タレントは“晒し”にどう立ち向かう? FIREBUG佐藤詳悟とYU-M エンターテインメント山田昌治の“SNS時代のマネジメント”

山田昌治×FIREBUG佐藤詳悟対談

SNS時代にアイドルがヒットするには「圧倒的な打席数」が必要

佐藤:テレビの影響力は、以前よりもなくなってきたと感じますか?

山田:いや、むしろまた盛り返しているのではと思います。少し前まではいまほどSNSで波及しなかったから、テレビに出てもそれだけになる事が多かった。でもいまは、SNSが日常になった事でテレビに良い出方をすれば二次波及してSNSでもざわつくから、相互作用でマラソンみたいにずっと走り続けられる。

佐藤:ああ、なるほど! たしかにそれはありますね。

山田:さすがに、音楽番組に出てCDが売れるみたいな時代はとっくに終わってしまいましたけど、いま音楽番組に出たらそこからSNSのざわつきは生まれると思うんです。

佐藤:SNSが大きくなってきたおかげで、ざわつきも大きくなっていると。

山田:そう。だからそのざわつきを利用して、また違うなにかを作れるみたいなことがあったりとかはあるのかなと思います。

佐藤:そういう意味では、いま事務所に所属している人たちの王道ルートというか、こうやって仕事をやっていけばいいみたいな方程式は持ってるんですか?

山田:たとえばアイドルグループであれば、なんだかんだ歌って踊ってライブをすることが大事と捉えていて。楽曲やパフォーマンスなどでタレントとしての地肩を鍛えていないと、もしなにかのきっかけで当たったとしても、走れないんですよ。仮にきっかけを掴んだとしても、波に乗り続けることが難しくなってしまう。

佐藤:なにかのきっかけで当たることに関して、かつてはテレビがゴールとして存在していたから、ある程度「ヒットの法則」みたいなものが存在していたと思うんですけど、いまはプラットフォームも多様化していて、難しいところですよね。

山田:打席数を圧倒的に増やす必要はあると思います。テレビはライバルの数がある程度限られていたけど、いまはおっしゃる通りプラットフォームやヒットのきっかけもいろいろあって、プロも素人も関係のない世界ですし。だからこそ、とにかくまずは打席に立つことが大事かなと。マネジメントとしてはその背中を押すことが、ヒット率を高くする方法じゃないかと思います。

佐藤:いまの新人たちって、数曲当たって、コアファンが形成されないままジェットコースターのように翌年にはもう誰も知らない、みたいなことがすごく多いと思うんです。一発当たって消費されて「あの曲知ってるけど、歌ってるのは誰だっけ?」みたいな。そういうケースは、これからも増えていく気がしています。

山田:そうやってただ消費されそうになったときに、普段から地肩を鍛えていれば、ヒットを続ける確率も変わると思います。ひとつ当たったときに近いものをすぐ投げられる能力があれば、走り続けられますし。

佐藤:それは先ほど話されていた「モチベーション高く活動を続ける」ことにマネジメントとしてコミットする話につながりますよね。ただ、よく言われるのは、周りが支えすぎるとイエスマンだらけになって、裸の王様になってしまうということ。それは寄り添うのとは似ているようでまったくの別物だと思うのですが、どう考えていますか?

山田:難しいところだと思います。若く経験の少ない現場マネージャーだと、どうしても寄り添う=イエスマンになりがちだし、そうならないように指導したところで、経験が少ない、知識が足りないとまだ難しいこともあるし。だから、クリエイティブの面で同意できることはどんどん背中を押しつつ、そこについて来られない人もいることを教えてあげるとか、そういうことかなと。

佐藤:それが先ほどの、マネジメントの役割の違いの話ですよね。

山田:そうですね。たとえばアイドルグループだと、どんなにリーダーの子が頑張っていても、周りの子がついて来られなかったら、絶対良いグループにはならないんですよ。それはリーダーだけじゃなくて、プロデュースもそう。そこが空回りするとうまくいかない。そうならないようにするのも、マネジメントの役割かもしれません。

佐藤:昔は多少マネージャーの色ってあったと思うんですけど、いまはタレント自身が発信できてしまいますもんね。

山田:だから究極の話、いままでのマネジメントは、長い目で見たら絶対になくなるじゃないですか。スケジュールを管理して、窓口をやって……みたいなことをするだけの事務所は、大手以外はなくなっていくと思います。だからこそ、小さな事務所は新しいマネジメントのあり方を考えていかなきゃならないと痛切に感じますね。

有名税が高すぎる時代とどう向き合う?

佐藤:最近のSNSは本当にいろんなことが起こりやすいじゃないですか。なにか対策というか、どのように向き合っていくことを考えていますか?

山田:たとえばタレントに対して誰かが何かしたことが罪になるなら対応できますけど、一般的には大したことじゃないとしてもタレントだから問題になるようなこともあるじゃないですか。

 いまの時代は有名税が高くなりすぎて、ちょっとしたことをSNSに書かれるだけでタレントは一気にイメージダウンしてしまう。だから教育し続けるしかないんですよね。LINEは全部晒される覚悟でやり取りをしようとか、車が無い道でも赤信号で渡るなみたいなことを。

佐藤:極端じゃなく、そうなりますよね。

山田:でもマニュアル化したところで全員が完璧に理解するのは難しいから、日頃からひたすら一般常識を教えるしかない。そして万が一のことがあったらすぐ報告してもらう。それしかないんですよね。

佐藤:週刊誌が売れたり、ネットニュースがたくさん読まれたりするわけじゃないですか。週刊誌の売り上げやネットニュースの広告収入とかを、その記事に出てる人に分配してほしいと思うんですよ。

山田:たしかにそうですよね。犯罪とか社会的事件は別として。

佐藤:そうじゃなかったらもう、テレビに出るようなことと一緒だから。それこそタレントを支えるという意味では、マネジメント側で一致団結して何かできたらいいのになと思うんですよ。報道の自由と言われればそうだけど、別に犯罪をしていないなら、それをわざわざ言うのってなんなんだろうなと思っちゃいます。

山田:とはいえ、大手メディアがやらなくなったとしても、いまの時代は本当に誰でも晒せちゃうじゃないですか。内容によっては、発信源が大手メディアじゃなくてもパブリックイメージが崩壊して終わってしまう。そんなことはこれからいくらでもあると思います。

佐藤:そういうことへの対応って誰か真剣に考えているんですかね?

山田:いや、考えてはいるけれど答えが見つからないと思います。

佐藤:まあまあ重要ですよね?

山田:めちゃくちゃ重要だと思います。それに対応していかないと、誰も活動していけないと思います。タレントによっては「なにを言われてもいい」とか「怖いものなんかない」とか言う人もいますけど、なにをきっかけに終わるかわからないじゃないですか。本当に怖い時代だと思いますよ。

佐藤:マネジメント的に考えてもそうですよね。

山田:だからそういう意味でいうと、タレントに対して啓蒙していかなきゃいけないし、守れるのはマネジメントしかないところもあると思うので。タレント本人だと、客観的になりにくいですしね。

佐藤:リスク管理とか相当重要になってきますよね。それこそタレント個人が担うには難しい部分だと思います。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「連載」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる