ミライアカリ引退、プリキュアのVR進出にVision Pro発表……地殻変動が続いた2023年のバーチャルシーンを総括
『Vision Pro』に『Meta Quest 3』――複合現実へと進み出したXRデバイス
デバイスの話題でいえば、やはりAppleの『Vision Pro』が象徴的だ。あのAppleの参入、ということ自体もインパクトがあるが、その打ち出し方が「空間コンピューティング」であるということも大きい。
VRへ没入するのではなく、「頭にかぶるPC」として、日常生活の上にデジタル情報を重ねるという「未来の暮らし」のビジョンは、多くの消費者にとって想像しやすいはずだ。唯一の懸念を挙げるとすれば、その価格だろうか。いずれにせよ、世に放たれるのが楽しみなデバイスだ。
発売されたXRデバイスの中で、もっともインパクトがあったものといえば『Meta Quest 3』だろう。2020年に発売された普及機『Meta Quest 2』の後継に位置づけられる、新型HMDだ。小型化と高画質化が進みつつも、「MR(複合現実)」機能を本格的に盛り込んだことが大きな変化として挙げられるだろう。
「現実世界にバーチャルなものを呼び出す」という方向性は、ある意味では『Vision Pro』に通ずるところがある。MetaがVRは捨てず、しかしMRという新たな路線の開拓へと動き出したのは、一つの転換点だろう。また、『【推しの子】』や『銀魂』を招いたプロモーションまで展開する姿は、日本を市場として本格的に意識し始めていることのあらわれだろうか。
ソニーのモバイルモーションキャプチャー『mocopi』も、様々な場面で見かけるようになってきた。やはりVTuberの需要が伸びているが、つい最近にはアニメ『葬送のフリーレン』にて活用されたという事例も登場した。
アニメ葬送のフリーレン第15話のダンスシーンでモデルをしました
モーションキャプチャーはこんな感じで
作画や制作に関わってくださった方、素敵なシーンにしてくださりありがとうございました!#フリーレン #シュタルク #フェルン #勇者ヒンメル #アウラ踊れ pic.twitter.com/QkPlbuH5LD
— 啓立石 (@iymaOZFDoN71960) December 15, 2023
「スタジオ不要で動くモーションキャプチャーデバイス」というデバイス特性は、VR/VTuberという枠組みすら超えて活躍することが立証された形だろう。アップデートも継続しており、ソーシャルVR需要に応えるためのモード追加など、より汎用的なデバイスとなるべく邁進を続けている。来年以降の発展にも期待したいところだ。
予測されていた「幻滅期」はどこへ? 活発な企業参入が相次いだメタバース業界
昨年もてはやされたメタバースは、今年は「幻滅期」と呼ばれつつ、話題の多くは生成AIに取って代わられた印象だ。一方で、前線の動きを見てみると、むしろ昨年以上に活発だったように思う。
最大規模のメタバースと評される『Roblox』はMeta Quest版が登場しつつ、国内で『Roblox』向けコンテンツ制作に着手する企業が相次いで登場した印象だ。『ドラえもん』クラスのIPを巻き込む事例も生まれ、『東京ゲームショウ』に運営会社が招かれるなど、日本へのリーチがいよいよ始まろうとしている。
2023.3.23 | State of Unreal https://t.co/52UOFOcm3S#GDC pic.twitter.com/bYI5s6AxHR
— アンリアルエンジン (@UnrealEngineJP) March 16, 2023
『Fortnite』も「Unreal Editor for Fortnite (UEFN)」の登場により、コンテンツ制作に乗り出す企業やクリエイターが増えた印象だ。これまで以上に自由なコンテンツを作って公開できるようになり、収益化プログラムまで動いている。人口も非常に多いため、今後さらに活用事例が広がるだろう。
国産メタバースの『cluster』は、UIが一新されただけでなく、ソーシャルシステムの改修や、3Dアイテム購入ができる「clusterポイント」「商品チケット」の導入など、サービスの利便性をより高める方向へとアップデートが続いている。そして、『cluster』でイベント・企画を行いたい企業とクリエイターをマッチングさせる新会社、クラスタークリエイタージョブズ株式会社も設立し、新たな展開を見せている。
『VRChat』はこうした拡大の流れと無縁である……ように見えて、企業参入の動きが強まっている。運営企業と公式パートナー契約締結に踏み切った企業・団体は、今年に入って国内で18組織にものぼった。日産自動車、G-SHOCK、京セラ、ホビージャパン、横須賀市などなど、官民の両面で案件が次々に発生しており、大丸松坂屋百貨店に至ってはアバター事業にまで乗り込むという攻めの姿勢を見せている。
エンタメの領域でも、『SANRIO Virtual Festival 2023 in Sanrio Puroland』や『プリキュアバーチャルワールド』など、ネームバリューの面でもよく知られる大規模なイベントが開催されるようになった。『SANRIO Virtual Festival』は2024年開催も決定済みで、さらに規模を拡大して『VRChat』に舞い戻る予定だ。『バーチャルマーケット』も引き続き開催されており、今年はリアルイベントも大盛況となるなど、大きな進歩を見せている。
「幻滅期」という言葉など、どこ吹く風。“粗熱”のとれたメタバース業界は、着実な一歩を積み重ねるフェーズへと踏み出している。その成果が見えてくるのが、2024年という一年になるだろう。
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