ヒカル、朝倉未来、DJ社長……人気YouTuberに見る、進化するインフルエンサービジネス

 ”YouTuber”が一職業として、世間に認知されるようになってきて久しい。しかし、「小中学生がなりたい職業ランキング」上位にYouTuberがランクインする反面、「YouTuberという職業は10年後には消滅している」という厳しい見立てもある。”好きなことして生きていく”を体現している彼らは、一見華やかに見えるが、変化の激しいインターネットで安定した収入を得る難しさもあり、常に茨の道を歩んでいるのは確かだろう。

 YouTuberに限らず、SNSを通じて生まれたインフルエンサー自体、その大半が儚い存在だ。生き残れるのはごく一部で、去年バズりにバズったインフルエンサーが今年は消えている、ということも珍しくはない。

 そんな生き残りが厳しいインフルエンサー業界で、去年から今年にかけて、新たなトレンドが巻き起こっている。トップYouTuberたちが、イベントなどのプロデュースに回る流れがきているのだ。

 一般的には、インフルエンサーがビジネス臭を出すと、ファンに煙たがられがちだ。しかし当然、長く活動を続けていくにはビジネス視点は必須である。そんな中で、ビジネスがうまいインフルエンサーが長生きする、そんな時代に移り変わってきているのだ。

ヒカル×朝倉未来によるスタートアップリアリティーショー『Nontitle』

第1話「初日から喧嘩勃発!?6名の若者の物語が今はじまる。」

 ビジネス上手なYouTuberと言われて真っ先に思い浮かぶのが、ベテランYouTuber・ヒカルだろう。先日、初の書籍『心配すんな。全部上手くいく。』(徳間書店)を出版したほか、ファミリーレストランのジョイフルを筆頭にブランドとのコラボ案件も多く、YouTubeのプラットフォームを離れたオフラインでも数多くの事業を成功させている。

 そんなヒカルと、人気格闘家兼YouTuberの朝倉未来がアンバサダーを務めたYouTube番組『Nontitle~この1000万あなたならどう使う?~』。2022年4月から放送されたこの番組は、事業立ち上げを目指す男女6名が、3カ月間の共同生活をしながら事業を作り出す様子を追う、ドキュメンタリーショーだ。

 参加者は2つのチームに分かれ、それぞれビジネスプランを立案。最終プレゼンの場で勝利した チームには、ヒカル、朝倉未来両名が実際に事業への投資を行なった。この番組を通して生まれたプロダクトは、なんと初日売り上げ1億円を突破。エンタメとしてのリアリティーショーとしてだけでなく、ビジネスとしても成功を収める結果となった。

朝倉未来の格闘技イベント『BreakingDown』

BreakingDown5全試合公開

 朝倉未来といえば、自身がスペシャルアドバイザーを務める格闘技イベント『BreakingDown』も外せない。2021年に立ち上げたこのイベントは、回を重ねるごとに話題を呼び、新たなスターも続々と輩出されていった。直近開催された『BreakingDown5』では、YouTube関連動画の総再生数が、なんと1億回を超えるほどの人気である。

 同大会の観戦チケットは、オフライン観戦チケットと、オンラインでライブ視聴できるペイパービューチケットの2種類を採用。スポンサー収入もあるものの、収益の大半はペイパービューが占めているという。

 『BreakingDown』の興行収入額については公式発表はないものの、朝倉未来個人の年収が自己申告で約30億円ということからも、どれほどの数字か、おおよそ想像はつくだろう。

レペゼンフォックス(ex.レペゼン地球)×令和の虎

【レペゼンの虎】垢BAN仲村、わきを、醤油ニキ、よりひと、へずまりゅう参戦! #令和の虎 竹之内社長

 レペゼンフォックス(ex.レペゼン地球)のDJ社長と令和の虎のコラボ企画も、記憶に新しい。令和の虎チャンネルに出演したDJ社長は、希望金額の1500万円を見事獲得。その後、虎たちとのコラボ生配信企画「レペゼンの虎」も複数回放送され、Twitterにもトレンド入りするなど、大いに話題となった。

 こちらはあくまでコラボレーションの一環としての企画ではあったものの、投資・ビジネス要素を絡めた内容はYouTuberコラボの中では相当珍しいケースと言えるだろう。

進化するインフルエンサービジネス

 「インフルエンサービジネス」といえば、YouTubeの広告収益や案件紹介、アパレルブランドなどでの商品販売などが一般的なイメージだろう。しかし、上記のように、このところトップインフルエンサーたちのビジネスモデルには新たな潮流が生まれはじめている。

 というのも、インフルエンサー単体の人気を維持しながらビジネスを継続するのは、相当に困難だからだ。しかし、インフルエンサーが表に立つだけでなく、その影響力を生かしてプロデュースにまわることで、発案者であるインフルエンサーのファン以外の層まで巻き込む企画、経済効果を生み出せる。さらに、そうした企画からは、新人スターが見出されることも少なくない。

 「個の時代」はすでに終わり、「コミュニティ」や「チーム」の時代に移り変わっている、とも言われているが、トップインフルエンサーたちはまさに現在、そういった道をひた走っているのだろう。これまでのインフルエンサー像とは異なる、新たな活動形態が、今後のインフルエンサーマーケティングにおいての新常識となるかもしれない。

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