『Talk About Virtual Talent』第五回:佃煮のりお/犬山たまき
漫画家と男の娘VTuberが辿ってきた“独自のルート” 佃煮のりお/犬山たまきが語り尽くす「のりプロ」のこれまでとこれから
バーチャルYouTuber(VTuber)をはじめとする、“バーチャルタレント”シーンを様々な視点から見ているクリエイター・文化人に話を聞く連載『Talk About Virtual Talent』。今回は『双葉さん家の姉弟』やアニメ化も果たした『ひめゴト』などで知られる漫画家・佃煮のりおがプロデュースするVTuberプロダクション「のりプロ」について、佃煮のりおと彼女が産んだ男の娘VTuber・犬山たまきへインタビュー。
多くの個性的なタレントが所属し、さらにはモデラーや動画師を自前で抱える「のりプロ」。今回は“ふたり”がVTuberとして走り始めたころから同事務所を立ち上げて現在に至るまでの軌跡を振り返ってもらった。
佃煮のりおのプロデュース手腕、犬山たまきの苦悩、そして知られざる二人の関係など、ボリューム盛りだくさんのインタビューとなった。(編集部)
佃煮のりお
「のりおいける!
漫画家兼、のりプロ社長の佃煮のりおです。
永遠の17歳です♡」のりプロの社長兼プロ漫画家。
犬山たまきのプロデュースをきっかけにVTuber業界に参入する。
漫画家としての代表作はアニメ化もした『ひめゴト』と『双葉さん家の姉弟』。
漫画家業は開店休業中。
犬山たまき
「はーい、ご主人様!わんたま~!
男の娘VTuberの犬山たまきです!」男の娘VTuber。喋ったり歌ったり、変わった企画をやるのが大好き。
のりおママにこき使われながら、毎日活動を頑張っています。
バブみがある人が好きで、ドMでメンヘラな一面も……?
真摯な事務所に導かれて 犬山たまきが個人VTuberとしてデビューしたきっかけ
ーー佃煮のりおさんが犬山たまきさんをプロデュースしてVTuberを始めてみようと思ったきっかけは何ですか?
佃煮のりお(以下、のりお):キズナアイさんを見たのがきっかけです。そのときは佃煮のりおのままの姿でやるっていう想定もあったんですけど、やっぱりVTuberってキャラクターだと思ったんです。だから私も、界隈に受け入れてもらえるようにするため、別人格の犬山たまきを産みました。
ーーそうして産まれた犬山たまきさんですが、最初は企業勢になりたかったそうですね。オーディションなどもお受けになられましたか?
犬山たまき(以下、たまき):企業はにじさんじさんと、ミライアカリさんが所属していた事務所のENTUMさんを受けました。にじさんじさんは連絡がなくて落ちちゃったんですけど、ENTUMさんは連絡して3時間後ぐらいに「面談しましょう」っていう返事が来ました。もともと社長さんがのりお先生を知ってくださってたらしくて。「佃煮のりおから連絡来た!」って社内がざわついたそうです(笑)。
ーーなぜ事務所に入りたかったんですか?
のりお:当時は、VTuberとしてデビューするなら企業に入るしか道がないと思っていたんですよ。3DトラッキングもLive2Dも仕組みがわからない。だから入らないといけないのかな、となんとなく思っていたんです。ただ、ENTUMさんのお話を聞いていく中で、事務所に所属することのメリット・デメリットを真摯に話してくださって。所属する場合、「犬山たまきの姿」の権利は事務所に帰属するし、収益も事務所に納めないといけないということを教わったんです。でも、私の場合は見た目も自分で描くつもりでしたから……。
ーー権利が持てるのなら、事務所にお金払う意味がなくなりますね。
のりお:その通りです。活動をする上で企画を考えるのも自分です。私はニコニコ動画をやっていた時のコミュニティがすでにありましたし、漫画家としても知られていて、Twitter(現:X)のフォロワー数も当時すでに10万を超えていたので、スタートでもそこまで困らないなと。「この場合、事務所は何をしてくれるんでしょうか?」とENTUMさんに素直に言ったら「我々がのりお先生にできることはないです」って言われたんです。
ーーENTUMさんが正直で、一切騙したりしなかったのはすごいですね。
のりお:そうなんですよ。社長さんがすごく真摯な方でした。その時に「名取さなちゃんって知ってますか?」って聞かれて。「この子は自分で絵を描いて自分でプロデュースする『個人勢』という活動の仕方をしてるんです。先生が向いてるのは多分こっちだと思います」と仰っていただいて、それで個人勢として活動をスタートしたんです。
ーーこの時期に神楽めあさんと出会ったそうですが、最初にめあさんを知ったきっかけはなんだったんでしょう
たまき:神楽めあさんは、ボクが初めて見た過激路線のVTuberだったんです。他のVTuberは下ネタも直接的な表現をあまり使っていなくて、アイドル的な見せ方が強くて。「汚れ芸人みたいなことやっちゃいけないんだな」って思っていた時に、めあさんがそのイメージをぶち壊してくれて。「ボクもそっちがいい、めあちゃんみたいになりたい!」っていうところからVTuberを勉強していきました。めあさんはしゃべりも歌も上手くて、目指したいところがいっぱいありました。
ーーかなりリスペクトされていたんですね。
たまき:デビューから今に至るまで、ずっと憧れの人ですね。めあさんに以前「あたしはたまきちゃんを尊敬してる。たまきちゃんがいなかったらコラボも呼んでもらえなくなっちゃうし、これからどんな活動していいかわかんないよ」「戦友みたいに思っている」と伝えてくれたことがあって、本当に嬉しかったです。その影響なのかな、ボクから他のVTuberさんに対しても、お友達というより「戦友」「仲間」という感覚を持つことが多いですね。