『クリエイターズ・ファイル』誕生の裏側にあった“信頼関係と仕事術” FIREBUG佐藤詳悟×ロバート秋山竜次が語り合う

FIREBUG佐藤×ロバート秋山対談

 よゐこや北斗晶、菊地亜美をはじめとするタレントのYouTubeチャンネルの開発・運用、いきものがかりなどのアーティストの360°プロデュース事業を展開している“エンタメビジネススタジオ”FIREBUGの代表取締役プロデューサーの佐藤詳悟による連載『エンタメトップランナーの楽屋』が、今回よりスタートする。

 第一回には、佐藤がかつてマネージャーを務めていた、ロバートの秋山竜次が登場。当時から佐藤のマネージャー仕事に出ていた“個性”や、気心知れた2人ならではの関係性、大ヒットコンテンツ『クリエイターズ・ファイル』誕生の裏側や、秋山が考えている次の展開まで、たっぷり語り合ってもらった。(編集部)

「どこから持ってきたの?」「どこに流れるの?」という仕事が多かった(笑)

ーー今日はよろしくお願いします。まずお二人が出会ったきっかけについて教えてください。

佐藤詳悟(以下、佐藤):2005年に吉本興業へ入社し、3年目になる年にお笑いトリオ「ロバート」のマネージャーをさせていただく機会があり、そのころからの縁ですね。

秋山竜次(以下、秋山):佐藤がマネージャーを務めていた時に覚えているのが、見ず知らずの仕事をいくつも持ってきたこと。ほんと、いろいろとやってくれていたよね(笑)。僕もそのころは芸人10年目で、それまでもさまざまなマネージャーさんがついてくれていましたが、どのマネージャーよりも「これ、どこから持ってきたの?」という仕事が多かった。その当時から、佐藤の“クリエイティブ”な感性というか、そんな匂いを感じていましたね。吉本って、いわば生粋のお笑いの会社なのに、フライヤーやDVDジャケットのデザイナーなど、普段出会わないようなおしゃれでイケてる人を紹介してくれたりと、どこか一目置くような存在でした。とにかくなんでもやるバイタリティがすごいなと思っていましたね。

佐藤:吉本時代は結構、年上の方を担当させてもらうことが多かったんです。ロバートの秋山さんは5歳、ロンブーの淳さんは10歳くらい上にあたる先輩で、あまり同年代の人と仕事をする機会がありませんでした。だからこそ、気軽にいろんな話をしやすかったんだと思います。マネージャーがたくさんいるなかで、「自分の力で芸人さんに貢献したい」という気持ちは入社したころから抱いていました。自分でしか成し得ない成果を出し、会社に爪跡を残そうという気概を常に持ちながら、マネージャーの仕事に取り組んでいたのを覚えています。芸人さんに多様な仕事を振ることで褒めてもらい、それを形にしてお客さんへ笑いを届けることに非常にやりがいを感じていましたね。

佐藤詳悟

秋山:本当に楽しそうにやっていたよね(笑)。僕らがやったネタを見たときも「あのネタ、かなり面白いですね!」と言ってくれるんですよ。それを見て、ちゃんと笑いのツボに刺さっているんだなと実感していました。

佐藤:マネージャーはあまり芸人さんの稽古には出ないんですが、学生時代からロバートのファンだったので、ロバートの稽古はよく見させてもらっていました。また、ライブも足繁く通っていましたね。直接の担当から外れても、普通にロバートのライブを観に行っていたんです。

秋山:そういうのって、素直に嬉しいんですよ。担当外になった途端、付き合いがドライになるのって嫌じゃないですか。佐藤の場合、いまやっている部署の仕事の範疇からあの手この手と次々にアイデアを出してくれ、何とか僕らと結びつけてくれようとする姿勢をものすごく感じていました。

佐藤:自分が繋いだものやアイデアを受け入れてくれ、それを芸人さんが昇華させ、さらにテレビを通じてお客さんへ伝えていく一連の流れを、早い段階からいろいろと経験させてもらったのが大きいと思っています。一度、この良さを知ってしまうと抜けられないというか。まさに“エンタメの快感”ですよね。やっていくうちに、どんどん楽しくなってきたんですよ。今もその延長線上で仕事をやっている感覚だと思います。

ロバート・秋山竜次

ーー届く先とか届け方がやることによって違うだけで、出口にあるエンタメの快感は変わらないですよね。

佐藤:ただ芸人さんも、それぞれセンスや好き嫌いなどはあまり変わらないと考えています。マネージャーをやらせてもらっていると、一緒に芸人さんと過ごす日々が長い分、「この仕事、どうですか?」と聞いたときにYes/Noの反応が返ってくる感覚値も掴めるようになってくる。なので、まったく新しい人に仕事をお願いするよりも、人となりや得意不得意を知っている秋山さんのような人の方が、仕事を依頼しやすいですね。現在、テレビ以外にもさまざまな媒体があるなかで、好きになってもらったり楽しんでもらえる仕事を持っていかないと、その先にいるお客さんは面白いと思ってもらえないでしょう。嫌々やってもらっていることが簡単にバレてしまう世の中だからこそ、どんな仕事がテンション高く取り組んでくれるかは意識するようにしていますね。

秋山:テンションが乗っていないとバレてしまうので、Noを出すときははっきりと伝えるようにしています。逆に、特技を知ってくれているので、興味関心のある仕事を持ってきてもらうと「それ、いいね」と思うこともありますね。

佐藤詳悟×秋山竜次

ーー長年やってくるとある種、固定化されてくるというか、なかなか新しい仕事を提案しづらくなってくると思いますが、その辺りはどのように思われていますか。

秋山:佐藤が持ってくる仕事は、「え、もう1回説明して」と聞き直してしまうくらい、毎回新鮮に感じていますね(笑)。よく言うのが「これってどこに流れるの?(笑)」ということ。自分の中で媒体の引き出しがあまりないので、すごい発見になっています。

佐藤:演者側の人って、基本的にはその人の個性がないと通用しないですし、新しいものを拒んでしまう人は残っていけないと思っています。幸いにも、今まで関わりを持ってきた方々は総じて、新しいことを受け入れてくれる人ばかりでしたね。

 もし、ずっと変わらない仕事をやり続ける人とは、自分が関わる必要性がないというか、自分の強みが生きないと思うんです。いまのFIREBUGでもそうですけど、とにかく旬な新しいものを取り入れて、その人にあったアイデアを出していくスタンスで取り組んでいます。

秋山:会社にたくさん新しい仕事が入ってくるなかで、どういう風に仕分けしているの? そこのジャッジを誤ると会社の損害にもつながるわけじゃないですか。

佐藤:世の中の流れやトレンドは一定あるので、そこはまず抑えるようにしています。例えば、ガラケーからスマホへシフトしたことや、テレビからYouTubeへ移行していることなど、時流をよほど外さなければ、そこまで大きなミスにはつながらないと思いますね。

 ただひとつ言えるのは、リスクを背負わないと前に進まないことも多いということ。

 会社が死んでしまうと元も子もありませんが、多少の痛みを伴わないと新しいものは生まれてこないんです。自分がもし守りに入ろうすると、会社全体も守りに入ってしまうので、時には100人中99人が反対するようなことも、やらなければならない覚悟を持って仕事をしていますね。無論、一番大事になってくるのは「攻め」と「守り」のバランスだと考えています。

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