10年以上の時を経て正式リリース 『7 Days to Die』開発陣から感じた、ゲーム制作への矜持

『7 Days to Die』開発陣から感じた、ゲーム制作への矜持

 アメリカのインディーディベロッパー・The Fun Pimpsは4月21日、アーリーアクセス期間中だった『7 Days to Die』(以下、『7DtD』)の正式リリース日を2024年6月に決定したと発表した。

 「永遠に早期アクセス版のままアップデートされていく」と考えられていたであろう同タイトル。本稿では、『7DtD』の正式リリース決定が持つ意味を考えていく。

12年以上の開発期間を経て、ついに正式リリースを迎えた『7DtD』

7 Days Console Edition - PAX East Footage

 『7DtD』は、7日ごとに襲い来るゾンビの大群をさまざまな工夫によって耐えしのぐオープンワールド・サバイバルクラフトだ。舞台となるのは、アリゾナ州にあるとされる架空の都市・Navezgane(ネーブスジェーン)。プレイヤーは核戦争の生き残りとして、壊滅した世界で支給品や廃墟を漁りながら、生き延びるための方法を模索していく。

 Navezganeには、核爆弾の影響によって出現したとされる大量のゾンビが生息しており、7日に一度の特別な夜「ブラッドムーンホード」のタイミングでは、オブジェクトを透視して人間へと襲いかかってくる。日々のサバイバルから得た物資やそれらを材料に作り出したアイテムを頼りに、できるだけ長い期間を生き延びることが同タイトルのゲーム性だ。

 『7DtD』は、2013年12月にアーリーアクセスがスタートした。2016年6月には、PlayStation 4版、Xbox One版もパッケージ/ダウンロードにてリリースされている。過去に施されたメジャーアップデートは20回超、開発期間は12年以上にも及ぶという。その出来から大きな支持を獲得してきたサバイバルゲームの人気作が、ようやくひとつのチェックポイントを迎えることとなった。

アーリーアクセスからの開発中止が珍しくない昨今のゲーム業界。光る『7DtD』の正式リリース決定

 ゲーム業界では昨今、『7DtD』のように早期アクセス版としてローンチし、開発の猶予期間を設けたのち、一定のクオリティを担保したタイミングで正式リリースを迎えるタイトルが増えてきている。そこには開発の複雑化による金銭的/時間的コストの増大や、(組織としての体力が比較的少ないと考えられる)インディーディベロッパーの台頭といった業界トレンドの影響があるのだろう。特にPCゲームの分野では、Steamプラットフォームを中心に、このような販売手法が一般的となりつつある。

 その一方で、上述した開発の複雑化に起因するとみられるプロダクト品質の低下の例も珍しくない。期待されたゲーム性を含まない、十分なデバッグができていないなど、早期アクセスであっても、最低限のクオリティに満たないとされるタイトルがたびたび、ユーザーの糾弾の対象となっている。

 そうした時流のなかで、早期アクセスとしてローンチを迎えたタイトルが正式リリースを迎えないまま開発中止となるケースも、少なからず耳にするようになってきた。直近では『The Day Before』の件が記憶に新しい。同タイトルは発表から約3年後の2023年12月にアーリーアクセスがスタートしたが、トレーラーなどによって告知されていた内容と実際のゲーム性に齟齬があり、かつ不具合が多くまともにプレイできなかったことから、購入者が憤慨。結果的に開発元のスタジオが閉鎖し、発売元が返金対応に追われるという事態に発展した。現在はSteamストアページこそ閲覧できるが、早期アクセス版の販売は停止されている。当然ながら開発は中止となったため、今後正式リリースを迎えることはなくなってしまった。

The Day Before - Announcement Trailer

 こうした業界の悪習慣を踏まえたうえで、今回の『7DtD』の正式リリース発表を考えると、それはある意味で快挙とも言えるのではないだろうか。開発開始から12年以上、アーリーアクセスのスタートからは10年半という歴史が物語っているのは、『7DtD』がいつ開発中止となってもおかしくないタイトルだったということだ。その間、さまざまなタイトルが悪い伝統を作り上げてきてしまったこともあり、「正式リリースされることはない」と考えていたファンも多かったはず。このままズルズルと早期アクセス版のまま開発を続けていくことも可能であっただけに、そこには開発元であるThe Fun Pimpsのゲーム制作に対する矜持のようなものも感じてしまう。「完成形と言えるクオリティに達するまでは絶対に正式リリースしない」「いくら業界のトレンドであっても、完成をうやむやにしたままアーリーアクセスを続けるつもりはない」このような気概を今回の発表には感じた。

 もちろん『7DtD』が正式リリースというチェックポイントにたどり着けたのは、同タイトルが一定の支持を獲得してきたからでもある。メジャーアップデートのたびにシステムが少しずつ変化し、早期アクセス版としてローンチされた当初からは、似て非なるタイトルとなっているが、そうした変化も含め、ファンには好ましく受け止められている現状もある。このような状況へとつながっているのは、The Fun Pimpsのゲームづくりに対する感覚が研ぎ澄まされていたからと言い換えることもできるだろう。開発力がともなわず、誤った方向へと軌道修正されていたとしたら、『7DtD』もまた悪しき前例たちのように、早期アクセス版のまま、フェードアウトしていくタイトルとなっていたのかもしれない。

 なお『7DtD』は正式リリースを機に、価格が44.99ドルへと変更される。2024年4月29日までは、ラストチャンスセールとして現行の価格の76%オフ(595円)で購入できるキャンペーンも開始された。また、PC版のリリースから1か月後の2024年7月には、PlayStation 5版、Xbox Series X|S版も海外向けに発売する予定。大型連休を目前に控えたこのタイミングで、話題のタイトルを手にとってみるのはいかがだろうか。

© 2023 The Fun Pimps, LLC. 7 DAYS TO DIE is a trademark of The Fun Pimps, LLC. All other trademarks and trade names are the properties of their respective owners.

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