メタバースで撮影された映画の祭典『第2回VRCムービーアワード』 受賞作から3作品を紹介
10分で事件を未然に防ぎ続ける『未然探偵』
つづいて紹介する『未然探偵』は、事件を未然に防ぐ「未然探偵」なる人物を描いた作品だ。10分以内の短編作品にも関わらず、複数の事件が詰め込まれているテンポの良さが評価され、脚本賞を受賞した。
また本作は脚本賞以外に助演俳優賞も授賞しており、「強くてニューゲーム」を演じる花琴いぐさ氏の演技も素晴らしく、未然探偵に対して事件の解決を依頼する姿は可愛さもありつつも、上位存在のような底知れなさも垣間見えた。
作品の世界観を彩る美術や演出に関しても統一感があり、コラージュや絵画を取り入れた独特の雰囲気は、2010年前後のシャフト作品のようでもあり、少し懐かしい気分にもさせてくれた。
『未然探偵』は作品そのものの面白さはもちろん、『Unity』をフルに活用して作られている点も、VRでの映像作品の可能性を感じられて興味深い。本作は役者の声以外のすべてを監督・カキノキ氏が1人で制作しているのである。
『VRChat』とゲームエンジン『Unity』を活用し、演者からカメラマン、美術まで1人で回せるように体制を整えたうえで撮影された『未然探偵』は、バーチャルによって映像制作の裾野が広がっていることを感じられる作品だ。