恐怖動画をバズらせるゲーム『Content Warning』、なぜトレンドに? “疑似YouTuber体験”が持つ独自性とは

『Content Warning』、なぜトレンドに?

 “とあるインディーゲーム”がにわかに注目を集めている。

 『Content Warning』はなぜトレンドのタイトルとなり得たのか。ゲーム性、マーケティングの両面から、その秘密を紐解いていく。

恐怖映像をバズらせ、人気クリエイターを目指すホラーADV『Content Warning』

Content Warning: Trailer

 『Content Warning』は、スウェーデンのパブリッシャー・Landfall Publishingが4月2日に発売したホラーアドベンチャーだ。プレイヤーは「Old World」と呼ばれる不気味な世界に潜入し、さまざまなクリーチャーやオブジェクト、超常現象を撮影。その動画をゲーム内のコンテンツプラットフォーム「SpookTube」へと投稿しバズらせることで、クリエイターとしての成功を目指していく。SpookTubeには、動画の再生回数に応じて広告収入を得られる仕組みが用意されている。これを活用して得た資金を元手に機材をアップデートし、より刺激的なコンテンツを製作することが同タイトルのゲーム性だ。最大4人による協力プレイに対応している点も特徴で、ゲーム内にはボイスチャット機能も実装されている。撮影した動画には、同機能を介して音声も記録されるため、内容を確認するタイミングでは、仲間内でワイワイと盛り上がることもできる。

 対応プラットフォームはPC(Steam)のみで、価格は920円(税込)。4月4日には、不具合の修正、新たなアイテムの追加などを盛り込んだ第1弾のアップデートも実施された。

『Content Warning』トレンド化のワケは?先駆者のアイデンティティとマーケティングの妙

 一見すると、ほかにはないシステムを持っているように映る『Content Warning』だが、ゲームカルチャーには、そのフォロイーとみなされる作品が存在している。それが2023年10月にSteamにて早期アクセスがスタートしたホラーアドベンチャー『Lethal Company』だ。

 「とある企業の契約社員が与えられた利益ノルマを達成するため、放棄された星に向かい、スクラップを回収する」。そのようなゲーム性を持つ同作は、個人制作者のZeekerss氏によって開発・発売された。『Content Warning』とのあいだには、「稼いだ資金で装備を整え、より高難度のミッションに挑戦する」「最大4人によるマルチプレイが可能」「ゲーム内ボイスチャットを実装」といった共通項が存在する。リリース直後にはその特徴的なゲーム性が実況・配信界隈で話題となり、インディータイトルながら、10万人超えの同時接続数者数を記録した。Steamにおけるユーザーレビューでは、全体の約97%が「好評」とし、最高ランクである「圧倒的に好評」へと分類されている。

Lethal Company - Trailer

 『Lethal Company』が界隈で広く受け入れられた理由は、「敵に対抗する手段の貧弱さ」「マルチプレイから学ぶ集団行動の大切さ」「ゲーム内ボイスチャットによる現実的なコミュニケーション」「地形・天候条件のランダム変化」といった点にある。

 『Lethal Company』では、探索先の衛星で遭遇する敵への根本的な対抗手段がない。ほぼすべての武器が敵を倒すためではなく、「逃げる」「隠れる」といったアクションにつなげるためのクラウドコントロールとしてデザインされている。そのため、基本的には「敵に見つからないこと」「見つかったときには、なんとかして生存すること」が目標となる。そのうえで大切になるのが、参加するプレイヤー同士の協力だ。1人であれば逃げることに必死となる局面でも、そこに味方がいれば、なにかしらの形で生存を補助してくれる。可能なかぎりパーティー全員で行動をともにすることが、必須とも言える攻略の条件となっている。

 そのようなプレイヤーの連帯感を後押しするのが、トランシーバーによるコミュニケーションだ。同タイトルには、ゲーム内の物理的事情によってボリュームが変化するボイスチャット機能が採用されている。そのため、プレイヤー同士の距離が離れるとたちまち会話ができなくなり、連携が取れなくなってしまうのだ。また、地形や天候条件がランダムであることは、繰り返しのプレイに刺激性を生み出している。進行度的には苦労するはずのないダンジョンでも、場合によってはゲームオーバーの危険性があり、そのことが連帯の大切さをさらに高めている。

 先にも述べたとおり、『Lethal Company』は敵を「倒す」ゲームではなく、敵から「逃げる」「隠れる」ゲームだ。であるからこそ、危険だらけのダンジョンで孤立することは、バッドエンドへとつながる。「とにもかくにもプレイヤー全員が協力し、緊張感を持って探索に向かうこと」。これがゲームデザインの中心であるというわけだ。

 こうした先駆者のアイデンティティは、『Content Warning』にも受け継がれている。『Lethal Company』の魅力として挙げた4つの性質はすべて、同タイトルにも例外なく当てはまる。成功例のある約束されたシステムであるため、面白くないはずがないのである。

 そのうえで『Content Warning』のオリジナルな部分を挙げるとすれば、それは「潜入の模様を動画撮影し、プラットフォームに公開することで資金を獲得する」という点だ。現代人にとってはあまりにも馴染みがあるビジネスモデルをゲームデザインの中心に据えることで担保された独自性によって、同タイトルは広く支持されるに至ったのだろう。そこには配信タイトルとして取り上げたストリーマーたちの影響も大きかったように思う。現実にそのような方法ですでに大きな人気を獲得している人間がゲーム内で再生回数に悪戦苦闘する姿は、ある意味で滑稽にも感じられた。

 また、配信から24時間限定で無料配布するというマーケティング施策も、「彼らに広くピックアップしてもらい、瞬間風速的な話題性を獲得する」という意味では、効果的に作用したのではないか。ピーク時と比較してやや落ち着きつつはあるものの、『Content Warning』はいまだ、Steam同時接続者数の上位にランクインしている。現在進行形で遊ぶプレイヤーたちのなかには、配信から24時間が経過して以降に同タイトルを手に取った人も多くいるはずだ。収支状況については外部の人間が把握できる部分ではないが、現状の広がり方を見るかぎり、成功していると考えるのが自然だろう。こうしたアプローチもまた、『Fall Guys』など、前例のあるものだったが、今後は「より短い期間を無料とすることで瞬間的に話題性を獲得し、早期に収益化を目指していく」という手法が広がっていくのかもしれない。

 『Content Warning』は現在の影響力をどこまで維持できるか。一過性のトレンドからどのように脱却し、普遍的な人気作となっていくか。この点こそが、同タイトルの次なるステップだと言えるだろう。

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