“復縁のため”の恋愛リアリティーショーに学ぶこと 『ラブ トランジット』の元恋人同士たちが見せた“変化”に対する向き合い方
複数人の男女が限られた時間と空間の中で本気の恋愛をする恋愛リアリティショー。台本のないリアルな人間模様を楽しめる一方で、“ショー”という名前がついているように、そこには番組を盛り上げるための演出も一部含まれる。リアルとフィクションの配分は番組によって、あるいはシーズンによっても変わってくるが、その点において6月15日からPrime Videoで配信中のAmazon Original『ラブ トランジット』はかなりリアル成分が多めな番組であった。というのも、集まった男女は我々があずかり知らぬところで一度恋に落ち、愛を育み、最終的には破局に至った“元恋人同士”だからである。
かつて恋人だった5組の男女が約1ヶ月間のホカンス(ホテルでの共同生活)を通して、過去の恋と新たな出会いの間で揺れ動く姿に迫る本番組。彼らは最初、互いの年齢も職業も、誰が誰の“X”(=元恋人)かも知らないまま日々を過ごしていく。「おいおい、なんてひどいことをする番組なんだ……」というのが第一の感想だった。Xが自分以外の誰かと恋に落ちていく様を見せられるなんて、ある意味拷問に近い。だってその誰かに向けられたXの光悦した表情、愛おしそうな目、好かれるために努力する姿勢は、かつて自分に向けられていたものなのだから。筆者なら発狂、いやXの新たな恋をあの手この手で妨害してしまうかもしれない。
実際にエピソード1でその過去が明らかになった看護師のえりとXの場合、えりの方にかなり未練があり、復縁を望んでいた。一方のXは別れた理由が理由だけに復縁はないと思っていて、序盤からアパレルディレクター・あみに心が一直線に向かっていく。そんな姿を目の当たりにし、涙を流すえり。二人が恋人同士だった頃の映像とともに挿入歌「片っぽ」(歌:eill)が流れるシーンでは、〈叶わない未来予想図〉〈隠した涙は私だけ片っぽ〉といった歌詞がえりの心情と重なり、気づけば号泣している自分がいた。
本番組では当たり前だが、元カノと元カレ、両者に番組参加の意志がある。どちらが誘ったのか、どうして誘ったのかはカップルによって様々だが、あまりにも酷い別れ方をしていたら、そもそも参加する気にもならないだろう。全員が「この人となら参加してもいいかな」と思える相手と応募してきているから、予想以上にXに対して未練を残している参加者が多い。だから、結果的に『ラブ トランジット』は徐々に復縁したい人のための、復縁するためにある番組としての様相を帯びていった。「もし、いま復縁したい相手がいるなら、まずはこの番組を見るべき」と言っても過言ではないほど、そこで巻き起こる人間ドラマに学ぶべきことがたくさんある。
「"復縁したい”じゃなくて、“新しく付き合ってほしい”です」
これはとある参加者が最終告白でXに送った言葉だ。復縁するためにはどうすればいいか。それは逆説的だが、復縁したいとは思わないこと。復縁するために行動するのではなくて、想いを寄せる相手にどうしたら好きになってもらえるかを考える。幸いにも今回の場合はその相手と一度は結ばれたにもかかわらず、別れてしまった原因が少なからず分かっているのだから、やるべきことは明白だ。別れた当時から変わった自分を見せられるか、変わった相手を受け入れることができるか。最終的に復縁の道を選んだ3組はそのどちらか、あるいは両方を満たしていたように思う。