『ドラゴンクエストV』30周年 もう一つの人生を追体験する不朽の名作

『ドラゴンクエストV』30周年

 2022年9月27日は、名作RPG『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』の発売30周年の日となる。親子3代にわたる壮大な大河小説的ストーリーを描いた本作は、発売後何度もリメイクされ、今なお多くのファンに愛され続けている不朽の名作だ。

 もうすでに魅力を語られ尽くした感もあるタイトルだが、今回は30周年を機に改めて『ドラゴンクエストV』がどんな作品だったのか振り返ってみよう。本稿では『ドラゴンクエストV』のストーリーに関わるネタバレを多分に含むため、未プレイの方は注意してご覧いただきたい。

親子3代にわたる壮大なシナリオ

 『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』は、1992年9月27日にリリースされた。シリーズとしては初めてスーパーファミコンからリリースされたタイトルであり、前作『ドラゴンクエストIV 導かれし者たち』に連なる「天空シリーズ」2作目でもある。

 本作の見どころは、なんといっても親子3代にわたる壮大なストーリーだろう。主人公が父「パパス」と共に旅をする「少年時代」、過酷な奴隷時代を乗り越えて勇者を探す旅に出る「青年時代(前半)」、そして主人公に子どもが生まれ、魔王打倒を目指す「青年時代(後半)」の3部構成となっているのが特徴だ。ゲームスタートからエンディングまでの作中での時間経過は優に20年を超える。一人のキャラクターの人生をこれほど長きにわたって描いた『ドラクエ』は、後にも先にもこの『V』ぐらいのものである。

 また、それまでは一貫して主人公が勇者であったシリーズでありながら、『ドラゴンクエストV』の主人公は勇者ではない。しかも、そんな主人公が探し求めていた勇者が自分の子どもとして生まれてくるという捻りのあるストーリー展開には、当時驚かされたプレイヤーも多かったことだろう。

 そして、本作のストーリーのハイライトといえるのが、中盤に用意された結婚イベントだ。結婚イベントにおいてプレイヤーは、「幼馴染ビアンカと大富豪の娘フローラのどちらと結婚するのか」という重大な選択を迫られる。

この『ドラゴンクエストV』における結婚は、今日に至るまでシリーズファンの論争の火種となっている。少年時代をともに過ごした(ストーリーで優遇されている)「ビアンカ」を選ぶのか、優秀な呪文を習得し、大富豪の父親からの支援を受けられる(性能的に優遇されている)「フローラ」を選ぶのかといった議論は、未だ『ドラクエ』ファンの間にある種の分断を生んでいる。

 しかしながら、そんな論争が続いていること自体が、『ドラクエV』が多くのファンにとって忘れられないタイトルである証左だろう。結婚や出産といったライフイベントがストーリーに盛り込まれたことで、本作は多くのプレイヤーにとって忘れがたい体験を生んだ。「愛がある、冒険がある、人生がある」というキャッチコピーが示す通り、冒険に満ち溢れたもう一つの人生を追体験できる作品といえるだろう。

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