連載:エンタメトップランナーの楽屋(第四回)
『水曜日のダウンタウン』から考える、個性的な番組づくりの方法論 FIREBUG佐藤詳悟×藤井健太郎対談
お笑い芸人や俳優、モデル、アーティスト、経営者、クリエーターなど「おもしろい人=タレント」の才能を拡張させる“タレントエンパワーメントパートナー“FIREBUGの代表取締役プロデューサーの佐藤詳悟による連載『エンタメトップランナーの楽屋』。
第四回はバラエティ番組『水曜日のダウンタウン』(TBSテレビ系列)の演出などを手がける藤井健太郎をゲストに迎える。
お笑いに対するそれぞれのスタンスや、クリエイターとして“笑い”を生み出すために意識していることについて語ってもらった。
豪華メンバーが一堂に会した「千原ジュニア40歳LIVE」
ーーまずは藤井さんと佐藤さんの関係性について伺いたく、最初の出会いはどのようなきっかけだったのでしょうか。
藤井:TBSへ入社して6年目くらいに、ロンドンブーツ1号2号さんに出ていただいた「クイズ☆タレント名鑑」で一緒になったのが最初ですかね。
佐藤:僕がたしか吉本興業に入って5年目くらいに、ロンドンブーツ1号2号のマネージャーを務めていたときですね。そこで初めて藤井さんとお仕事させてもらって、その後が2014年に開催した伝説の「千原ジュニア40歳LIVE 『千原ジュニア×□』」でしたよね。何か新しい演出ができる人にお願いしたくて、藤井さんにお願いしたんです。
藤井:あのイベントね。ジュニアさんが40歳を迎える誕生日に盛大なイベントをやるという企画で。
5年間かけて徐々に金額を上げながらチケットを売るって仕掛けは、面白かったですよね。ただ、ガワは良いんだけど、肝心の中身をどうするかが全然決まってないっていう(笑)。
佐藤:イベントの企画はできるんですけど、藤井さんのような細かい演出まではできないんですよ。放送作家さんも入っていたものの、僕が細やかな推進力がなかったので、藤井さんにどんどん進めてもらったような感じです。
藤井:「千原ジュニア×〇〇」というコンセプトにして、いろいろと中身を考えていったんですが、結果的にはさんまさんやダウンタウン松本さんなど、かなり豪華なメンツが両国国技館に集結して。あんな顔ぶれが集まる客前イベントって意外とこれまでなかったんじゃないかなと思いましたね。
佐藤:写真は篠山紀信さんに撮ってもらうなど、いま考えるとすごいメンバーが一堂に会したイベントで、8年くらい前ですが本当に今でも鮮明に覚えていますね。確かその年の4月から『水曜日のダウンタウン』が始まったんでしたっけ。
藤井:うん、そうだね。
佐藤:吉本を退社して起業の道に進んだんですが、当時関わっていたテレビ関係者の方とはほとんど疎遠になってしまって。でも唯一、藤井さんとは近況報告がてらご飯へ行ったり、人を紹介したりする仲なんですよ。
『水曜日のダウンタウン』は臨機応変に形を変えていける番組
ーー番組の演出、芸人のマネージャーと異なる立場で「笑い」を生み出してきたお2人ですが、それぞれのお笑いへのスタンスについて教えてください。
藤井:お笑いを作っているという感覚はあんまりないですね。学生時代もとくにお笑い好きという感じではなく、仕事として関わるまでは劇場にネタを見に行ったこともなかったです。
佐藤:僕もお笑いに関しては、当時はサブカル好きな人が見ているイメージで。バラエティ番組は好きだったので、テレビは見ていましたけど。
藤井:僕もお笑いというよりもテレビが好きでしたね。昔から家に帰ったら何をするよりも先にテレビをつけていました。
佐藤:いまは人気バラエティ番組の『水曜日のダウンタウン』の演出を務めていると思いますが、番組を作っていく上での判断基準って何かあるんですか?
藤井:なんだろう。でも、やっぱり一番は「自分が面白いと思えるかどうか」に尽きるんじゃないかな。もちろん、昔と今とではその感覚も変わってる部分があるし、昔よりテクニック的にはおそらく上達している一方で、昔の方がやったことのないことが多い分、それに挑む勇気もあって、思い切った企画をやっていたなとは思いますね。
佐藤:そうなると、明確な番組制作の基準は言語化されていないという感じですね。
藤井:そうですね。『水曜日のダウンタウン』でいうと番組自体の企画なんてあってないようなものだから、中身に関しては作り手のセンスみたいなものがほとんど全てだったりするわけで。でも、ビジネス的に考えたら、ちゃんとシステムがしっかりしていて、誰が運営してもそれなりのクオリティが保てるチェーン店みたいな番組の方が「良い番組」なはずですよね。
ーーでも、だからこそ『水曜日のダウンタウン』は個性的な番組になっているということですね。
藤井:番組の枠組みは、ある程度どんな企画でも収まる形になっているので、たしかに個性は出しやすいし、毎週放送のレギュラー番組として運営していく場合、臨機応変に形を変えていける方が、あくまで作り手次第ではありますが、いろいろな状況に対応しやすかったりもします。個人的にはその方が番組作りはやりやすいですね。
佐藤:人間の素が見えるというか、ドキュメントバラエティに近いですよね。
藤井:もちろん、企画ありきではあるんですけど「この企画であれば、あの人がやったら面白くなるな」というような、その人のキャラクターや行動パターンから企画に当て込んでいくことも多いですね。クロちゃんだったりパンサーの尾形さんだったりが象徴的ですが。