変わりゆく『SCHOOL OF LOCK!』と『ボカコレ』が生み出す相乗効果。higma×ろーある&こもり校長とぺえ教頭に聞く
こもり校長&ぺえ教頭インタビュー。番組と「今の10代」に訪れた“変化の季節”
——お二人の体制の番組になってから、もうすぐ1年が経とうとしています。お互いの関係性に変化はありましたか?
ぺえ教頭:始まったばかりの時よりも、特にここ最近お互いが言葉をすごく大切に紡ごうとしている感じがする。だから、そういった面で言うと、最初の時よりも上っ面な会話じゃなくて、お互いの心の会話ができるようになってきた感じはする。上っ面な話をしても多分、お互いに「いや、それ本当は思ってないじゃん」というのが、分かり始めちゃったから(笑)。
こもり校長:校長先生という自分の立ち位置は、パーソナリティの中でちょっと特殊だと思うんですけど、ぺえさんが言っている言葉を紡ごうとする感じはすごく意識していて。今の時代の流れだと、自分の「頑張れ」という一言より、ぺえさんの言う「頑張らなくていいよ」のほうが、いまの10代にものすごく伝わると思うんです。だから、自分が多く言葉を喋る必要もないのかなって。『SCHOOL OF LOCK!』という番組名のまま、番組の中身が変わっていくごとに、ぺえさんとの距離感も変わっていっている感じがします。
——また、『SCHOOL OF LOCK!』のメインリスナーは10代ですが、今の10代と昔の10代で変わってきていると感じることもあります?
こもり校長:今の10代は昔の10代とは違って、すでに明確な答えを見つけていると思います。たとえば、16年前に学校でグループに溶け込めない10代の子がいたとします。当時はそれに名前はなかったですけど、いまでは「コミュニケーション障害」などの明確な名前が付けられていますよね。16年前には、ジェンダーレスなんて言葉はもちろんなくて。でもいまはジェンダーレスという言葉が存在して、自分が何者かがわかるんですよ。昔は10代に「分からない何かを一緒に乗り越えていこうよ」って言っていた一方で、今の10代には、じゃあ自分の持っている何かを自分のどういう魅力で武器にしてと考える中で、もっと寄り添っていく必要があるのかなと。
——名前のなかったものに名前がついて、何かしらであるとカテゴライズできるようになっていったからこそ、それぞれ同士のつながりもできるメリットもありますしね。
こもり校長:なので、今の『SCHOOL OF LOCK!』も、熱血みたいなイメージはもちろんあるんですけど、もう昔の「頑張ろうぜ!」じゃないのかなって。すでに頑張っているんだから、今の状況を愛しましょうよという。やっぱり、自分よりかは、ぺえさんの発する言葉がすごくリアルなので、今はぺえさんの紡ぐ言葉を大事に思っていますね。
ぺえ教頭:いまの若い子たちは、成功する根拠がないと動くことを恐れる。意味のないことをしたがらない。すべて理由がないと動かない。そんな気がする。特にバカになることをすごく恐れているのかもしれない。ネット社会にもなってSNSもすごく発達して、失敗した人の映像もたくさん見れるようになった。逆に成功した人の映像もたくさん見れるようになった。一気に踏み外して、どん底になってしまった人間たちの様を、すごい生々しく、リアルタイムで見ることができるから、失敗することがすごく怖いんだろうな。だから、自分が幸せだと思っているこの状況とか環境も長くは続かないんだろうと思って自分の未来にそこまで期待していない。よく言えば、冷静な目を持っているんですけど、いまの若い子たちにはそういうところをすごく感じますね。
——これまでの質問では、割と人そのものについてお話しいただきましたが、『SCHOOL OF LOCK!』は音楽が関わってくる番組でもあるので、音楽はどう変わってきているかということについても伺いたいです。
こもり校長:『SCHOOL OF LOCK!』は番組名に“ロック”が入っているぐらいなので、開局当時は、バンドサウンドを流すラジオ番組という印象が強くて。それこそ講師陣もバンドを組んでいるミュージシャンの方が多かったんです。でも、時代とともに、音楽のジャンルもどんどん細切れになってきているので、そういった意味でも番組はもうバンドを組んでいるミュージシャンだけに限らず、いろいろな方を講師として呼んでいます。番組として、より細かくいろんな場面に合わせながらいろんな曲を届ける中で、いろんな生徒に共感してもらいやすくなってきたんじゃないかなと思いますね。
ぺえ教頭:若い子はすごくバカになることを恐れる時代だからこそ、もっと先陣を切ってバカになってくれるアーティストが、私は出てきてほしいなって正直思っていて。私の青春時代、先陣を切ってバカになってくれていたのは、ORANGE RANGEとモーニング娘。かな。ああやって真面目に美しいものとして引っ張ってくれるバカな曲がたくさんあったから、嫌なことがあっても明日になったら忘れているか!みたいな感覚になれていたんです。でも、今のアーティストは、軽いノリの曲も出すことを恐れているのかな。だからちょっと時代には逆らっているかもしれないけど、そこはちょっと熱さがある音楽とか、歌詞にそこまで意味がなくてみんなでバカになって歌えるような歌を私は聴きたいなって思っているかな。
——いまはいろんなものに意味が求められすぎていて、頭を空っぽにしたい時に聴く音楽がなくなってきましたよね。
ぺえ教頭:そうそう(笑)。
——『SCHOOL OF LOCK!』の公式YouTubeチャンネルでは今年3月22日に始まった放送のひとつとして『ボカロLOCKS!』を取り上げてみたことで、ボカロ曲、ボカロPに対しての考え方が変わってきた感覚ってありますか?
こもり校長:僕はボカロを通ってこなかったので、すごく興味深いですね。やっぱりインターネットの中で歌い手さんがいてとか、ボカロPがいて、そもそもコンピューターが歌っていて、というのが当たり前になっている文化に入り込むのが、面白い。そこから派生して、VTuberさんとかが歌ってみた動画をあげた時のミュージックビデオのトレースの仕方が違うのも1個の世界のネットワークとしてもう出来上がっているんだって。そういうところにダイブしていく感覚は、やっぱりこのボカロの文化が発展していっているなと感じさせられる。ファンとして、すごく自分は楽しませてもらっていますね。
——こもり校長がこれまで向き合ってきたフィジカルなポップス・ダンスミュージックなどとは、また違うカルチャーですもんね。
こもり校長:まず目に見えるインパクトがそもそも僕たちとは桁外れに違う。それだけでも面白いのに音楽性があったりして。あと、そこで関わる人たちによって1個の曲が無限にバズる可能性があるのも面白いなと思いますね。それは特殊なことで、ボカロの世界じゃないとないことだよなと。僕らの中でのカバー曲となると、オリジナルを超えられない部分がどうしてもあるんですけど、ボカロの世界ではカバーした人の作品がオリジナルになっていく。あの感覚ってすごいなって思いますね。
ぺえ教頭:普段、80年代〜90年代の曲ばっかり聴いている私からしてみると、ボカロという新しい音楽に踏み込むことは、ある種恐怖に近くて、私にボカロのなにがわかるんだろうと最初は思っていた。全然わからなかったから、ボカロ=初音ミクっていうイメージからスタートしていって。その中でいろんな生徒がおすすめしてくれる曲を聴いたり、ボカロに詳しい方のお話を聴いていく中で、ボカロってこんなにいろんな顔があるのねと驚きました。ボカロ曲がこんなに人の心のように聴こえてくるんだ、こんなに曲に人間味を感じるんだと。だからいろんな曲を聴いていくなかで、もっと知りたいとかそういう前向きな気持ちがたくさん出てくるようになった。最初の私みたいにさ、全然ボカロを知らない人たちがたくさんいると思うから、同じ気持ちになってほしいな。いまはボカロが好きになりました(笑)。
——『ボカコレ2022春』のSCHOOL OF LOCK!賞にはhigmaさんが選ばれました。彼は番組と縁があって、もともとは『閃光ライオット』に応募した過去があったと聞きましたが、実際にお二人はhigmaさんをどう見ていますか。
こもり校長:この『SCHOOL OF LOCK!』を聴いてくださっていた時、もちろん僕はまだ『SCHOOL OF LOCK!』に関わっていないですが、そういうふうに時を経て絡めるのは、先代のパーソナリティーの方々が、丁寧に番組を作り上げて向き合ってきたからこそなわけで。そう考えると、いまの10代の生徒とも大切に向き合わないとなと、より感じましたね。今後、僕らが辞めていって、『SCHOOL OF LOCK!』が続いていった時に、同じような出来事が起こるのを想像したら、エモいことだなと。
ぺえ教頭:higmaさんは本当に人柄が良くて。『SCHOOL OF LOCK!』の生徒として若い時代を歩んできた中で、人柄のいいhigmaさんのような人が出てきて、いま、温かい曲を作ってくれている。higmaさんが『SCHOOL OF LOCK!』を聴いていた時は私も『SCHOOL OF LOCK!』に関わっていないですが、この番組があり続けた意味や理由があって嬉しいなと思います。
——これからお二人の体制の『SCHOOL OF LOCK!』が2年目に向かっていく中で、番組自体をどうしていきたいですか。
ぺえ教頭:“人間の匂いがプンプンする番組”に私はできればいいなと思っていて。校長と教頭としてやっている私たち自身も人間であって、いろんな感情が日々変わっていく中で、それ自体も包み隠さずに番組の1つとしてやっていきたい。聴いている子たちも、毎日いろんな想いを抱えて夜ここに来てくれてるからこそ、人間のバイオリズム的な波を一緒に共有できるような番組にしたいですね。だからこそ無理して、私自身も元気のない日に元気にしようとも思わない。今日行きたくないなって思ったら、ちょっと休んじゃおうかなって(笑)。綺麗な番組ではあり続けたいんですけど、綺麗事にはしたくない感じは、1年やって、ますます感じてきているところではあります。
こもり校長:この番組を、higmaさんのジングルみたいにしたいなと思ったというのが1個あって。higmaさんって、もともと『SCHOOL OF LOCK!』をリスナーとして聴いてくれていて、今回、3パターンのジングルを作ってくださったんです。1個、学校をテーマにしたジングルがあるんですけど、「登校して教室に入った時にみんながわいわい楽しんでいる様子を曲に入れました」って最初、higmaさんから説明を受けた時に、そこから受ける印象が、すごくエモーショナルで、きらめきを感じたんです。この学校って10代の悩みだったり、10代のいまに向き合っている部分もあるので、葛藤が大きいんです。もしかしたらhigmaさんが作ってくれるジングルがどよんとしているものだった可能性もあるじゃないですか。でもその10代を経て大人になったhigmaさんが『SCHOOL OF LOCK!』をイメージしたら、ああいうきらめきみたいなものを感じてくれていたんだというのが嬉しくて。higmaさんのジングルみたいに、いまの自分たちが生徒に一生懸命向き合うことで、彼らが30歳になった時に「あの番組ってキラキラしていたよね」と言われるような番組を作れたらいいなと思いました。
——『ボカロLOCKS!』では、 SCHOOL OF LOCK!賞以外にも、とりあえず曲を作ったという未来のボカロPからのメッセージも随時募集しています。そんな未来のボカロPになり得る才能に対してのメッセージがあれば教えてください。
こもり校長:なんでも伝えてほしいなとは思いますね。それがたとえ自分で聴いてみて「誰かよりも劣っている」と感じても聴かせてほしいなって。「初めて、打ち込みのソフト作りました」「ドラムのキックしか入ってないです」「ベースができるのでベースの音しか打ち込めていないです」でもいいし、曲として成立していないじゃんと言われるものでも僕らには聴かせてほしい。なにを伝えたいかを具現化できる場所にしたいから。心の中ではいろいろ思うことがあっても、人に話さないことでわからないまま終わっちゃうことは、とても勿体ないと思うので。だから、僕らには全部見せてほしいなと思います。間違っていると思うほうが正解になり得ることもあるので、そういう糸口として僕らを使ってもらえればいいかな。
ぺえ教頭:私も、自分がいま抱えている直感をそのままぶつけて、私たちに聴かせてほしいなって思う。やっぱりこれまで踏み入れたことのない未知の世界に、足を踏み入れるのってすごく怖いことだとは思うんですけど、まだ未知で失敗も正解もないからこそ「思い切ってやっちゃって!と思います。やっぱり『SCHOOL OF LOCK!』って、いろんな感覚を持っている生徒が聴いてくれている番組なので、一層正解がないものを楽しみに待っていますので、そのまんまの自分をたくさんぶつけてほしいなと思います。
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■higma
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新曲「ナイトレコード」(10月6日公開)
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10月3日(月)〜7日(金)「関内デビル」(23:30〜24:00 / デジタル3ch テレビ神奈川)にゲスト出演中
■番組概要
『SCHOOL OF LOCK!』
全国の10代たちの未来の鍵(LOCK)を握るもうひとつの学校!"をコンセプトに、TOKYO FM をはじめとするJFN38局ネットで放送中のラジオ番組。パーソナリティのこもり校長・ぺえ教頭が人気アーティストをレギュラー講師陣に迎え、平日夜10時から毎日お届けしています。
放送日時: 毎週月曜日~金曜日22:00~23:55
放送局 : TOKYO FMをはじめとするJFN38局ネット(※一部をのぞく)
番組HP: https://www.tfm.co.jp/lock/
■イベント情報
『The VOCALOID Collection ~2022 Autumn~』
日時:2022年10月8日(土)~10日(月)※7日は前夜祭
場所 :ニコニコTOPページなどのネットプラットフォームほか
公式Twitter :https://twitter.com/the_voca_colle
公式サイト:https://vocaloid-collection.jp/
協賛:東武トップツアーズ / R11R / narasu / 株式会社ローソン
メディアパートナー:Interfm / FM802 / MTV / 関内デビル / GAKUON! / JFN / smart / テレビ朝日ミュージック / SCHOOL OF LOCK! / NACK5 / BOMBER-E! / ミューパラTV / RADIO MIKU
『ミュージック超会議2022』
日時: 2022年10月8日(土)~10月16日(日)
ネット開催:10月8日(土)~16日(日)
リアル開催:10月15日(土)・16日(日)
〈場所〉
ネット開催:ニコニコ公式サイト・総合TOP(https://www.nicovideo.jp/)
リアル開催:さいたまスーパーアリーナ
主催:ドワンゴ
ミュージック超会議 公式サイト:https://chokaigi.jp/
Twitter公式アカウント:https://twitter.com/chokaigi_PR
〈協賛一覧〉
超パーティー協賛:#コンパス / 株式会社クレディセゾン / Amadeus Code / 東武トップツアーズ
The VOCALOID Collection協賛:東武トップツアーズ / R11R / narasu / 株式会社ローソン