国産FPSは「ガンダム」と共にあった? プレステ初期から『ガンエボ』へ繋がる系譜を読み解く

国産FPSは「ガンダム」と共にあった?

 バンダイナムコオンラインは9月22日、基本プレイ無料タイトル『GUNDAM EVOLUTION』(ガンエボ)をPC向けにリリースした(PS4/PS5版は12月1日にリリース予定)。

GUNDAM EVOLUTION Season 1 Sortie トレーラー

 『ガンエボ』は「機動戦士ガンダム」(ガンダム)シリーズを題材に掲げたFPSで、6対6のチーム戦を主軸としているのが特徴。プレイヤーは計17機(2022年10月時点)のモビルスーツ(ガンダムに登場する人型兵器)の中から1機を選択し、チームメンバーと協力しながら各種目標の達成を目指す。

 同作はサーバーに関する不具合やランクマッチの問題点を抱えながらも、こまめなメンテナンスでそれらを解消。また、賞金総額700万に上る国内eスポーツ大会「ガンダムゲームグランプリ2023」のメイン種目に採用されたりと、既存のFPSファンや「ガンダム」シリーズの愛好者を含め、国境やコミュニティの垣根を越えて注目を浴びる結果となった。

GUNDAM EVOLUTION|ITEM Pack ”Abyss Guardian” C 紹介

 国内でも流行したFPS作品と言えば、「Call of Duty」や「Battlefield」など、その多くが海外に拠点を構えるメーカーのものだった。しかし、先日デビューを果たした『ガンエボ』は日本に本拠を置くバンダイナムコグループが開発したFPS作品である。これまでに耳目を集めたFPS作品の多くが国外産であった事例を鑑みても、国産FPSがグローバルに認知されているのは興味深い事実と言えるだろう。

 そして興味深い事実がもう1点。それは、”国産FPS作品群の中に「ガンダム」ゲームが数多く含まれている”ことだ。冒頭で述べた『ガンエボ』はもちろん、プレイステーション(PS)の『機動戦士ガンダム』をはじめ、複数の「ガンダム』ゲームがFPSの形式を取り入れている。無論それらの全てが現在のゲーム市場を席巻しているFPS作品と同様のシステムとは言えないものの、「一人称視点(コックピット視点)のシューティングゲーム」という点において一貫した共通項がみられる(当然ガンダム系統以外の国産FPSも存在する)。

 そこで今回は、国産FPSの歴史を形作ってきた「ガンダム」ゲームのうち、ターニングポイントになったであろう作品をピックアップ。システム面の変遷や作品の魅力について考える。

『機動戦士ガンダム』(1995年/プレイステーション)

 1995年6月。PSの登場から約7ヶ月後に発売されたのが、バンダイ(現バンダイナムコエンターテインメント)による『機動戦士ガンダム』。タイトル名の通り、本作は1979年放映のTVアニメ『機動戦士ガンダム』に基づくシューティングゲームであり、プレイヤーは主人公「アムロ・レイ」を操ってジオン公国との戦いに身を投じていく。乗り込むMSは”連邦の白い悪魔”としてジオン側に恐れられた「ガンダム」。プレイヤーはTVアニメ版で描かれた一年戦争の様相を各ミッションを通して追体験する……というのが大まかな内容だ。なお、発売から1年後にはアニメ本編の演出を盛り込んだアップグレード版も発売された。

機動戦士ガンダム-プレイシーン

 『機動戦士ガンダム』の特徴は、宇宙空間や地球上におけるMS戦を、”一人称視点によるシューティングゲーム”として捉えたところにある。「ガンダム」ゲームと言えば後年の「ガンダムVS」シリーズに端を発するアクション作品(三人称視点)が有名だが、本作はコックピット視点を通して敵MS(ザク等)を視認し、ガンダムの右手に装備したビームライフルで1機ずつ撃ち抜いていく(シールドによる防御も可能)。その挙動は現代におけるFPS作品の主流からやや離れていたものの、本作は後述する「ガンダム」系統のFPS作品に影響を与えただけでなく、数多くない国産FPSの系譜を形作る重要な礎になった。

機動戦士ガンダム外伝 THE BLUE DESTINY-プレイシーン

 『機動戦士ガンダム』のリリースから2年後には、セガサターン用ソフト『機動戦士ガンダム外伝 THE BLUE DESTINY』(ブルーデスティニー)が全三部作で登場。一年戦争と世界観を共有した外伝作品をモチーフとし、FPS要素を再び取り入れた上でブラッシュアップが図られた。改善点としては「3Dフィールド内の自由な移動(ジャンプ含む)」「ビームサーベルによる格闘攻撃の追加」等が挙げられる。

 その後のドリームキャスト用ソフト『機動戦士ガンダム外伝 コロニーの落ちた地で…』でも、『ブルーデスティニー』のゲームシステムを意欲的に踏襲。このように90年代中盤から末期にかけては、上記の作品たちが「ガンダム」シリーズにおけるFPSの基礎を荒削りながらも築き上げていった。

『機動戦士ガンダム MS戦線0079』(2008年/Wii)

 90年代に立ち上がりを見せた「ガンダム」シリーズのFPS作品は、その多くが”コックピット視点”によるシューティングゲームであった。そんな従来作と一線を画したのが、2009年のWii用ソフト『機動戦士ガンダム MS戦線0079』(MS戦線0079)である。

 『MS戦線0079』は、Wiiのハード性能を生かした独特の操作方法が最大の特徴。「MSの姿勢制御」や「武器の照準合わせ」など、ゲーム進行に関わる動作のほとんどに直感的な操作系統が割り当てられている。それゆえか、従来作と同じコックピット視点ながらも、本作はコックピット内部のフレームや計器等が画面内に映っておらず、他のFPS作品に近いプレイヤー視点が確立された。

機動戦士ガンダム MS戦線0079-プレイシーン

 2008年になると、Xbox360用ソフト『ガンダム オペレーショントロイ』が発売。こちらはMS同士に加えて兵士らによる白兵戦も重視する等、従来作よりもミリタリー色を押し進めたリアル路線を辿ることに。だが一方、「ゲーム内3Dモデルの挙動がおかしい」「最大参加プレイヤー数の少なさ」「調整不足が目立つゲームバランス」……等々、様々な不満点が後に指摘され、”「ガンダム」シリーズ初の本格FPS”という前触れが霞むほどに厳しい意見が乱立する結果となった。

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