“蛙化現象”の次は“蛇化現象”? TikTokで「恋人の気持ち悪い行動が好き」という人が相次ぐ

TikTokで“蛇化現象”が相次ぐ

 「蛙化現象」ということばをご存知だろうか。Z世代を中心にSNSで流行し、しばしば物議を醸していることから最近知ったという方も多いはずだ。しかし最先端は「蛇化現象」らしい。「かえる」ではない、「へび」だ。TikTokを中心に流行しているというこのことば。どのように生まれ、どのような意味で使われているのか、調べてみた。

 「蛇化現象」について触れる前に、「蛙化現象」についておさらいしておきたい。そもそも「蛙化現象」の「蛙」はグリム童話の「かえるの王さま」が由来になっている。物語には、魔法によって蛙の姿になってしまった王子様に対して、女王が生理的な嫌悪感を示す描写がある。「蛙化現象」とは、好意を持っている相手が自分にも好意を持っていると知ることをきっかけに、気持ちが冷めてしまうという現象だ。片想いだったのが、相手が振り向いて両想いになった瞬間に生理的な嫌悪感を抱くのだ。

 本来の意味はこうだが、現在のムーブメントでは転じて「ある行動をきっかけに、好意を抱いていた相手に対して気持ちが冷める」ことを指す意味で遣われることが主流になっている。パートナーと別れるきっかけになった幻滅する行動とセットで語られることが多い。

 では「蛇化現象」とはどういう意味を持つのかというと、これは蛙の捕食動物である蛇を持ち出し「蛙化現象」とは逆で、どんな行動でもパートナーだったらよく見えてしまうというものだ。

@kochamocha.o3o 詳しくは前の動画みてね🐍! 次回は蛇化にした由来! #蛇化現象 #蛙化現象 #蛇化 #蛙化 #こちらもちゃ #俺の彼女は ♬ オリジナル楽曲 - こちゃもちゃ

 「蛇化現象」という言葉を生み出したのは、12万フォロワーがいるクリエイターの「こちゃもちゃ」だ。「こちゃ」と「もちゃ」のふたりがカップルとして動画を投稿している。導入が「俺の彼女は」や「私の彼氏は」となっているものがあり、それぞれの視点から動画を制作しているようだ。

 「こちゃもちゃ」が「蛇化現象」について初めて触れているのは、4月5日に投稿された「蛙化現象ではなくて蛇化現象ってものを作ってみた🐸🐍」というコメントとともに投稿している彼氏目線の動画だ。

 彼氏が鼻毛や鼻くそを出していても、彼女は「まったく目立ちたがりやさんなんだから」と褒めてくれるというものだ。彼女は「失敗やダサい行動」も「可愛いね」と、受け入れてくれるという。生理的な嫌悪感を抱いている「蛙化現象」とは真逆の状態だ。

 動画は360万再生(2023年5月1日時点)されており、視聴したユーザーからの「流行らせよう!」「君たち素敵すぎる」という肯定的なコメントがあふれている。

 なぜここまで肯定的に歓迎されているのだろうか。

 「蛙化現象」ということばは、主に「パートナーに冷めた瞬間」のエピソードトークとともに語られることが多い。時には共感できないほど些細なことで、一般的に「失敗やダサい行動」と考えられないようなトピックスも多い。生理的な嫌悪感は本人が意図して生じるものではないため、女性側に悪気はないのはわかる。しかし「そんな理由で振られてしまうとは」と、女性である筆者が見ても理不尽に感じてしまうものが多い。

 それに対して、「蛇化現象」はどうだろうか。パートナーに対して「恋は盲目」な状態になっていて、相手を全肯定しているという状態だ。パートナーが自分の味方でいてくれるに越したことはない。自分自身やパートナーが「蛇化」する方が、幸せに感じるはずだ。

@hicorook

I was having a very emotional day, feeling insecure and out of place. So I cried to Olivia and after feeling through it, we wrote this song in 10 minutes to remember the joy in being different 🐸 happy Tuesday

♬ original sound - corook

 実はTikTokではこのようにポジティブなメッセージを発信する動画はバイラルしやすい。TikTokに対して過激な動画が炎上するプラットフォームだというイメージを持つ方も多いかもしれないが、主にZ世代に対してメンタルヘルスやセルフケアを啓蒙するポジティブな動画も多く存在し、アメリカを中心にバイラルすることが多い。4月にはアメリカでアーティストの「corook」が「人と違うことの喜びを忘れないために」と歌った動画が1300万再生され、支持されている。

 TikTokは基本的にその人が観たい動画がおすすめとして表示されるプラットフォームだ。日本でもポジティブな気持ちにさせてくれる動画がバイラルするのは不思議なことではない。パートナーがいる人ならば、「蛙化現象」よりも好ましい状態の「蛇化現象」について視聴したいと思っても不思議ではない。

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