『Talk About Virtual Talent』第五回:佃煮のりお/犬山たまき
漫画家と男の娘VTuberが辿ってきた“独自のルート” 佃煮のりお/犬山たまきが語り尽くす「のりプロ」のこれまでとこれから
「のりプロ」がクリエイターのための事務所として羽ばたくために
ーー直近の活動を見ていて「のりプロ」は大きくVTuberの箱として成長していると感じています。そもそものりプロを発足させたのはなぜなんでしょう?
のりお:最初は事務所にするつもりがなかったんです。
ただ、幼馴染の女の子に久しぶりに会ったら、夢を追いかけながら極貧生活をしているというお話を聞いて……。私は彼女の素敵な声に昔から憧れていたので、彼女のような才能が埋もれるのはもったいない! と思って。それで「VTuberにならない?」とお誘いしたのが始まりでした。それが、今の白雪みしろちゃんですね。
当時はまったく事務所にする想定はありませんでした。ノウハウもなかったですし、社長になるマインドも出来ていなかったので……。実は、社長としての意識がちゃんと生まれたのは、事務所を設立して4年目の、本当に最近のことだったりします(笑)。
ーーあらためて振り返ってみて、事務所を作ってよかったと感じるのはどんなときですか?
のりお:たまきが個人で活動していた時に「にじさんじの皆さんもホロライブの皆さんも、コラボでたまきと遊びには来て下さるけど、それぞれの事務所に帰って行ってしまうのが寂しい」と感じていたんです。
「帰ってきてくれる仲間が欲しい」という夢が、仲間がいることで叶って、すごく良かったと思っています。ただ、私が日々忙しそうにしているので、メンバーは声を掛けるのをかなり遠慮しているそうなんです(笑)。最近はスタッフさんにある程度の業務をお任せしているので、私から「お話しない?」と声を掛けて交流させてもらっています。メンバーの方からも積極的に交流してくれるようになってきて、いまはすごく嬉しいです。
ーー経営者として苦労したことはありますか?
のりお:のりプロを設立してから3年くらいは「経営者ってなんなんだろう? 社長って何なんだろう?」とずっと思っていました。ここ最近ですが、数ヶ月のあいだ色んな会社の社長さんとお会いして、お話を伺う機会が何度かあって、そこでやっと経営者としての振る舞い方や考え方が分かってきた気がします。
これまでは「人に仕事を任せる」ということがなかなかできなくて。全部自分でやっちゃいたくなるんですよね。それを最近は人に任せて、自分にしか出来ないことを優先できるようになりました。小さな一歩かもしれませんが、私にとってはかなり大きな一歩でした!
ーー今後は「クリエイターVTuberの箱になっていく」とおっしゃってたのがすごい印象的です。どのようなイメージですか?
のりお:もともと、私も犬山たまきもクリエイターVTuberのジャンルには入るのかなと思うんです。他には有名どころだとしぐれうい先生とか伊東ライフ先生とか、成功している方がたくさんいらっしゃいますよね。
ただ、イラストレーターとしてすでに有名でも、いざYouTubeをやると全然伸びないというパターンもめちゃくちゃ多いんですよ。「この人、ブランディングのやり方を変えたら絶対に伸びるのに」と思う時があります。私自身、元々絵師さんが大好きだし、ものづくりできる人へのリスペクトがめちゃくちゃ強いんです。「VTuber×クリエイター」って相性がいいし、これから伸びていくジャンルだと思うけど、ノウハウを持っていない人が多すぎる、とも思っています。「のりプロ」でそれをサポートしていきたいなっていう思いがきっかけでしたね。
ーーそれで今回、新たにオーディションを始めたんですね。
のりお:そうです。クリエイター兼VTuberになりたい人、デザイナー、動画師、作曲家などの「クリエイター×VTuber」というのがこれから伸びていくジャンルだと思っています。
ーーVTuberよりも、クリエイターであることが優先ですか?
のりお:そうですね。今回の応募要項に「クリエイターであること」が入っているのもまさにそういう理由からです。でも、クリエイターって難しいですよね。誰でも名乗ってさえしまえばクリエイターだと思うので。それがVTuberとして活かせるクリエイターなのかを判断するためのオーディションですね。
ーークリエイターのジャンルに関してはある程度決まっているんでしょうか?
のりお:全然ないです。何かを作る人であれば誰もがクリエイターだと思っています。いずれはのりプロを、ものづくりができるプロダクションにしたいなと思っていて。「アニメも作れますよ」「漫画も作れますよ」という、クリエイティブを請け負えるタレント事務所にしていきたいです。どちらかというと今回のオーディションは、才能発掘オーディションみたいな側面もありますね。
ーー参加したい人はいっぱいいらっしゃると思うんですけど、クリエイターの中にはしゃべるのが得意ではない人もいると思うんですよ。そういう方に対して、なにかサポートをされる予定ですか?
のりお:クリエイターとして専属でのりプロに入る、というパターンもOKにしようかなと思っています。タレント活動はしないけれど、クリエイターとしてのりプロの事務所を一緒に支えてもらう形ですね。事務所主導でなにかを作る場合、専属の方がいると依頼もしやすいですし、スケジュールも取りやすかったりしますよね。
ーー犬山たまきさんはどんどんスポットを浴びていく存在だと思っていたので、バックアップ、プロデュースに回っていきたいというのは今回お話を聞いてみて意外でした。
のりお:現状、スポットが当たらざるを得なくて当たっている感じはしますね。たまきくんはタレントじゃなくて企画と進行だけやりたいけど、その人材が足りないからガヤもやらないといけないし、トークのパートにも入らなきゃいけないし、みたいなところなので……。やっぱり、もうちょっと人材が欲しいなって思いますね。今のメンバーも、これから仲間になるみんなも、どんどんたまきに代わっていってくれたらうれしいです。
ーーありがとうございます。では、最後に「佃煮のりお先生」から、来年の「犬山たまきさん」に向けて一言お願いします。
のりお:たまき、あまりにもしんどくて「このままチャンネルごと消していなくなっちゃおうか」って相談した時もありましたね。それでも前を向いて、いま私たちはここにいます。いまあなたの傍に居てくれる人たちを一番大切に、自分の居場所を守って行ってください。私もいつでも協力しますからね。