格闘技はネット配信で観る時代に突入したのか 『RIZIN』『BreakingDown』など人気コンテンツが続々参入した2022年の変革
2022年、世界を揺るがす熱狂的な盛り上がりを見せたサッカー「FIFA ワールドカップ カタール 2022」大会。代表チームの躍進に日本中が釘付けとなったが、その試合中継を観る手段としてインターネットの動画配信サービスが大きな存在感を示した。
W杯の放送権料は高騰しており、今大会は総額200億円を超えるともいわれている。既存のテレビ局だけでは賄えなくなったところをインターネットTVプラットホーム『ABEMA』が参入。同サイトで全試合無料生放送を行い、莫大な視聴者数を獲得し「スポーツ中継はネットの動画配信で観る」という習慣を根付かせる起爆剤となった。
そもそもネット配信とスポーツ中継の相性は非常に良い。試合の最後まで完全放送できる上、途中でCMも入らない。画質も良く、マルチアングルやプレイバックも楽しめるなど、いままでのテレビを超えた視聴体験を提供することが可能だ。このようなネット配信の利便性と興奮を、半年ほど先行して思い知らされていたのが格闘技ファンだ。
2022年の格闘技業界は様々なビッグマッチやイベントが開催され、空前の盛り上がりを見せた。
なかでも、6月に開催された『THA MATCH 2022』では、実現不可能と言われていた那須川天心と武尊という宿命のライバルの一戦をマッチアップ。開催場所となった東京ドームのチケットはリング最前列席が300万円と破格の設定だったが全席ソールドアウト。チケット収入だけで20億円を稼ぎ出すという空前の興行となった。
試合の模様はフジテレビ系列で生中継するほか、ABEMAでPPV配信されると発表されていたが、大会開催の3週間前に突如としてフジテレビが放送中止を発表。取りやめた理由が特に明示されなかったため、さまざまな憶測が囁かれた。運営側は緊急記者会見を開き、地上波中継復活に向けて努力することをアピール。武尊、天心など多くの選手もSNSで訴えたが、決定が覆ることはなかった。
理由はどうあれ、テレビで生中継が観られなくなったことは事実。これを機に格闘技ファンだけでなく、世紀の一戦を生で観たいという一般層もネット配信へと流れ、結果的に『THE MATCH』のPPV券売数は50万件を突破し、ABEMA開局史上最高数を記録。その収益は25億円以上と言われており、これは先述のチケット収入をも上回っていると予測できる。後日、試合映像は、ABEMAでの無料配信やYouTube、そして一部の地上波でも放送されたが、生放送はネット配信のPPVで観るしかないという意識が定着した。さらに9月に開催された『超RIZIN』では、朝倉未来とフロイド・メイウェザーのエキシビションマッチが組まれ、世界的な注目を集めたが、これも地上波放送は行われず、生中継はネット配信だけに。ファンは当然のようにPPVに殺到した。