ゲーム版アカデミー賞? 『The Game Awards』でメトロイドとバイオを抑えた『It Takes Two』の魅力と、賞の今後
年の瀬も押し迫る今日このごろ。コンテンツを愛するわれわれオタクが忘年会で話すことと言えば、ずばりこれではないか。
「今年最高のゲーム、アニメ、漫画、アルバム、小説、カレー、ラーメン……etc、何だった!?」
そう、「僕たち、私たち、俺たちの年間ベスト」だ。
この1年、様々な素晴らしい作品と過ごしためくるめく日々を思い浮かべ、その中でも至福の時間を過ごせた作品については、どうしても声を大にして語りたい。そんな「年間ベスト」を決めたがりなわたしたちにとって、どうしても気になってしまうのが各業界の賞レースだ。
たとえば、SFファンにとってのヒューゴー賞。シネフィルにとってのアカデミー賞。音楽ファンにとってのグラミー賞。これらの賞とその結果は、毎回必ず賛否を呼ぶものの、それでもオタクにとっては最も関心のある「今年最高の作品は何か?」という投げかけに対する答え合わせとして、やはり注目が集まるものだ。
そして近年、ゲーム業界にも業界内外の注目を集め始めた賞が誕生したことをご存知だろうか。その賞の名前は、「The Game Awards」。このアワードは、Kotaku等で活躍するゲームジャーナリストのジェフ・キーリーによって2014年から開催され、最初の年で200万人近い視聴者を集めて以来、2020年には8300万人の視聴者を獲得。一躍、ゲーム業界で最も注目される賞となった。
本来、歴史的な権威が尊重される賞の中で、生まれて僅か7年の「The Game Awards」がここまで多くの視聴者に注目されるようになったことには、同アワードが伝統に囚われず斬新な企画を次々に実行してきた点にある。
まず、このアワードはテレビや衛星放送に頼らず、インターネットで放送され、しかも無料で視聴できるのが大きな特徴だ。YouTubeには専門のチャンネルが用意され、スマホ一つあれば誰でもリアルタイムで視聴することができる。そしてSNSでその様子を視聴者が実況することで話題が話題を呼び、雪だるま式に視聴者を増やしていったのは正に現代ならではのアワードだと言える。
しかし何より特徴的なのは、アワードの合間に各ゲーム会社による広告が挿入される点だ。それも、任天堂やSIE、Microsoftなどゲーム業界では一流の企業がこぞって広告を出稿し、また全く新しいゲームタイトルの発表や、期待作品の新情報が公開されるなど、まるで東京ゲームショウのような発表が続くのだ。
たとえば、今年2021年の「The Game Awards」では外山圭一郎による新作『野狗子: Slitterhead』の発表に加え、スクエニの『バビロンズフォール』、カプコンの『モンスターハンターライズ:サンブレイク』、フロムの『エルデンリング』など、アメリカで開催される賞でありながら日本人も必見の新情報が次々に飛び出し、SNS上などでも大いに話題となった。
今年を振り返りながら、同時に未来への展望も実現する。これによってコアなゲーマーのみならず幅広い人々に注目され、インターネットを介した大胆なプロモーションも実現したと言えるだろう。