ゲームの枠を超える『フォートナイト』の未来像とエコシステムとは? Epic Games Japan代表インタビュー

Epic Games Japan代表インタビュー

デジタルにおける「所有」の在り方と、「フォートナイト」の未来

――『フォートナイト』が始まってからもう7年以上が経ちます。このような大きなタイトルを長期に渡って運営する原動力はどこにあるのでしょうか?

河崎:Epic Gamesを創業したティム・スウィーニーという人物がいるのですが、ティム自身ももともとはいわゆるインディー開発者で、アメリカの実家のガレージでPC1台を使ってひとりでゲームプログラミングを始めるところからキャリアを開始しています。当時、1980年代の終わりから90年代、あるいは2000年代に入ってからもそうですが、やはり一個人が1つのゲームを作り、それを世界のプレイヤーに届けるというのはものすごくハードルが高かったんですね。

 実際に、現在でいうPlayStationやXbox、Nintendo Switchのようなプラットフォームでゲームを出そうとすると、それぞれのプラットフォーマーメーカーのチェックを経て、昔であれば物理的なROMやCDを作って流注させるという、かなりの大企業でなければ超えられないハードルがあり、ティム自身もその壁にものすごく苦しみながら、なんとかキャリアを切り開いてきました。そうした経緯もあり、若いデベロッパーやクリエイター、ゲーム制作に興味のある人たちに、もっと世界中の人に自分が作ったものを届けられる環境を整備したいという想いが、ティム自身の中にとても強くあるんです。

 これは、Unreal Engineが生まれた背景とも重なります。「ゲーム制作をもっと誰でも手軽に行える環境を作りたい」というのが、Unreal Engineを開発して提供するきっかけになりました。また、Unreal Engineを使ってできたものを世に発信したいと思っても、デジタルになったとはいえまだまだハードルは残っています。そこで、さらに簡単にクリエイターだったり、個人の開発者の方が世界中に自分のものを届けられるようにしたいというのが、「フォートナイト クリエイティブ」と呼ばれる、ユーザーが作った島を自分で公開できるシステムを始めたきっかけですね。

――『フォートナイト』におけるコラボレーションで印象的なのは、それが一過性のものではなく、ずっとアイテムなどがユーザーの元に残り続けるということです。個人的には、マッチング中などにそうしたIPなどが一同に介している光景がとても印象に残っているのですが、こうした取り組みは意図的なものなのでしょうか?

河崎:もちろんです。またティムの話になってしまうのですが、『フォートナイト』が影も形もない頃からずっと、彼はデジタルのアセットだったり、デジタルの世界での「所有」の考え方に対して疑問を感じていました。たとえば、実際の砂場で子供たちが遊んでいるときに、「僕はルーク・スカイウォーカーの人形を持っているけれど、君はバットマンの人形を持っていて、(スター・ウォーズとDCコミックスは違うIPだから)君とは一緒に遊べない」なんてありえないですよね? でも、デジタルの世界だとそれが当たり前になっています。

 自分でお金を出して買ったバットマンのゲームと、スター・ウォーズのゲームがあったとしても、ルークを操作してバットマンと戦うことはできません。でも、「それはおかしい。ユーザーがちゃんとお金を払って買ったものなんだから、ユーザーの好きなように使えるべきだ」というのがティムの根底にある考え方でした。当時は、「そんなことできるわけないじゃないか」と笑われることも珍しくなかったのですが、現在の「フォートナイト」の世界ではそれができています。ルークとバットマンが戦うことができてしまうんですね。ティムと一緒に仕事をしていると、すごく夢想家なビジョナリストだと思うのですが、気がつくと実現してしまっているというのがすごいと思います。

 「ユーザーが実際にお金を払って、IPやクリエイターに対して正当な対価を支払って入手したものは、ユーザーが自由に使えるべき」という観点から、『フォートナイト』のスキンやアイテムはコラボが終わった後もずっとユーザーの元に残っていて、いまでは「バトルロイヤル」のために買ったものも「ロケットレーシング」やUGCの島で使うことができるようになっています。それは、チームが目指していたデジタルの中でのアセットの在り方を実現している部分なので、我々にとっても重要なファクターだと思っています。

 また、現状は『フォートナイト』だけかもしれませんが、我々はそれを独占したいとはまったく考えていません。ティムはビジョナリストですし、彼を筆頭に世界を変えたいという人たちがいろいろなことをやっているので、これが当たり前になっていってほしいと思っています。我々がその風穴を開けることで、デジタルの世界でも「自分が持っているアセットは、好きなように使えるべき」だという考えが一般化してほしいという想いはすごく強くありますね。

――『フォートナイト』が目指している将来像について教えてください。

河崎:実は、現在の『フォートナイト』が、ほとんど我々が目指していた形だと思っています。「フォートナイト=バトルロイヤル」を離れて、『フォートナイト』の中に「バトルロイヤル」があって、それ以外にもいろいろなコンテンツがあって、ユーザーのみなさまが作られたコンテンツもどんどん増えていく。その中でプレイヤーは、「ログインはしたけれど、今日は何を遊ぼうかな?」というのを友達とチャットしながら決めたり、「フェスティバル」でまったく知らないアーティストの曲を知って、今度は自分でその曲を聞いてみたり、アニメのコラボを通してその作品を実際に見てみたり、そうしたさまざまな広がりを持つデジタル空間の中で人々がソーシャライズしていくというのが、我々が「フォートナイト」を通して目指してるところです。

 さらに、その中で適正なレベニューシェアが行われることで、コンテンツを作っているクリエイターの方に売上が適切に分配されて、彼らは彼らで自分のビジネスや生活ができるという環境も作りつつ、ユーザーの方にはよりたくさんの選択肢がご提供できるという状態が理想ですね。

 今後は、その中身をさらに発展させていきたいと考えています。『フォートナイト』の外でも『Fall Guys』や『ロケットリーグ』のようなEpic Gamesのタイトルがあるので、そういったものを今後は『フォートナイト』に取り込んでいくかもしれないですし、逆にまったく違うEpic Gamesのファーストパーティのタイトルを出すこともあるかもしれません。また、「UEFN」(Unreal Editor For Fortnite。「フォートナイト クリエイティブ」にさらに独自の要素や機能を追加することができる開発者向けツールセット)というUGCを作るためのツールをもっと充実させて、個人のクリエイターやインディーズ、あるいは大規模な開発会社やパブリッシャーの方々に『フォートナイト』の中でコンテンツを出していただくような未来もあるでしょう。

 この土台をベースに、さらにコンテンツを発展させて、もっといろいろな方々が、たとえば音楽やファッションをきっかけにしても楽しめるような空間、エコシステムにしていきたいというのが、我々が目指している未来ですね。

ゲームの分野を越えて活躍するEpic Gamesと、今後の展望について

――ありがとうございます。ここまではゲームのお話を中心に伺ってきたのですが、さまざまな分野で活用されている「Unreal Engine」のように、ゲーム以外の分野においてもEpic Gamesは重要な存在となっているかと思います。こうした状況は以前から想定されていたのでしょうか?

河崎:ゲーム以外の分野のビジネスを始めてから、恐らく10年以上が経っているかと思います。もともとはすごく小さな会社で、会社名に「Game」が入っている通り、自分たちがゲームを始めるための会社として始まり、自分たちがゲームを作るために使っていたツールを他社にライセンスするところからUnreal Engineが始まりました。ですが、初期の頃から、たとえばNASAが宇宙飛行士のトレーニングをするためのシミュレーターを作るのにUnreal Engineを使っていただいていましたし、可能性としてはゲームだけには留まらないのではないかという予感は、初期のころからあったと思います。

 特に、クライアント側のハードウェアの進歩は大きいのではないでしょうか。一昔前だと、Unreal Engineは(スペック面で)重すぎるという状況もあったのですが、最近では車に搭載されているチップでも3Dの描画能力が上がってきていたりと、Unreal Engineが動くデバイスや端末がより身近に増えるようになったので、我々が入っていくことができるスペースが増えているという側面もあるかと思います。

――技術の進化とともに、Unreal Engineが活躍できる範囲も広がっていったんですね。いまでは「マンダロリアン」のようなドラマや、建築などの分野でもUnreal Engineが使われていると聞いています。

河崎:そうですね。アニメや映画、テレビドラマもそうですし、たとえばテレビ放送に出てくるバーチャルスタジオのような部分だったり、本当にいろいろな場面で使われています。実はNHKの大河ドラマ(「どうする家康」)でも背景をUnreal Engineで描画していたりするんですよ。

 建築の分野でも、姉妹ソフトのような形で「Twinmotion」というのもあるのですが、建築のビジュアライゼーションなどで使っていただいたり、あとは自動車業界でも車の中で運転者が触れるユーザーインターフェースとして使っていただいたり、販売店のコンフィギュレーターでも使っていただいたりと、日々の生活の中で知らない間に我々のツールが使われている様子を目にする機会はどんどん増えてきていると思います。

――本当に生活のいろいろなところで、Unreal Engineが使われているんですね。しかも、元を辿ると、その技術は普段私たちが遊んでいる『フォートナイト』に近いものであるという。

 近いというより、同じものと言っていいかと思いますよ。中身は同じですからね。

Epic Games Japan代表・河崎高之氏

――それでは最後に、Epic Gamesの将来像や今後の展望について教えてください。

河崎:創業者のティム・スウィーニーの思想がEpic Games全体の方向性を定めていると思います。取り組み自体はたくさんあるのですが、根本にある思想や目指しているところはひとつで、クリエイターやクリエイターを志している方々が、なるべくハードルや障害に遮られることなく自分たちのクリエイティビティを発揮し、制作したものを世に出すことができる環境を作りたい。それが、会社としてのEpic Gamesが目指しているところですね。

 だからこそ、ゲームを作るツールとしてのUnreal Engineであったり、そのアセットを購入・販売できる「Unreal Engine マーケットプレイス」であったり、ゲームがオンライン対応するためのバックエンドをサポートする「Epic Online Services」であったり、そうした作ったものを提供する場としての『フォートナイト』や「Epic Game Store」があります。

 また、ゲーム以外の分野においても、極論を言えば、スクリーンがある環境であればUnreal Engineを使っていただくことができるので、たとえばデジタルサイネージ、あるいは自動販売機や車の中のインターフェースでも良いのですが、なにかしらスクリーン上に表示する需要があるところにはUnreal Engineを使っていただける可能性があります。なので、OSとアプリケーションの間のレイヤーにあるソフトウェアとして、より幅広い業界で使っていただきたいというのも、我々が目指しているところですね。

© 2024, Epic Games, Inc.

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