「軌跡」シリーズの原点がフルリメイク決定 『空の軌跡』は20年の歴史への“入門編”だ

『空の軌跡』は20年の歴史への“入門編”だ

 2024年8月27日に配信された任天堂の情報番組「Nintendo Direct ソフトメーカーラインナップ+Indie World 2024.8.27」で、Nintendo Switch向けタイトルとして2025年発売予定の『英雄伝説 空の軌跡 the 1st(仮称)』(以下、『空の軌跡 the 1st』)が発表された。「軌跡」シリーズは日本ファルコム(以下、ファルコム)が展開する、2004年PC向けに発売された『英雄伝説 空の軌跡 FC』(以下、空の軌跡 FC)からはじまり、現在最新作の2022年にリリースされた『英雄伝説 黎の軌跡Ⅱ -CRIMSON SiN-』まで続いている長寿RPGシリーズだ。

 筆者は長年の「軌跡」ファンであるが、20年という歳月で積み重なった膨大な作品数や、『◯の軌跡』というタイトルも多数存在するため、「どこからはじめればいいのか分かりにくい」「そもそもシリーズについてよく知らない」読者も多いのではないかと考える。そこで本記事では今回リメイクされるシリーズ第1作『空の軌跡 FC』について振り返りつつ、"「軌跡」シリーズとはなんぞや”ということについて紹介していきたい。

『英雄伝説 空の軌跡 the 1st(仮称)』ティザートレーラー

 まずシリーズの歴史について紹介したい。そもそも「軌跡」は1984年に発売された『ドラゴンスレイヤー』の第6作目『ドラゴンスレイヤー英雄伝説』から連なる、「英雄伝説」シリーズの系譜にあたる作品だ。そして「英雄伝説」シリーズの第1期「イセルハーサ編」、第2期「ガガーブトリロジー」に続く第3期が「軌跡」シリーズという込み入った沿革を辿っている。しかし現在発売されている「軌跡」は、タイトルに「英雄伝説」と冠されているものの、それ以前のタイトルとは関係のない独立した作品群として発展しており、冒険家アドル・クリスティンが主人公の「イース」と並ぶファルコムの看板シリーズである。

 「軌跡」は大きく分類して、『空の軌跡』『零の軌跡』『閃の軌跡』『黎の軌跡』というシリーズ内シリーズに分かれているのが特徴。『空の軌跡』はストーリー前半にあたる『空の軌跡 FC』、後半の『空の軌跡 SC』、ファンディスク『空の軌跡 the 3rd』から構成されており、今回発表された『空の軌跡 the 1st』はその前半部分のフルリメイク作となる。シリーズは異なるが『ファイナルファンタジーVII』を三部作として再構築し、序盤の山場であるミッドガル脱出までを描いた『ファイナルファンタジーVII リメイク』をイメージしてもらえると良いだろう。

 「導力」と呼ばれるエネルギーによって動く「導力器(オーブメント)」が普及している世界観で、シリーズを通して「ゼムリア大陸」と呼ばれる舞台で物語が展開する。「空」から「零」・「閃」から「黎」というように、発売順にあわせて作中の時系列も進んでいき、続編で過去タイトルのキャラクターが活躍することも多い。徐々にゲームシステムが洗練されるとともに、登場人物の成長が文字通りダイレクトに伝わるのが魅力だが、その分シリーズを追うごとに人間関係や伏線が複雑になるため、どの作品から人に勧めたら良いのかは「軌跡」ファンがいつも頭を悩ませる部分だった。だが『空の軌跡 the 1st』は1作目のリメイクで、シリーズを最初から追える物語面と遊びやすく進化したシステム面が両立したため、これ以上の「軌跡」入門作はないと言える。

『空の軌跡』は20年の歴史への“入門編”だ

 『空の軌跡』の物語はゼムリア大陸南西部に位置し、「エレボニア帝国」と「カルバード共和国」に挟まれた自然豊かで牧歌的な小国「リベール王国」に焦点があたる。主人公は民間人の保護と地域の治安を守る民間団体「遊撃士協会(ブレイサーギルド)」に所属する、“準”遊撃士(ブレイサー)の少女「エステル」。エステルの義弟「ヨシュア」とともに正遊撃士を目指し、協会に舞い込む依頼をこなしていくなかで、徐々にリベール王国を取り囲む陰謀と今後のシリーズでも登場する謎の結社「身喰らう蛇(ウロボロス)」と対峙していく。

 エステルとヨシュアの姉弟ならではの軽妙なやりとりや、心を揺さぶる感動的で没入感の高い練り込まれたシナリオが魅力であると同時に、2人の光と影・太陽と月のような対比関係と、その進展も見どころの王道ガールミーツボーイストーリーである。ストーリー的にも『空の軌跡』単体で“エステルとヨシュアの物語”は完結しているため、続編の『零の軌跡』以降は気になったらプレイしてみるという触れ方で問題ない。本記事前半でシリーズの膨大さについて紹介はしたが、プレイする前から無理にハードルを高くする必要はないのだ。

 『空の軌跡 FC』のグラフィックは2Dで描かれ、見下ろし視点で進行。戦闘システムは、「アクションタイムバトル」と名付けられた攻撃範囲や位置取りを考えながら進めるグリッドで構成された、SRPGのようなターン制コマンドバトルだった。しかし『空の軌跡 the 1st』はフル3Dで表現され、リメイク前はイラストが挿入されていた会話シーンのキャラクターアイコンも3Dモデルが使用されている。

 バトルに関してもフィールドからシームレスにコマンドバトルへ移行できるようだが、映像から読み取るに『黎の軌跡』のようなフィールド上でアクションを行っている様子ではなく、それ以前の『閃の軌跡』のようにあくまでバトルへ移行するための先制攻撃「フィールドアタック」のように見える。もしそうであればアクションが苦手な方でもカジュアルにコマンドバトルへ集中でき、なおかつバトル開始時に画面切り替えが挟まることがない『閃の軌跡』と『黎の軌跡』の折衷であるが、詳細なシステムについてはさらなる続報を待ちたいところだ。

『空の軌跡』は20年の歴史への“入門編”だ

 これまで『空の軌跡』のコンソールでの展開は、PC版を移植したPSP版、PSP版をブラッシュアップさせたPS3版リマスター「改 HD EDITION」シリーズ、キャラクターデザインの変更やフルボイス化をほどこしたPS Vita版リメイク「Evolution」シリーズが存在する。だが、現行機で遊ぶにはPS Plusの最上位プラン「プレミアム」で、PS3版をストリーミングプレイするしか方法がなく、やりたくてもアクセスしにくいという人が多かった。そのため『空の軌跡 the 1st』の発表は、もう一度やり直したいファンや気になっていた人にとっては待望のリメイクであり、この点でも“入門編”にふさわしいのだ。

 先述したように20年で重なったシリーズや複雑なタイトル展開から、ハードルが高いと思われがちな「軌跡」シリーズ。その一作目のフルリメイク版が発表されたということで、この機会に触れてみてほしいと、ファンとしては願っている。また、今回アナウンスされた『空の軌跡 the 1st』のほか、2024年9月26日には20周年記念タイトルの集大成作『英雄伝説 界の軌跡 -Farewell, O Zemuria-』がPS4/PS5向けに発売予定となっている。

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