関優太、スタンミら“日本発”ストリーマーの企画は「予測不可能」 Twitchコンテンツ責任者が語る、ゲーム配信業界と日本市場

Twitchコンテンツ責任者が語るゲーム配信業界と日本市場

 ライブ配信サービス『Twitch』は、近年のゲーム配信需要の高まりとともに、日本でも大きな成長を遂げてきた。9月21日から24日まで開催された『東京ゲームショウ2023』では、Twitchもブースを展開。さまざまなストリーマーがブースを訪れ、多くのファンがその様子を見守っていた。リアルサウンドテックでは、Twitchのチーフ・コンテンツ・オフィサー(CCO/最高コンテンツ責任者)を務めるLaura Lee氏にインタビュー。日本市場で急成長を続けるゲーム配信の現在地や成長戦略、今後の展望などについて聞いた。(片村光博)

世界のトレンドを作り上げるうえでの日本マーケットの重要性

――Twitchにおけるストリーマーのサポートについて、重視しているポイントを教えてください。

Laura Lee(以下、Lee):私の仕事の大事な部分となっているのが、世界中のストリーマーのみなさまをサポートするということです。最大のゴールとして掲げているのは、ストリーマーのみなさまの大きなサポーターになること。本当にいろいろなストリーマーをサポートしたいですし、まだ配信を始めたばかりの方から、フルタイムで長く続けているベテランの方もサポートしていきたいと思っています。私たちのチーム全体、Twitch全体として、大小さまざまな規模のストリーマーのみなさまをサポートするということですね。

 ストリーマーの成功というのは、個人個人で定義が違うと思います。始めたばかりの方でしたら、ごくたまに配信をするだけで十分満足でしょうし、そうした方々にも使いやすいベストなツールやコミュニティを提供しています。一方で、フルタイムで活動されているベテランの方もいらっしゃいます。そうした方にも安全に楽しんでいただけるようにいろいろなツールでサポートしていますし、コミュニティとのつながりも持てるようにしています。

――Twitchサイドの戦略として軸にしているのはどのような部分なのでしょうか。

Lee:どんなストリーマーをサポートするときにも共通することだと思いますが、大事なのは彼ら、彼女らがどのように成長したいかを理解することです。その“成長”というのも、人それぞれ、定義はさまざまです。より多くの視聴者を獲得したい方もいる一方、クリエイターとしてもっと進化していきたい、成長していきたいと考えていらっしゃる方もいて、後者の方がわれわれにとっても挑戦しがいがありますね。もともと、私たちのコアはゲーム配信でした。そのなかで多くのユーザーが多角的に、幅広く展開していくなかで、雑談コンテンツも人気が出てきているんだと思います。

 グローバルに見ても、そうした方々はクリエイターとしてのキャリアパスをご自身でコントロールしたいと思っているところがあるんです。たとえば、Ibaiという世界的にも有名なスペインのストリーマーの方(※)がいて、彼が開催するマドリードでのイベントに私も行きました。非常に広いジャンルを扱うマルチメディアイベントで、Twitchのインフルエンサーもいれば、さまざまな音楽のアーティストも来ていて、彼が定義する成長とは、そういうことなんだと思ったんです。そのためのサポートもしていきたいですね。一方で、日本では梅原大吾さんやスタンミさんのように、新しいコンテンツを配信するストリーマーが出てきています。そうした方々をサポートしていって、彼らの挑戦をより良くしていくことが、私たちの仕事です。

 たとえばスタンミさんのように新しいことにトライするというのは、とても面白いことだと思います。私も先日、VODで彼の配信を見ました。コミュニティに対して呼びかけをして、コミュニティ内での絆を活かして、沖縄でサッカーやろうよと呼びかけたところ、170人以上の方がいらっしゃった。本当に素晴らしいことだと思います。こうして幅広いタイプのコンテンツ、これまでと違ったコンテンツが影響力を持つんだなと実感しています。

 ほかの例として、スペインのTwitchではKings Leagueという7人制サッカーのリーグが人気を博しています。いろいろなサッカー選手やインフルエンサーが参加されて、自分たちで試合を開催までしています。ある地域のユーザーのみなさんが独自性を発揮されることは、とても素晴らしいと思いますし、それによってわれわれも唯一無二の配信サービスになっていくと思っています。クリエイターのみなさんにはぜひ、個人個人でクリエイティブに考えていただいて、やってみたいことにチャレンジしてほしいです。

※1500万人超のフォロワーを持つスペインのストリーマー。元サッカー選手のジェラール・ピケとともにeスポーツチーム『KOI』のオーナーを務める。

――ブランディングという面では、ほかのライブ配信サイトとの同時配信禁止もその一環かと思います。Twitchとしての狙いと、ストリーマーへの補填の可能性があればお聞きできればと思います。

Lee:私たちは、いつもストリーマーのみなさまの成長を願っていますし、いろいろな意味でオープンに考えています。現時点で同時配信のルールについて変更の予定はありませんが、今後もユーザーの方々から違った視点が出てきたり、いろいろなビジネスのやり方やアイデアが生まれてくると思いますので、そうしたものをオープンに受け止めて、ストリーマーの方々をサポートしていきたいと考えています。

――では、Twitchにおけるグローバルマーケットの現状を教えてください。

Lee:非常にラッキーなことに、日本は私たちが非常に優先している、プライオリティを高く置いている国なんです。日本は非常にゲームが盛んで、日本から生まれたトレンドが世界に広がっていったり、またその逆もあります。ゲームで世界的な成功を収めたいと思ったら、試金石として日本で必ず成功させなければいけないという側面があって、そのいい例が『ストリートファイター6(SF6)』ですね。われわれとしても良いパートナーシップを結ぶことができて、とてもクリエイティブなマーケティング戦略によって、ゲーマーの方もそうでない方も『SF6』をやるように仕掛けることができました。

 梅原大吾さんのように有名な配信者が「自分がやる」と言ってくださり、非常に盛り上げてくださったので、日本での大きなトレンドとなって、グローバルな流れが生まれていきました。結局、いまでは北米や欧州でも非常に大きなトレンドとなっています。ひとつのゲームで成功しようと思えば、日本で必ず成功させなければいけないということですね。それにくわえて、いまはまったく逆のトレンドも見えてきて、たとえば英語でしかできないゲームの『Rust』も日本で成功しました。言語が違っても、日本のストリーマーコミニティの要素をうまく取り入れることができたため、日本国外から日本へのトレンドが広がったのだと思います。

 そう考えていくと、配信の将来は非常に面白くて、いろいろな発展性があると思っています。ただ、将来がどうなるかは私たちが決めたり分かったりするものではなく、いろいろなトレンドが生まれてきて、それを私たちがどう生かしていくか。そのなかで、やはりゲームにおいては、日本をはじめとするアジアが世界でもマーケットリーダーです。今後も、日本から多くのトレンドが生まれてくると思います。

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