歌広場淳×どぐら“古参格ゲーマー”対談 時代が求める「理想のプロゲーマー像」とは?

歌広場淳×どぐら“古参格ゲーマー”対談

 大のゲームフリークとして知られ、ゲーマーからの信頼も厚いゴールデンボンバー・歌広場淳による連載「歌広場淳のフルコンボでGO!!!」。今回は、プロゲーミングチームCrazy Raccoon所属で、『ストリートファイターリーグ』にCYCLOPS athlete gaming OSAKA(CAG)から出場するプロ格闘ゲーマー、どぐらとの対談を行った。

 出身地は違えど、古くからゲームセンターに通い詰めては格闘ゲームをプレイしてきた“ゲーセン勢”という意味では共通のルーツを持ち、それゆえ親交も厚いふたり。格闘ゲーム『ストリートファイター』シリーズ最新作となる『ストリートファイター6』(以下、スト6)の発売に端を発する、2023年の格闘ゲーム業界の盛り上がりを振り返りつつ、話題は「これからのプロ格闘ゲーマーに必要とされる能力」へと発展していった。

『スト6』は「僕もやってみたい!」と思わせるだけのなにかがある

歌広場淳:今回は対談を受けていただいてありがとうございます! どぐらさんとは、ふだんから格闘ゲーム勢として仲良くしてもらっていますが、今年はとくに大活躍だった印象です。最新作の『スト6』が発売されたなかで、プロゲーマー・ストリーマーの両面で常にムーブメントの中心にいらっしゃったというか。ムーブメントをいくつも作っていたように感じました。

どぐら:いやいや! 恐縮です(笑)。

歌広場淳:6月に開催された『スト6』の『Crazy Raccoon Cup』(CRカップ)は本当に多くの方から注目されていたと思いますし、どぐらさん自身もCrazy Raccoonに加入するという転機を迎えられました。「どぐらさんのような逸材が、これまでどこに眠っていたんだ!?」といった反響も多くあったんじゃないですか?

どぐら:それを言ったら、歌さんが格闘ゲーム業界に関わってくれるようになったときの衝撃も相当でしたけどね(笑)。まさに黒船来航というか。歌さんとしては、もともとゲーセン勢だったわけだし、「外から来ました」って感覚はないと思うんですが。

 ……とはいえ、おかげさまで。先日、ライアットゲームズさんのオフイベントにプライベートでふらっと遊びに行ったんですけど、もう若い子からめっちゃ声かけてもらいました。もう必ず、「『CRカップ』見ました!」「『スト6』買いました!」の2点セットで。

歌広場淳:ああ、なるほど。僕の場合でいうと「『女々しくて』好きです!」って声かけてもらうのと同じような感じですね。

どぐら:本当にありがたいというか、ビックリですよね。いままでは声かけられるにしても、30~40代くらいの男性から、野太い声で「どぐらさんが使ってるベガ、いつも見てます」とか「どぐらさんのロボカイ好きでした」とか。そんなパターンばかりだったのに(笑)。

 こんなに若い男の子とか、女子の方々にも『スト6』を遊んでもらえているんだと思うと、いちプレイヤーとして感慨深いですね。プレイはせずとも、大会などの配信を見てくれているだけでもありがたいなと。

 格闘ゲーム業界としても、それまで格闘ゲームに触れたことのなかったような若い層が大量に入ってきてくださって、これだけの盛り上がりになるなんて、本当に予想だにしなかった出来事でした。

歌広場淳:前作の『ストリートファイターV』でも、中期ごろ――2019年くらいから、だんだんと若手が台頭してきたところはありましたけれども。あの当時も、カワノくんをはじめとする若手たちの活躍を見て驚きましたが、いまや『スト6』では、若干11歳の強豪プレイヤーが出てきたりしていますよね。

どぐら:そうそう! レオ(LEO-IG)くんね。ガチガチの競技シーンで活躍しているようなトッププレイヤー相手に、11歳の子が勝っちゃうなんて話、長い格闘ゲームの歴史でも前代未聞ですからね。

 そこはやっぱり、『スト6』のゲームとしての完成度の高さも関係していると思うし、多くの人に「僕もやってみたい!」って思わせるだけのなにかがあるゲームってことなんだと思います。

歌広場淳:ゲームのシステム面もおもしろいし、ルックスも良いし、話題性もあるし。発売元のカプコンさんのレスポンスもすさまじく早いですからね。もう、カプコンさんに対する信頼度が日に日に増してませんか?

どぐら:わかる! これ、ちょっとマニアックな話なんで、詳しくない方向けに説明すると……対戦中に相手の攻撃を食らって、自分のキャラクターがダウンするじゃないですか。で、キャラがもう一度立ち上がる瞬間なんかに合わせて、技を出すことを通称“リバーサル(リバサ)”と呼ぶんですね。

 この“リバサ”で必殺技を出すって行為が、『スト6』では比較的やりづらいと感じているプレイヤーが多くいて、ちょっとした話題になっていたんです。そうしたら12月1日のアップデートで、“リバサ”がそれまでの倍くらい出しやすくなるように調整されたんですよ!

 僕も常々「“リバサ”出しにくいよね。これキツイくない?」って周囲のプレイヤーたちと話していたんですけど、「仕様だし、そう簡単に変更はされないだろうな」って半ば諦めていて。それが本当に異例の早さで調整されたから、「カプコンさんありがとー!」って。

歌広場淳:確かに。僕らプレイヤーの声が、ちゃんとカプコンさんに届いている感覚がありますよね。

 あと、これまでSNSで「“リバサ”出ねぇよ!」って散々発言していた人が、いざ調整を受けた途端に「出しやすくしてくれたおかげで、負けたときの言い訳ができなくなりました……」と、冗談めかして言っていたのも個人的にはクスっとしちゃいました(笑)。

 そんなふうに、ユーザーとメーカーのあいだで一種のプロレスのような感じでふざけ合えたりするのも、この信頼感があってこそだと思いましたね。もはや、絆に近いものが生まれ始めているなと。

どぐら:今後、仮に何か起こったとしても「いまのカプコンなら大丈夫だろう」ってみんな安心できると思いますね。それこそ開発スタッフの方々には、後世で自伝を出版してもらいたいくらい。

歌広場淳:いいですね。「こうして『スト6』は生まれた」みたいな本、めちゃくちゃ読んでみたいです!

 “観戦勢”を『スト6』に集めた最大の功労者とは

歌広場淳:先ほど、どぐらさんから「プレイはせずとも、大会などの配信を見てくれているだけでありがたい」ってお言葉がありましたけど、僕も同感で。

 『CRカップ』などの盛り上がりによって、観戦専門のファンが爆発的に増えたことが、なによりも価値のあることなんじゃないかなと思うんですよね。

どぐら:本当にそのとおりですよ。最近、『VALORANT』の大会を個人的に観に行って感じたことなんですけど……。会場で、喋っている内容からして明らかに「普段からゲームをやっている子じゃないな」って人をたくさん見かけて、めちゃくちゃ衝撃を受けたんですよ。「この盛り上がり、マジすげぇな」って。

 それって「試合内容は深くわからないけれど、シンプルに観戦が楽しいから会場まで来ました」って人が山ほどいるということですからね。今後、『スト6』でもそれと同じような感じで、カジュアルに楽しんでくれる人がたくさん生まれてくれたらうれしいですし。

 そうなったときに、我々のような古参勢が「フッ、いまのプレイは全然うまくないから。にわかにはわからんかぁ」みたいな感じで、せっかく楽しんでくれている人たちに水をさすようなことだけはあってはならないなと、勝手に心配したりもしているんですけど(笑)。

歌広場淳:どんな界隈にもありがちな話だけど、起きてほしくはないですよね。でもその点、『スト6』にはすごくいい機能が搭載されているなって思うんです。僕、最近そのことに気付いちゃって。いわゆる“観戦勢”を『スト6』に集めているのは、じつはeスポーツキャスターのアールさんなんですよ!

どぐら:ああ、たしかに。大会やイベントとなると、キャスター陣の功績は大きいですよね。

歌広場淳:いや、それもそうなんですけど。そもそも『スト6』って、試合展開に合わせて実在のキャスターさんたちが実況・解説ボイスを入れてくれる自動実況機能が搭載されているじゃないですか。

 僕はこの機能のことを、ひとりで黙々とやる対戦を盛り上げてくれる、どちらかというと既存の格闘ゲーマー向けのファンサービス的な機能だと認識していたんです。でも、これにはもうひとつの側面があるな、と。

 この自動実況機能があるおかげで、これまで格闘ゲームにあまり触れたことがなかった人でも「こういう展開になったら盛り上がっていいポイントなんだ」って知ることができる――つまり、大会で起こっていることを予習させてくれる機能だったと気付いたんです!

どぐら:あぁー! なるほど、そう言われてみるとたしかに。

歌広場淳:自動実況機能は、アールさんご自身が監修を務めていたとのことで、本当に的確に試合展開を説明してくれるんですよね。たとえば、波動拳を1発撃っただけでも……。

どぐら:ありますね。「この距離は飛び道具で牽制! 飛ばれなければ超強力!」ってセリフとか。

歌広場淳:そうそう! そうやって、僕ら経験者ならわざわざ言葉にするまでもないと思うことを、自動実況機能が言語化してくれる。だから、未経験の人でも「この距離は波動拳が有効なんだ。でも、飛び越えられてジャンプ攻撃を食らうリスクはあるんだな」ってわかるじゃないですか。

どぐら:プレイしながら自然と、大会での盛り上がりどころや、お互いのプレイヤーの狙いなんかがわかるようになってくると。それはあるなぁ。

 ちょっと脱線しますけど、技の正式名称とかも、通称を使いがちな古参プレイヤーなんかより、『スト6』から始めた初心者さんたちのほうがよっぽど正しく言える可能性ありますね(笑)。

歌広場淳:僕らは何でも「SA3」とかで一緒くたにしがちだけど、「ルークのSA3だったら“ペイルライダー”だよな」とか。

どぐら:『ストリートファイター』シリーズって、必殺技はもちろん、じつは通常技ひとつひとつにもちゃんと名称が用意されてるじゃないですか。技名をちゃんと知っていて言えるって、対戦のうまさとはまた別のベクトルでドヤ顔できるポイントなので。

歌広場淳:「なんでお前、そんな技名いちいち覚えてんだよ!」って(笑)。『スト6』は、ワールドツアーモードでキャラクターの個性とかもかなり掘り下げられていますから、そういったキャラ設定を覚えるのが趣味の人にはたまらないですよね。

どぐら:あるある。昔からいますからね。キャラ設定知識がめっちゃ豊富な人。リュウの好物は水ようかんとか、庵(※)の大切なものは彼女と……あと、何やったっけ?

※ 八神庵(やがみ いおり)。格闘ゲーム『ザ・キング・オブ・ファイターズ』シリーズに登場する、準主人公キャラクター。

歌広場淳:庵の大切なものって、毎作変わっているんですよ。そのときそのときで庵を担当したスタッフさんの趣味が入っている、みたいな噂話を聞いた覚えがあります。

どぐら:さすが、歌さんも相当“やり込んでる”っすね(笑)。

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