『17LIVE』CEO ジョセフ・フア氏に聞く、ライブ配信事業の現状と“新たな挑戦” 「3つの企業を同時に経営していく感覚」

17LIVE・CEOに聞く“ライブ配信事業の今”

 コロナ禍で急速に盛り上がりをみせたライブ配信サービス。近年は「ライバー」という言葉の認知も広がり、人々の生活に溶け込んだ印象だ。

 そんなライブ配信業界を牽引する17LIVE Group Limited(以下、17LIVE)は、2024年1月26日に、共同創業者兼会長のジョセフ・フア氏がグループの取締役会長兼最高経営責任者(CEO)に再任し、変革期を迎えている。

 リアルサウンドテックでは今回、そんなジョセフ氏にインタビューを実施する機会を得ることができた。一度離れたことでわかった17LIVEの変化や中長期的にチャレンジしていく領域、海外で定着しつつあるライブコマース市場についても語ってもらった。

前回との違いは「あまりなかった」 『17LIVE』の現状を語る

ーー共同創業者として17LIVEを立ち上げられてから、一度会社を離れ、2024年1月に同社のCEOに再任されました。改めて、いまのお気持ちを伺えますか?

ジョセフ・フア(以下、ジョセフ):会社への思いは設立当初とあまり変わっていなくて、当時もいまも、同じような気持ちで日々を過ごしています。いろいろな期待がありつつ、少し不安もあるような状態ですね。ただ当時と比べると周囲からの期待値はだいぶ高いので、そこは気持ちとして大きく違うところです。スタートアップのときはそこまで期待が集まりませんが、いまはライバーもユーザーも株主もたくさんいますから。

 この再任後の2〜3ヶ月は、自分が会社を離れてから、17LIVEというサービスがどれほど変わったかを再認識する期間でした。意外とそんなに変わっていなかったんですよね。それは良いことでもあり、悪いことでもあります。良い点としては、エコシステムが変わっていないので、ユーザーやライバーさんが求めていることを私自身が理解できること。良くない点としては、4年間あまり変わらなかったということは、セーフティーゾーンに甘んじてしまっているということです。そのため、戻ってきてからの数ヶ月間は、このセーフティーゾーンを抜け出すための打開策を考えていました。

ーーサービス立ち上げ当初は、どういったビジョンをお持ちだったのでしょうか? ライブ配信業界への思いなどがあれば教えてください。

ジョセフ:立ち上げ当初の目標は、クリエイターたちに報酬を還元することでした。日本でも同様ですが、芸能界において事務所の存在が大きく、活動に対する報酬の多くを事務所が得るケースをよく耳にしました。これは良くない構造だと感じていました。ライブ配信業やコンテンツ業において、この構造を解消したいと思い、17LIVEを立ち上げました。クリエイターがコンテンツを作る労力や努力に対して、報酬を還元したかったんです。いまでも17LIVEはクリエイター(配信者)に多く還元しているプラットフォームだと自負しています。

 当初の目標と並行して、今回新たに生まれた目標は、クリエイターがファンとの繋がりを持つためのサポートをすることですね。報酬とはまた違った観点にはなりますが、原点である“クリエイターたちをサポートしたい”という気持ちは変わりません。

ーー一度会社を離れたからこそわかったことも多いのではないでしょうか?

ジョセフ・フア CEO

ジョセフ:戻ってきて最初に感じたのは、秩序に則って物事を処理するプロセスがかなり強化されていることです。マニュアルやプロセスがきちんと整備されていて、17LIVEはすごく成長しているなと思いました。ただこの強みも、裏側から見ると弱みにもなり得ます。プロセスが固定されると、革新的な新しいアイデアが出にくくなるんですよね。そのため、必要なところに配慮したフローを意識しつつ、いまの生態系に新たな風を吹かせるアイデアを模索しています。17LIVEは日本でも早い段階で縦型ライブ配信をスタートしており、ライブ配信の先駆者だったと自負しています。今後も先駆者であり続ける姿勢が大事だと思っているので、新しいものをどんどん作って、常に先頭を走りたいです。

ーーいま社内で重要視しているキーワードがあれば教えてください。

今年3月に行われた「真・戦国時代」のリアルイベントの様子

ジョセフ:ちょっと抽象的ですが、ひとつは「エキサイトメント(=ワクワク感)」ですね。ライブ配信業はエンターテインメント業と同じで、人を楽しませることがゴールですから、秩序やフローに縛られないものであるべきだと思います。ただそこに寄せすぎるとカオスになってしまうので、秩序を維持しつつ、マンネリ化しないように「ワクワク感」を生み出す方法を考え続けないといけません。

 もうひとつのキーワードは「リアル」です。ライブ配信は本物の人間同士が繋がるリアルタイムコミュニケーションですから、いま見ているものがすべて真実で、目の前に本物のライバーがいるかのようなコミュニケーションを創り出したいんです。

 昨今なぜリアリティーショーがブームになったかというと、真実をそのまま映しているわけではないにせよ、映画よりはリアルさを感じられるからだと考えています。それをライブ配信バージョンで、現実味を帯びたコンテンツを提供できたら、結構すごいことなんじゃないかなと思っているんですよ。いまのライブ配信はまだ加工や編集が多く、作り物的な部分があって、「ワクワク感」はあまりないですから。

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