食品会社までエンタメ関連ビジネスに進出する韓国 “財閥的な特殊性”と“今後の発展”について紐解く
IT・アイドル・ゲームの3ジャンルが発展を目指して関わり合う
NAVER株式会社は、韓国の国内検索広告市場シェアの7割を占める最大の検索ポータルサービス『NAVER』を運営するIT企業だ。元々はサムスンSDSの社内ベンチャーである「ウェブグライダー」から、社内公募を通じて選抜され、支援を受けて1998年1月に初めてサービスを始めた。 日本でもNAVERまとめ(現在はサービス終了)やソフトバンクとの合弁会社であるAホールディングスの傘下にあるZホールディングス(現Yahoo!JAPAN運営)やLINE株式会社として知られている。NAVERは直接的に芸能事務所を運営している訳ではないが、BLACKPINKなどが所属する大手芸能事務所YGエンターテイメントの株を、創業者のヤン・ヒョンソクに続いて2番目に多く所有している。また、2017年〜2021年までグローバルスターインターネット放送プラットフォームであるV LIVE運営し、特に韓国アイドルの世界に「生配信」という新しいコンテンツをもたらした。2021年1月27日にHYBE傘下のbeNXが2000億ウォンを投資することでV LIVE事業部を譲り受け、NAVERは逆に4110億ウォンを投資することでbeNXの株式49%を取得し、それに伴って2大株主になることになった。協業をきっかけにbeNXはWEVERSE COMPANYと名前を変え、現在はVLIVEのプラットフォームごとWEVERSE LIVEに吸収統一された。
kakaoは韓国の大企業TOP15に名を連ねる国内最大級のIT企業だ。90年代に国内トップの検索サイトだったDaumを所有しているが、業界1位の座をNAVERに奪われた後、いち早くパソコンからスマートフォン向けのサービスに注力するようになったことで成功した。韓国でもっとも使われているメッセンジャーアプリのカカオトークは、現在メッセンジャー機能だけではなく人気店の予約や順番待ち、タクシーを呼ぶサービスなどでも使われており、韓国在住者にとってはインフラに近いくらい生活にマストのアプリとして定着している。また、韓国最大手の音源配信サービスであるMelOnを所有しており、これも「スマホで音楽を聴く」という今では当たり前の状況にいち早く対応した結果だろう。MelOnチャートは依然としてアーティストの人気のバロメーターとして最も多く指針にされるものでもあり、年末の関連アワードも特にアイドルファンにとっては欠かせないものになっている。kakaoは傘下に芸能事務所であるkakaoエンターテイメントを所有しているが、この傘下には国民的歌手であるIUとシン・セギョン、WOODZといったソロ歌手が所属するEDAMエンターテイメント、MONSTA X・IVE・CRAVITYなどの人気グループが所属しているSTARSHIPエンターテイメント、同じく人気のTHE BOYZ・APinkやVICTON・Weeekly、ATBOなどが所属するISTエンターテイメント、ヒットメーカーとして知られるプロデューサー、プラックアイドピルスンとSTAYCが所属するHIGH UP、人気シンガーソングライターのユ・ヒョルが立ち上げ、多くの非アイドル系人気アーティストが所属しており、最近では韓国で最も人気のあるMC ユ・ジェソクや歌手のイ・ヒョリが移籍してきたことで知られるアンテナミュージックがある。kakaoから生まれたEDAM以外、大衆認知度が高く実力派の所属アーティストで知られる中小事務所を吸収したという点が特徴と言えるだろう。
また、バーチャルアイドル制作に進出している韓国の大手ゲーム会社ネットマーブルの議長であるパン・ジュンヒョクは、親戚であるパン・シヒョクが議長をつとめるHYBEの2番手の株主だ。今年の2月にサービスは終了したが、韓国大手ゲーム会社のNCソフトは、『UNIVERSE』というK-POPエンターテインメントプラットフォームーー AIなど最新IT技術とエンターテインメントコンテンツを結合し、多様なオン・オフラインファンダム活動をモバイルで楽しめるオールインワンアプリを開発運営していた。こちらは実際のアイドルが録音した音声を使って好きな音声メッセージを制作できるPRIVATE MESSAGEというAIを利用したサービスには、独自のものがあった。
このように、90年代末からビジネスを拡大して成長した比較的新しいビジネスであるIT・アイドル・ゲームという3つのジャンルがお互いに利点を生かして関わり合い、世界をターゲットにさらなる発展を目指しているような動きが見られるのが、韓国のアイドルエンターテイメントの現在と言えるのではないだろうか。