The Game Awards 2021大賞の『It Takes Two』、Switch版もやっぱり面白かった

『It Takes Two』Switch版レビュー

 元々はPC/PlayStation/Xbox向けに発売されていた『It Takes Two』だが、これまで『ボーダーランズ レジェンダリー・コレクション』や『トニー・ホーク™ プロ・スケーター™ 1 + 2』などのSwitch版を手掛けてきたTurn Me Up Gamesによって、今回の移植が実現した。

 実際にSwitch版をプレイしてみると、多くの実績を誇る同社が手掛けていることもあり、とても自然に『It Takes Two』の世界に没頭することができた。もちろん、グラフィックやフレームレートなどにおいて、元々のバージョンと一切遜色がないというわけではない。だが、Switchでリリースされている他のソフトと比較するのであれば、それほど大きな違和感を感じる場面は少ないはずだ。

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 分割画面でのプレイ時の挙動や、携帯モードにおけるパフォーマンスや視認性についても大きな問題はなく、場所を問わず、様々な場所やシチュエーションで気軽に本作を楽しめるだろう。またSwitch版は従来の英語音声に加え、日本語、フランス語、ドイツ語、スペイン語音声にも対応している。人によっては日本語音声で遊ぶことで、本作の物語をさらに身近に感じられるのではないだろうか。

 また、Switch版においても「フレンドパス」を利用することが可能だ。これは一人のプレイヤーがソフトを持っていれば、他のプレイヤー(Nintendo Switchの所有者)はソフトを購入する必要なく、無料でオンライン協力プレイを楽しめるというシステムである。「二人プレイ専用」の本作における最大のハードルは何よりも一緒に遊ぶ人を誘う部分にあるわけだが、この「フレンドパス」を活用すれば、周りのSwitchユーザーに気軽に声をかけやすくなるだろう。

 大きな注意点として、本作が操作方法の都合上、一組のJoy-Conを分け合って遊ぶ「おすそわけプレイ」に対応していないことが挙げられる。つまり、ローカル通信で遊ぶ場合は必ずコントローラーを2つ用意する必要がある。またクロスプレイに対応していないため、Switchとそれ以外のハードでは一緒に遊べない点にも留意してほしい。ゲーム内ボイスチャット機能も用意されていないため、オンラインで協力プレイをする場合は、別途スマートフォンなどを活用してコミュニケーションの手段を用意する必要があるだろう。だが、環境さえ用意できれば、あとは不自由なく協力プレイを楽しめるはずだ。

 携帯モードを活用して気軽に遊べる点も重要だが、何よりも日本国内で高いシェアを誇り、家族や友人同士のコミュニケーションの起点にもなっているNintendo Switchで『It Takes Two』を遊べるという、その事実自体がとても嬉しい。すでにNintendo Switchには様々なコミュニケーションのきっかけになる作品が存在しているが、その中でも、本作ほどに協力の質・量・密度を誇る作品はないだろう。もし「誰かと一緒にゲームで遊びたい」と思っているのであれば、本作を選ばない手はない。

 今回、Switch版のリリースをきっかけに改めて『It Takes Two』をプレイして感じたのは、本作がいかに間口が広く、作り込まれた傑作であるかということだ。

 前述した協力プレイの質・量・密度は勿論のこと、単純にプラットフォーム・アクションとして見たときにも、思った通りにスムーズに動かせる操作性の良さや、迷いづらく、それでいて探索しがいのある良質なレベルデザイン、ピクサー映画を彷彿とさせるような美しさと可愛らしさを兼ね備えたグラフィックなど、たくさんの魅力が詰まっている。それはきっと、「プレイヤー同士で協力すること」以外でストレスが生じることのないように、徹底的にベースそのものを磨き上げた結果なのだろう。

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 本作の大ヒットをきっかけに、さまざまな協力プレイの作品に注目が集まるようになったが、今でも『It Takes Two』に匹敵するほどの作品は存在しないように思える。今回のSwitch版の登場をきっかけに、より多くの人々が本作を手に取ることを願っている。コーディとメイが経験したように、いつか二人の大切な思い出になるような体験が、あなた(たち)を待っているはずだ。

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