芸人&YouTuberが推理と笑いの両立に葛藤 マダミス×お笑いイベント『マーダーマーダー』の奥深さと面白さ
ノーミーツ発のストーリーゲームレーベル「POLARIS(ポラリス)」と放送作家の白武ときおがタッグを組み、マーダーミステリーとバラエティ要素をミックスさせたライブ「『マーダーマーダー』〜踊る貴婦人〜」が11月20日に開催された。
マーダーミステリーとは、参加者が物語の登場人物になりきって殺人事件の犯人を見つける体験型推理ゲーム。マーダーマーダーは従来のマーダーミステリーと異なり、「本人役を演じる」ということが大きなポイントとなる。
1部のYouTuberチームではヨビノリたくみ、まつきりな、雷獣のベテランち、かべがプレイヤーとして参加。2部の芸人チームではかが屋・賀屋、サツマカワRPG、ママタルト・檜原、田島芽瑠が参加。そして1部2部ともに、かが屋・加賀がゲームマスターとして進行を担当した。
「『マーダーマーダー』〜踊る貴婦人〜」では、プレイヤー参加者が事前にマーダーミステリーに挑戦し、そのVTRを観客と共に観賞するスタイルを取っており、従来のマーダーミステリーにはない要素が盛りだくさんのライブとなった。
ここでは、マーダーミステリーの新たな切り口を見つけた「『マーダーマーダー』〜踊る貴婦人〜」の内容を紹介する。
1部・2部共通のあらすじ
とある夜のできごと、地方での番組撮影のため目的地に向かっていた4人のタレントたち。しかし、突然の大雨によって近くのホテルで1泊することになる。ホテルには先代の満貫利一からオーナーを継いだ・満貫理子、立ち往生を余儀なくされた4人の登山客、女子大生・三沢楓、野鳥写真家・大槻士郎、古美術商の渡辺金造、旅行客の木戸圭一(かが屋・加賀)が一足先に到着していた。彼らにはそれぞれの思惑があり、タレントたちに依頼を持ちかける。この依頼によって、タレントたちは殺人事件に巻き込まれていく。
※ここからは、本編のネタバレ要素がありますのでご注意ください。
1部「YouTuberチーム」
このライブのために書き下ろされたPOLARISのオリジナルストーリーにより、「なにかドラマが生まれるのではないか」とヨビノリたくみは推測した。
演者のお笑い力が試される「マダミス×バラエティ」
マーダーマーダーでは「マダミス×バラエティ」というコンセプト通り、いきなり大喜利を振られる場面もある。実際、著名な美術品蒐集家であった満貫利一のコレクション”豊満な女性”が描かれた絵画に対して、「タイトルは何だと思いますか?」とお題のように問われ、それぞれのプレイヤーが想像力を働かせアドリブで回答し、笑いを誘った。トラブルに対して、起点を利かせられるプレイヤーたちの能力の高さが光った場面だろう。
プレイヤーたちはホテルオーナーの満貫理子、宿泊客の三沢・渡辺からそれぞれ異なる依頼を受け、計画を実行している合間にプレイヤーの誰かが、宿泊客の1人である、野鳥研究家の大槻を殺害してしまう。この計画実行中にも笑いの要素が盛りだくさんだ。女子大生・三沢の誘惑により、依頼を受けたベテランちは口を尖らせ、盗人のような表情を浮かべながら入室。加えて、「三沢さんの笑顔が見たい」を連呼する欲望丸出しの立ち回りを披露。このカメラワークを活かしたボケは、従来のマーダーミステリーにはない新要素が見つかった場面だった。
細かい設定にツッコミを入れつつ、ハイレベルな推理を展開
遺体の第一発見者である木戸(かが屋・加賀)は刑事であることが判明。推理パートでゲームマスターとして進行を務める。
推理パートではYouTuberチームが細かい設定にツッコミを入れる場面が目立った。木戸が手錠を見せ、刑事だと証明する場面では、かべが「手帳ちゃう?普通」と仕掛けられた設定の甘さを見逃さない。また、ヨビノリたくみは”満貫利一”を”役満一向聴”と言い間違える麻雀ボケをかまし、登場人物の設定を活かす場面もあった。これには満貫理子も笑いを堪えられず、メタ的な視点でも笑える二重構造になった。
ゲームは各々が鞄の中身を見せ合い、嘘と真実の発言を見抜きつつ、犯人を探していく。この推理パートではヨビノリたくみの鋭さが光った。被害者の大槻の荷物が現場にある空のトランクだけだったことが判明すると、「カメラを持っていないなら野鳥写真家ではない」と瞬時に推理したり(後に週刊誌の記者であることが判明)、序盤にタレントの一人が大槻に野鳥の写真を見せられた場面に対して「野鳥の写真じゃないでしょ。何を見せられていたの?」と勘づき、「秘密を握られて、ゆすられたことが動機なのでは?」と発言したりと物語の結末に迫るような冴えた推理を連発していた。
ヨビノリたくみは高学歴の頭脳かつマーダーミステリーの経験を活かして、一人で真相まで辿り着いたと言えるレベルの活躍を見せた。「芸人と頭が良い人たちをキャスティングすれば、コンテンツとして異なる面白みが出るのでは?」という制作陣の意図を見事に汲んだ立ち回りである。1部はバラエティ的な面白さを担保しつつ、爽快な推理を見せてくれた「マダミス×バラエティ」の趣旨に沿った内容になっただろう。