円、パッケージ豪華版が18,480円、デジタル豪華版が15,510円となっている(すべて税込)。開発・発売元であるアトラスは今回に続き7月下旬にも、「ATLUS Exclusive『メタファー:リファンタジオ』キャラクター編」と題した登場人物の魅力を伝える動画の配信を予告している。

シナリオや世界観における「ペルソナ」「真・女神転生」との共通点/相違点は?

 今回配信された動画の総再生時間は23分ほど。内容は、要所を短くまとめたダイジェストムービー、ディレクター・橋野桂氏による主旨の説明、物語の前提となっている設定や背景の解説、主要キャラクターの紹介などで構成されていた。プロジェクトの発表当初から大きく期待されてきた『メタファー:リファンタジオ』。そのシナリオ部分が(テキスト以外の)動画という形で詳しく明かされるのは、今回がはじめてのことだった。物語が印象的なグラフィックとどのように交わっていくのかに注目し、閲覧したファンも多かったのではないか。

ATLUS Exclusive『メタファー:リファンタジオ』ストーリー編

 舞台となるユークロニア連合王国には、人の不安感情が生み出す魔法の源「マグラ」が大気中に漂っており、その増加を原因として「ニンゲン」と呼ばれる怪物たちが発生しているという。8つの種族がひとつにまとまり創建された歴史を持つ同国だが、そうした騒動のなかで王家は失墜。「惺教(せいきょう)」と呼ばれる国教が力を持つようになり、国民の支持は大教主のフォーデンに集まりつつあった。

 一方で、すべての国民が彼を支持しているのかと言われれば、当然そうではなく、反対派も少なからず存在していた。その旗印となっているのが、軍属のエリートであるルイだ。彼は「王や惺教が国に渦巻く不安の根源になっている」と説き、王の暗殺、王子への呪いの付与を断行。こうした背景から王家を支持する派閥にとってルイは王の仇であり、彼が国政を担うことは是が非でも避けるべき事案となっていた。王子の呪いを解くために旅立つ主人公にとってもこれは同様である。「これは、絆を紡ぎ、王に選ばれるための物語」というキャッチコピーが冠されている『メタファー:リファンタジオ』だが、そこには主人公がルイの打倒を目指す姿も描かれているようだ。

 主人公たちは王の葬儀の場でルイの殺害を企図するが、そのとき突如死んだはずの王の顔が空に現れ、「最も多くの民から王にふさわしいと望まれた者に次の王座を引き継ぐ」という言葉を告げる。自身の死期が近いことを悟っていた王は、代々王家に受け継がれた強大な魔術「選挙魔法」を用いて次の国政の担い手を決める決断を下していたのだった。このようにして、フォーデン、ルイを中心とする各勢力が民衆たちからの支持を競うという動乱が生まれる。主人公たちは王子とこの国を救うため、そのなかに割って入っていくことになる。

『メタファー:リファンタジオ』サードトレーラー「The King's Trial」

 制作陣の顔ぶれやシステムなどから、良くも悪くも「ペルソナ」シリーズと比べられる機会の多い『メタファー:リファンタジオ』。動画で語られた設定や背景を踏まえると、「ペルソナ」はもちろんだが、それ以上に「真・女神転生」との共通項が浮き彫りとなってくる。「主要な登場人物がそれぞれの正義のために自分の信じる道を進む」というシナリオコンセプトはその一例だ。わかりやすいところでは、主人公、フォーデン、ルイによって織りなされる三角関係が挙げられる。一見すると、勧善懲悪な物語のように思えるこの設定だが、おそらく物語を深く読み解くほど、「愛するユークロニア連合王国を素晴らしい国家にしたい」という想いがそれぞれの心の奥底に見えてくるのではないかと想像した。

 主旨の説明とともに全体のナレーションを担当していた橋野氏の言葉によると、「『メタファー:リファンタジオ』の種族設定にはあえて既存のRPG作品に登場するようなものを用いず、人の持つ性格や価値観の偏りなどに着想を得た新規のアイディアを採用した」のだという。こうした人が心の内に秘めた想いの深淵に迫るストーリーテリングは、特に「真・女神転生」でシリーズの全作品を通じて繰り返されてきたアプローチだ。また、各派が雌雄を決する方法を「選挙」としたことにも、制作陣による“ある種の問題提起”が含まれているように感じた。この点も「真・女神転生」に描かれてきた物語との共通点と考えられはしないだろうか。

 一方で、シナリオ面における両シリーズとの相違点を挙げるとすれば、それは舞台と時代の設定だろう。「ペルソナ」「真・女神転生」では「リアル×現代」がその根幹に据えられているが、『メタファー:リファンタジオ』では「ファンタジー×中世」が採用されている。現実に縛られることなく、より多くのポイントを創作できるという意味では、後者のほうが関わるクリエイター陣の力量が試されていると言えるはずだ。

 同タイトルのビジュアルデザインには、『NieR:Automata』などのコンセプトアートで知られる幸田和磨氏、TVアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』などのメカニックデザインで知られる山下いくと氏、「世界樹の迷宮」シリーズのイラストなどで知られる日向悠二氏がクレジットされている。その顔ぶれからは陣営の本気度もうかがえる。『メタファー:リファンタジオ』に関連する新たな情報が発表となるたび、私たちがワクワクさせられてしまうのは、舞台設定、時代設定によってもたらされる同タイトルの世界観と、こうしたキャスティングによって生み出された視覚的な情報のマリアージュが期待を裏切っていないからにほかならない。同タイトルに描かれた魅力的な世界は、関わるクリエイター陣の総力を結集したものと言えるのかもしれない。

 新規IPとしては、“「ペルソナ」「真・女神転生」との差別化”が評価をわけるポイントとなっていくはず。その観点において、描かれるストーリーは大切な要素のひとつとなるだろう。特有の設定にいかにプレイヤーを没入させられるかが、『メタファー:リファンタジオ』が満場一致の高評価を獲得するために越えなければならないハードルであると言える。今回の動画で明かされたストーリーに関する情報は、ファンの不安を払拭するに十分なものであったように感じた。

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