DTMユーザー必須のアイテムに? 立体音響にも対応のソニー新モニターヘッドホン『MDR-MV1』を体験した

DTMの必須アイテム? ソニー新モニターヘッドホンに注目

 ソニーが5月12日、新たな開放型モニターヘッドホン『MDR-MV1』を発売。今回は同製品を渋谷LUSH HUBにて体験してきた。

収録現場は「大規模スタジオ」→「ホームスタジオ」へ。自宅で完結するために必要な技術を詰め込んだ一台に

 モニターヘッドホンは音楽制作現場の進化と共に発展してきたが、そのスタンダードともいえるのは同じくソニーの名機『MDR-CD900ST』だろう。数々の収録現場やホームスタジオで用いられてきた同機だが、数年前にもその次世代機といえる『MDR-M1ST』が登場している。『MDR-M1ST』はハイレゾ対応の密閉型ヘッドホンとして注目を集めていたが、今回の『MDR-MV1』は“クリエイター向け背面開放型ヘッドホン”と方向性が異なるモデルだ。

『MDR-MV1』

 筆者が実際に体験したうえで、大きなポイントだと感じたのは2点。「立体音響に関するハード・ソフトからのアプローチ」と「背面開放型ヘッドホンが持つ弱点の克服」だ。

 まずは「立体音響に関するハード・ソフトからのアプローチ」について。今回、ソニーは空間オーディオ・立体音響に対応したモニターヘッドホンを手掛けるにあたり、既存の「360 Reality Audio」への対応のほか、「360 Virtual Mixing Envionment(バーチャル立体音響ミックス技術)」を新たに使用。通常、「360 Reality Audio」に対応した音源のモニターチェックを行う場合は13個のスピーカーを360度に配置する必要があるのだが、自宅でその環境を再現するのは不可能に近い。そこで「360 Virtual Mixing Envionment」を活用して、自宅のモニターヘッドホンを「360 Reality Audio」の環境に対応させる、ということらしい。

 「360 Virtual Mixing Envionment」は、メディア・インテグレーション社が所有するスタジオ「MiL Studio」へ持参したヘッドホンを持ち込むことで測定可能(要予約・有料)。耳元に専用のマイクを装着し、スタジオにある360度のスピーカーとヘッドホンで聴いた場合の音の聴こえ方を測定し、その2つの環境をミックスする形でプロファイルデータを作成。「360 WalkMix Creator™」や『Pro Tools』などに適用して、自宅DAW上のプロジェクトに環境を立ち上げることができる。

 また、もうひとつのポイントである「背面開放型ヘッドホンが持つ弱点の克服」については、市場の変化も背景に挙げられるという。

 有線ヘッドホン全体の業界台数は安定しており、なかでも3〜7万円のセグメントのトレンドは“開放型”になっていることや、リスナー側も自宅で「立体音響」コンテンツを楽しむ機会が増えていることなどを踏まえて、背面開放型でモニターヘッドホンを作る、という選択肢に至ったそうだ。

 この技術には数々のクリエイター・エンジニアも協力しているが、ただ単にヒアリングをするだけでなく、どういう音を求めているかを聞いたうえで、「空間の定位を良くしてほしい」という要望に応える形で改良を重ねたという。また、背面開放型は「低音が逃げてしまう」デメリットを持ち合わせているのだが、『MDR-MV1』では5〜80000Hzという超広帯域をフォローしたドライバーユニット背面で音響的に塞がない背面開放型のハウジング音響構造を採用し、ヘッドホン内部の反射音を低減することで、信号処理で付与された反射音への影響を抑えて正確に音場を再現。不要な空間共鳴を排除しながら、色付けの少ない自然で充実した低音域再生ができ、クリエイターが意図した音場を表現することが可能となった。さらにクリエイターからの要望を叶えるため、音響負荷ダクトをつけたうえでさらなる微調整を続けることで、モニターヘッドホンとしての性能を最大限に高めていった。

 装着感も良好なため長時間装着することができるほか、開放型なので定位もハッキリ見えるうえ、低音も逃げずに広域がフラットに聴こえるのが明確にわかる。低音も余計にブーストされていないため、ありがちな低音の量感と中音域との分離もまったくないので、モニターヘッドホンとしてクリアしたいポイントはすべて満たしているように感じる。

 また、モニターチェックとなると、移動先・出先で行う場合もあるのだが、その点も安心。インビーダンスが24Ωなので、キンバーケーブルさえあれば、アンプなしでラップトップに接続して使ってチェックすることも可能だ。

 さらに、製造・販売にもこだわりが詰め込まれている。30年売り続けるために特殊な素材を使わず、グローバルでの展開を見据えてソニーマーケティング株式会社からの発売にしていたり、購入日から1年間の無償修理メーカー保証も行われるなど、万全の体制で世界のクリエイターに向けてリリースされることになるだろう。

 自宅での制作時間が増加していたり、新たにクリエイターとして制作を始める人も多いコロナ禍以降の社会。そんななかでホームスタジオ用のモニターヘッドホンとしてリリースされる『MDR-MV1』は、DTMユーザーにとって必須かつ新たなスタンダードとなる一台になっていくかもしれない。

■製品情報
『MDR-MV1』
型式:オープンバックダイナミック
ドライバーユニット:40mm
音圧感度:100dB/mW
再生周波数帯域:5〜80000Hz(IEC*1)
インビーダンス:24Ω(1kHzにて)
最大入力:1500mQ(IEC*1)
質量:約223g(ケーブル含まず)
発売日:2023年5月12日予定
カラー:ブラック

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