"メアド交換"にも使われた赤外線通信 Bluetoothに代替されたその歴史を辿る

赤外線通信の歴史を辿る

・高速化するもBluetoothに破れる

 2006年ごろには早稲田大学やシャープなどが中心となって、赤外線レーザーダイオードを使い、100Mbpsを超える高速赤外線通信ハードウェア「UFIR」(Ultra-Fast Infra Red)および高速通信プロトコル「IrBurst」が登場。さらに2009年にはKDDIらが赤外線LEDを利用して最大1Gbpsの通信を行う「Giga-IR」を開発するなど、IrDA自体はどんどん進化を続けて行った。

 しかし、この頃から状況が変化していく。2001年ごろに普及が始まったBluetoothは、2004年の道路交通法改正で運転中の通話が禁止されたことから、ハンズフリー通話との兼ね合いで注目されるようになっていたが、2010年頃からスマートフォンの普及に合わせてどんどん対応機器が増えていく。Bluetoothは省電力で周辺機器との接続という点でIrDAと完全に競合する規格であり、BluetoothにはIrDAにはない「一対多接続」「直接見えてなくても接続できる」「距離も数メートル程度離れられる」といったメリットも数多かった。

 また、スマートフォンの代名詞ともなったiPhoneは(元祖PDAであるApple Newtonが赤外線通信(当初はシャープ独自のASK/DASK方式、のちにIrDAをサポート)を搭載していたのとは対照的に) 赤外線通信を備えず、代わりにWi-FiとBluetoothを搭載していた。これらは消費電力が高いものの、高速かつPCなどとの親和性が高いため、PCやモデムと接続するのに、わざわざ不便なIrDAを搭載する意味がなかったのだ。そしてガラケーとスマホの販売台数が逆転する頃には、IrDAを使う機会自体が少なくなってしまった。

Photo by Dan Taylor(CC BY 2.0)

 こうしてBluetoothに敗れた赤外線通信だが、遅く不便な反面、電波を使わないため、無線LANなどと競合することがないという利点もある。技術的にもすっかり枯れた技術であるため、信頼性も高く、低コストで済むため、家電には最適なのだ。スマート家電にもスマホから操作できるユニバーサル赤外線リモコンなどがあるが、こうした形で今後も赤外線通信自体は暮らしの中で一定の役割を果たしていくだろう。

 ところで、Xiaomiは現在もスマートフォンに「IRブラスター」と呼ぶ赤外線ポートを装備する数少ないメーカーだ。ただしこれはIrDAと互換性はなく、主に「Miリモート」というアプリを介して家電のコントロールを行うためのポートとして機能している。今も生き残っている赤外線ポートに興味のある方は、こうした製品にも目を向けてみてはいかがだろうか。

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