『東京ゲームショウ2024』開催間近 向かい風の“見本市”は意地を見せられるか?

TGSは“見本市”の意地を見せられるか?

 9月26日から29日までの日程で『東京ゲームショウ2024』(以下、『TGS2024』)が開催される。

 コロナ禍を経て、全盛期への回帰とさらなる飛躍が求められる同イベント。2024年の開催は、今後の見本市のあり方に対する試金石となる可能性もある。はたして『TGS2024』は、リアルイベントならではの価値を示せるか。注目点からその可能性を模索する。

テーマは「ゲームで世界に先駆けろ。」 『TGS2024』がまもなく開幕

 『東京ゲームショウ』は、例年9月に千葉・幕張メッセで開かれる国内最大級のコンピューターゲームの展示会だ。ドイツ・ケルンの『gamescom』、アメリカ・ロサンゼルスの『Electronic Entertainment Expo(E3)』と並び、世界三大ゲームショウのひとつに数えられる。2023年の開催では、過去最高となる787社が出展し、24万人以上の動員数を記録した。今年は「ゲームで世界に先駆けろ。」をテーマに、さらなる規模拡大を目指す。『E3』が消滅となってしまった今だからこそ、どのような価値が提供できるかに注目の集まるイベントである。

 『TGS2024』について、主催する一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会は、国内450社、海外529社の計979社が出展予定(9月11日時点)であると明かしている。オフライン会場では、ビジネスパーソンから家族連れまで幅広く楽しんでもらえる仕組みを用意するとともに、オンラインでは、自身と分身となるアバターを通じてVR空間を巡るTOKYO GAME SHOW Digital WorldやSteam会場の企画/設営、公式番組の配信など、時間や場所の制約を超えたさまざまな体験を提供するという。

 全4日間の日程のうち、一般公開されているのは、28日(土)と29日(日)の2日間。チケットは現在、各種プレイガイド(チケットぴあ、ローソンチケット、セブンチケット、イープラス、楽天チケット、アソビュー!など)で発売中となっている。

一昨年、昨年より確実に高まる温度。『TGS2024』は見本市の今後に対する試金石に

 世界でも有数のゲームイベントとして不動の地位を獲得している『東京ゲームショウ』だが、コロナ禍に見舞われた2020年、2021年には、オフライン開催の中止を余儀なくされている。四半世紀以上の歴史のなかでもっとも来場者数が多かったのは、第28回の『東京ゲームショウ2018』。同開催では史上2番目となる668の出展社を迎え、約30万人を動員した。翌年2019年の開催では、665社、26万人超とやや減少したものの、概ね同水準の出展社数、来場者数を記録している。つまり、主催側にしてみれば、さらなる飛躍に向けてこれからというタイミングでの不運であったというわけだ。

 コロナ禍が一定の収束を迎えたのちの2022年開催では、2018年に匹敵する605の出展社を迎えたものの、14万人ほどの来場者数にとどまった。続く2023年開催では先にも述べたとおり、過去最多となる787の出展社を迎え、24万人強を動員。全盛だったコロナ禍前に迫るところまで数字を回復させている。

 一連の推移を踏まえると、『TGS2024』は今後に向けての試金石のような開催となるに違いない。過去最多となった前年を大幅に上回る979という出展社数は、そうした覚悟の裏付けとも考えられる。拡大傾向が続くゲーム市場で見本市がどのような存在感を示せるか。今年の開催には、例年以上に大きな注目が集まっていると言っても過言ではないだろう。

【TGS特別番組】開幕まで1週間!東京ゲームショウ2024 予習スペシャル

 そうした世論の期待に応えるように、『TGS2024』にはさまざまな見どころが用意されている。なかでも見逃せないのが、ソニー・インタラクティブエンターテインメント(以下、SIE)のブースだ。

 同社が『東京ゲームショウ』に出展するのは、2019年の開催以来、実に5年ぶりのこと。その間、ゲーム市場では、動画プラットフォームを活用したメーカー主導の情報発信が一般化しており、そのことが見本市に対する風当たりを強くしていた実態がある。今回の出展が盛り上がりを見せ、有意義な取り組みであると認識されたならば、見本市を取り巻く状況は変わっていくのではないか。その意味においても、SIEの『TGS2024』への参加には、大きな意味があると考えられる。

 8月23日、公式ブログにてSIEが行ったアナウンスによると、同社は、9月6日に発売となったファーストパーティータイトル『アストロボット』と、2025年発売予定の「モンスターハンター」シリーズ最新作『モンスターハンターワイルズ』の2タイトルを中心に、PlayStation 5で今後展開される予定の最新作の試遊、ステージイベント、映像視聴など、多彩なコンテンツを送り込む予定だという。

 一般公開日である9月29日10時30分からは『DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH』のトークショーを開催。製作/脚本/監督を担うコジマプロダクション代表・小島秀夫氏や、ゲーム好きとして知られる歌手の三浦大知、同タイトルに出演する声優の津田健次郎/水樹奈々/杉田智和/若山詩音、小島氏を取り上げたドキュメンタリー作品『HIDEO KOJIMA: CONNECTING WORLDS』に出演した経歴を持つ映画監督のニコラス・ウィンディング・レフン氏らによる特別な催しを届けるとのこと。このほかにもプレイステーションブースに併設されるステージでは、「PLAY! PLAY! PLAY! 一遊入魂」をテーマに、さまざまなゲストを迎え、関連するタイトルの魅力を発信していくという。一連のイベントの模様は、PlayStation公式YouTubeチャンネルでライブ配信も行われる予定だ。

 私は過去に執筆した『東京ゲームショウ2022』のイベントレポートのなかで、「見本市の今後は、オフラインでなければ体験できない価値をどのように発信できるかにかかっている」とした。「注目タイトルをいち早く試遊できること」「生で現地の熱狂を体感すること」「おなじ分野に興味・関心を持つ人たちと場を共有すること」「メーカー主導の発信ではレコメンドされないコンテンツに意図せず出会えること」。これらはその記事のなかで提示したリアルイベントならではの価値の一例である。このような要素を『TGS2024』、さらには同イベントを代表すると言っても過言ではないSIEの出展に感じ取ることができれば、見本市の可能性は無限に広がっていくのではないか。

 少なくとも現時点では、一昨年、昨年以上の熱狂を感じる2024年の『東京ゲームショウ』。あらゆる物事がオンラインで済んでしまう現代だからこそ、『TGS2024』には、リアルイベントの意地と可能性を見せつけてほしい。

大規模ゲームイベントをリアル開催する意義とは? 『東京ゲームショウ2022』現地で体験した熱狂から考える

9月15日から18日の期間、幕張メッセで『東京ゲームショウ2022』が開催された。  本稿では、3年ぶりのリアル開催となった同…

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる