スイスと日本は共通点がいっぱい。実際に行ってみたら想像と違った
「スイスはリッチだから」
今回のメディアツアーで、とても印象的だったのが、出会った人の多くが口にした「我々はリッチだから」という言葉だ。
スイスは永世中立国となって以来、世界中の裕福層の資産を預かって低リスクで守ってきた。インフレの影響を受けないように、国の物価は世界トップクラスで高い(滞在中に家電店で単四乾電池4本セットを購入したら日本円にして1300円ほどだった)。
だが、(今回のツアーで話したのは技術者や起業家や大手企業の重役といった人ばかりだが)報酬やサラリーはかなり良いらしく、社会保障や福利厚生も手厚いらしい。
たとえば、バレー地方のロンザ川河畔にあるLONZA株式会社の福利厚生のひとつには、交通費があるという。
通勤定期を出すだけでなく、都市部にショッピングに行くといった移動にかかる全ての金額をカバーするらしい。金銭的負担だけでなく、その地域に住む人のほとんどがLONZAの関係者であることもあり、出勤時間に間に合うように早朝からバスが何本も走るそう。だから、環境のことを考えて車を持たない家庭も多いと聞いた。
スイスは約600万台の自動車が登録され、そのうちの457万台が自家用車。つまり約2人に1人が自動車を所有している計算になるが、LONZAでは自家用車を持つ人の率が低いのだそうだ。
自家用車の維持費が必要ないだけでも、生活に余裕がでるだろう。
これはあくまで一例だが、スイス人がゆとりのある生活を送っているのは見ればわかる。
だが、ひとりひとりが豊かさを感じていて、それが自分の能力に起因するものだけではなく“国単位”でリッチだといえるのは純粋に羨ましい。
その言葉を耳にするたびに、日本で同じようなセリフが誰かの口から出るだろうか、と考えてしまう。
このメディアツアーに参加する前、筆者は『アルプスの少女ハイジ』やセントバーナード、チーズを想像していた。実は、このコミュニケーション・プログラムが、なぜ「Vitality(活力、元気、成長力).Swiss」という名前なのか、何を意味しているのかわからないまま参加した。
だが、帰国してゆっくりと振り返ると、現地で出会った人たちや、街を行き交う人々、大学で学ぶ人々や企業で働く人々は、みなバイタリティに溢れていたような気がする。
いまなら、なぜスイス大使館が「Vitality.Swiss」という名前をつけたのかがわかるかもしれない。
読者の中には、「スイス政府に招待されたメディアツアーなのだからいい面ばかり見てきたのだろう」と思った人もいるだろうか。
たしかに、筆者はスイスの最先端と豊かなリソースを浴びるように見てきた。だが、その中で出会った民間企業の社長は「スイスにも問題はあるし全てがうまく行っているわけではない。スイスはリッチだけど」と言っていた。
「スイスはリッチ」。その部分だけでもなんだか日本はスイスに学ぶ点が多いと感じた。
2025年に開催される日本国際博覧会には、スイスの参加が決まっている。両国は直面する問題に共通点が多いため、スイスのパビリオンに是非注目してほしい。
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