至高のブリティッシュサウンドを手のひらに マーシャルのワイヤレスイヤホン『Motif II A.N.C.』
ギターやベースなどの楽器を嗜んでいる人であれば、マーシャルという名称に反応しないわけにはいかないだろう。イギリスが誇る音響機器ブランドであり、そのウォーミーでふくよかなサウンドは近代のロックサウンドにおいて欠かせない存在となっている。
そんな英国を代表する老舗ブランドのマーシャルだが、実はワイヤレスイヤホンにも力を入れているのをご存知だろうか。2023年10月、最新モデルとなる『Motif II A.N.C.』が発売された。
A.N.C.の名が示す通り、もちろんアクティブノイズキャンセリング搭載。伝統的なマーシャルサウンドとトレンドを融合させた本モデルを、早速チェックしていこう。
ずっと触っていられる美しい質感
ケースサイズはとてもコンパクトで、ポケットにも収まりやすい。フラッグシップモデルながら小型であるというのは、普段使いにおいてありがたく、持ち心地はAirPodsに近い。
なにより美しいのは、本家マーシャルのアンプを思わせる本格的なシボ加工。見た目に高級感があるだけでなく、手に持った際の滑り止めとしてもうまく機能している……! マーシャル製品といえばシボ加工といえるほどアイコニックなデザインでもあり、この美しい質感に魅せられたユーザーは少なくないだろう。
細かい部分だが、イヤホンを取り出す際のフタの質感も上質だと感じた。カタカタとしたユルさを感じず、小気味良いパチっとした動きは手にも心地良い感触だ。いわゆる、ポケットの中でパチパチと開閉していたくなる感覚。
イヤホン本体は軸が伸びるステム型。こちらのデザインもじっくりと見ていこう。
ステムの先端には真鍮を思わせるゴールドのパーツが配置されている。マーシャルのアンプには真鍮がふんだんに使われているが、これもまたオリジナルへの敬意を感じるデザインだ。
ロゴのMの部分はエンボス加工されており、立体感を感じる。イヤホンのハウジング部分はザラつきがあるマットな質感で、視覚と触覚の両面から情報を与えてくれている。
ヌケ感のあるシグネチャーサウンド
それでは、音質をチェックしていこう。まず装着感だが、AirPods Proを基準とするとハウジング部分はやや大ぶりだ。その影響なのか遮音性が高く、後述するノイキャンを使わずともかなりの外音をシャットアウトできている。
音質については、一聴して「マーシャルっぽい!」と感じた。中低域に余裕があり、明瞭でブライトな、いわゆる温かみのあるサウンドに仕上がっている。低音を無理に出そうとしていないためか、耳に詰まったような聴き応えにもなっていない。定位感については極端な距離感の差異はなく、あくまでスタンダードなステレオサウンド。
個人的に、ヌケ感の良さは長時間試聴しているとより違いを感じられる部分だと感じている。30分、1時間とイヤホンを使っていても、リスニングへの疲れが出にくい。
専用アプリを使えばイコライザーで音のバランスを変えることもできる。昨今のワイヤレスイヤホンの傾向からすると、マーシャルのブライトサウンドは低域がやや物足りないと感じることもあるだろう(特にヒップホップなどは)。そんなときはイコライザーで160Hzと400Hzあたりを少し持ち上げてあると良い。もちろん、ロックやポップスを聴く場合はデフォルトのイコライザー設定をオススメしたい。
イヤホンはタッチで操作する。タッチの感度は良好で、ポンと軽く叩けば反応してくれる。こうしたタッチ操作タイプの場合、イヤホンの位置を直そうとした際に誤操作が発生することもあるが、『Motif II A.N.C.』は誤操作が少なく操作性が良いと感じた。
ノイキャン性能はアプリから3段階の設定が可能。基本的には一番強い「高」を選んでおけば問題ない。消音性能は図抜けて高いわけではなく、あくまで聴いている音楽を邪魔しないバランスでのノイキャンとなっている。エアコンや電車の走行音といった生活ノイズはしっかりと消してくれているため、特段物足りないと感じることはないだろう。また、外音取り込みにも対応しているため、イヤホンを外さずともお店での買い物や会話が可能だ。
マーシャルと繋がれる感動、それはプライスレス
バッテリーはイヤホン本体で約9時間(ノイキャンON時は約6時間)、ケース充電込みで最大約43時間の再生が可能。Qi充電によるワイヤレスチャージにも対応している。防水性能は突然の小雨にも耐えられるIPX5。
だが、『Motif II A.N.C.』を語るならスペックより重要視したい点がある。それこそが、ひとえにマーシャルブランドのアイテムであるという点だ。
デザインの秀逸さについては冒頭で語ってきたが、マーシャルといえば音楽史において欠かせない存在なのは言うまでもない。マーシャルのアイテムを所有するということは、ジミ・ヘンドリックス、オアシス、エリック・クラプトンなど、数々の歴史的アーティストたちと繋がれることをも意味するのだ。
一方でカルチャーからの目線ではなく、最近はもっとカジュアルに、ファッションからの目線でマーシャルを語ることもできるように感じている。これも筆者の観測範囲でな話しになるが、都内に出るとマーシャルのワイヤレスヘッドホンやイヤホンを装着している若者を目にする機会が、以前より明らかに増えた(見るからにバンド関係の人でなくとも)。ファッション的な意味でも愛されているように見える。
ロックサウンドのシグネチャーサウンドともいえる、マーシャル。その音の片鱗を、手のひらサイズのイヤホンで味わえるだなんて、なんと感慨深いことか。ジェフ・ベックやイングウェイのギターサウンドを聴くのに、これほど正解なイヤホンはそうないだろう。
❍参考情報
https://marshall.kanjitsu.com/product/motif2-anc/
趣味のゲーム配信だからこそ、上質な機材で楽しみたい Roland『BRIDGE CAST』を使ってみた
編集部スタッフがエンタメ×テクノロジーに関する日々の発見をリレー形式で綴る連載「エンタメとテクノロジーの隙間から」。第三回はRo…