角野隼斗とホセ・ジェイムズがビルボードで魅せた“プレミアムなセッション”

角野隼斗&ホセ・ジェイムズ共演 イベントレポート

­­­­ ピアニストの角野隼斗とシンガーのホセ・ジェイムズが11月29日、Billboard Live TokyoでCASIOの電子ピアノ『Privia PX-S7000』を用いた演奏とトークセッションを行った。2023年は「Privia」シリーズが20周年を迎えた年になるのだが、それに相応しいプレミアムなひと時だった。­­­­­­­­­

 本企画は当日夜に予定されていたホセ・ジェイムズが角野をフィーチャーしたセッションライブに先駆けて行われたもの。ふたりはもともと今年4月にアメリカで開催された楽器見本市『NAMM Show 2023』のCASIOブースで初共演し、そのバイブスを日本に輸入するような形だ。公演に向けての動画からも、ふたりが共演に対して持っていた期待が伝わってくる。

José James Special Video for Billboard Live 2023 supported by CASIO

 イベントが始まると、ふたりはジャズセッションのスタンダード曲「Just the two of us」をプレイ。<ⅣM7→Ⅲm7→Ⅵm7→Ⅰ7>系のコード進行ループの雛形とされる曲だ。日本のストリートピアノ界隈で定番中の定番である椎名林檎「丸の内サディスティック」と同じ構造を持つ。角野とホセの出自を考えると、最も合わせやすい素材のひとつだろう。

 ゆったりとした歌に角野が伴奏を付けていき、ジェイムズがテーマを歌い終えるとピアノソロへ。角野もお気に入りだという『Privia PX-S7000』の音色「NEO SOUL EP HG」は、メロウなトレモロが左右に揺れるチルな響きだ。饒舌なソロを取ってから再び歌い始める息の合った瞬間がハイライトだった。

 続くトークコーナーでは、角野が「もちろん前から知っていて緊張しましたが、演奏してみると違うバックグラウンドなのに心地よくもあり、刺激的でもありました」、ジェイムズは「最初はシャイで静かだったけど、弾き始めたら驚きました。『これは天才だ』と。音楽は普遍的な言語だから、通訳はいらないのがいいですよね。魂が共鳴するセッションができて嬉しいです」と話す。

 『Privia PX-S7000』については、ふたりとも「デザインが素晴らしい」という点で一致。特にジェイムズは「この15年でニューヨークやLA、ロンドンなどで多くのキーボードに触れてきたけど、こんなものは見たことがありませんでした。真のライフスタイル・ピアノ。音色の多さも特徴ですね。クリエイティブでいるためには、こういう楽器を身近に置いておくことが必要不可欠です」と賛辞を贈った。なお彼は2007年から数えて、今回が21回目の来日だという親日家でもある。

 CASIOの印象を問われた角野は、東京都世田谷区にある樫尾俊雄発明記念館に展示されていた「発明は必要の母である」という言葉に共鳴したエピソードを披露。「必要があるから作るのではなく、作り手の好奇心からプロダクトが広がるのは自分の音楽の作り方と近い」とした。

 トークを終えてからはナット・キング・コールの歌唱で知られる「The Christmas Song」をセッションする。オリジナルを思わせるフロウで歌い始め、ソウルフルな表現を聴かせたジェイムズ、クラシック音楽的なボキャブラリーでソロを取った角野。ふたりのコントラストが興味深い。

 さらに角野がアンコールとして、来年で発表から100周年のジョージ・ガーシュウィン「Rhapsody in blue」をソロ演奏。クラシックとジャズがクロスオーバーして生まれたとされる曲だ。長短調を往復するブルース的な導入を、ジェイムズが好きだと語った『Privia PX-S7000』のグランドピアノの音色が彩る。それから終わりまで、オーディエンスは釘付けだった。

 最後に角野が「これからもカシオさんと色々なことをやっていくので、注目していただけたら」、ホセが「このコミュニティで時間を過ごしてくれて、ありがとうございました。隼斗のプレイも素晴らしかった。メリークリスマス」とメッセージを贈ってイベントは終了。これからの両者とCASIOのコラボレーション、新たな展開にも期待だ。

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