「イラストレーター 兼 VTuber」という存在に見る、多様なバーチャルタレントの在り方
“VTuber”という言葉の射程圏はどこまで?
しぐれういと伊東ライフのような目覚ましい活躍もあってか、その後も女性のイラストレーター兼バーチャルタレント(VTuber)が多数登場することになった。
女性で言えば、しぐれういにくわえ、甘城なつき、カグラナナ(イラストレーター名義:ななかぐら)、なつめえり、韓国在住のNabiらの5人は『イラストレーターVTuber × pixivフェア inアニメイト』と題してpixivとのコラボレーションイラストグッズを発表。
配信やストリーマーの一面で人気をあつめているといえば、甘城なつきやカグラナナとも仲が良くTwitchで活躍する夜よいちを始めとし、しぐれういと同じホロライブのキャラクターデザインを担当しているあやみ/凪白みと/飯田ぽち。/三嶋くろね/ももしき、同人作家・イラストレーターとして著名であるクリムゾン、そして犬山たまきの生みの親であり「のりプロ」社長の佃煮のりおまで、多彩かつ豪華な面々が揃うことになる。
男性でいえばほかにも、にじさんじ・勇気ちひろとのコラボから人柄が知られるようになり、ゲーマーやストリーマーらが主に参加する大型企画に参加、現在ではTwitchチャンネルで10万人近いフォロワーを集めるほどになった漫画家・しろまんたを筆頭に、ホロライブやにじさんじそれぞれに自身の娘・息子が在籍しているlackといった面々も見えてくる。
このシーンをよく知る人なら、さきほどズラっと並べた名前のなかに「この人はVTuberではないよね?」と気づく人もいるはずだ。あえて混ぜてかかせてもらったわけだが、こうしてみると「VTuberとはいったいどこからどこまでを指すのか?」と感じるファンも多いだろう。
彼らの中には、“自分はVTuberである”という意識なんてないままに活動している者もいるであろうし、イラストレーターとして配信する際に画面上にアバターを出すか出さないか、それぐらいライトな「バーチャルの容姿」として『Live2D』や3Dモデルを用いている者もいる。
その逆にフィクション性・架空性・自身のフェチズムを強く滲ませたプロフィールを生み出し、まったく別の自分として振る舞う者もいる。それはもはや「セルフブランディング」を飛び越え、セルフプロダクション、セルフトランスレーションとも評する領域にまで達しており、イラストレーションにはとどまらないクリエイティビティの発露だと感じられる。
このように、自分のスキルやクリエイティビティを見てもらうために「VTuber」になった者もいれば、コロナ禍とともにイラストレーターや漫画家としての仕事が無くなることを危惧し、なんとかネット上で活動できる場所をつくりたい……そんな一心でおそるおそる「ストリーマー」として配信活動をスタートした者もいるだろう。その活動の在りようや始めたきっかけはさまざまだ。
ここまで語ったようにYouTuberやストリーマー(配信者)としての活動優先順位は低めなしぐれうい、むしろそちらの活動に精を出すようになった伊東ライフと、それぞれの状況・方針によって大きな振れ幅がある。
筆者は、彼らのような活動者を表現するにあたって、一般的に用いられる「VTuber」という語ではなく「バーチャルタレント」と呼ぶことが多い。理由としては、「VTuber」という言葉にある「アニメルックなビジュアルを使ってYouTuberらしい活動をする者」という意味を内包しており、アバターを用いた配信活動をおこなう者やその外側で活躍するさまざまなインフルエンサーにいたるまで、さまざま多様性をとらえることができるからだ。
彼らの活動・活躍が、今後どのような岐路を生み出していくのか。来年以降も注目だ。