YouTubeはクリエイターにどのように寄り添ってきたのか YouTube Japan担当者と振り返る15年間【後編】

YouTubeはクリエイターにどう寄り添ってきた?【後編】

「責任ある成長」を重点に置くYouTube

ーーコロナ禍を機に、全体的な視聴者層の変化は何か感じられましたか?

イネス:現在、日本のユーザー数は6900万人に及び、そのうち20代から40代が大半を占めています。視聴者層自体に大きな変化はありませんが、有名人が開設したチャンネルに興味を持ち、YouTubeを視聴するようになった方は多いのではと。

ーーこれほど多くのユーザー数を抱えるYouTubeは、ある意味で”社会インフラ”という見方もできます。その意味で、健全で正しいコンテンツを届けていくという責任と、自由な表現を許容するプラットフォームとしてのあり方について、そのバランスはどうお考えでしょうか。

イネス:大前提として、YouTubeには「開かれた場でありたい」という思いがあります。YouTubeのCEOであるスーザン・ウォジスキはポーランド系アメリカ人で、彼女の祖父が共産主義時代のポーランドに住んでおり、昔は祖父と手紙のやり取りする際に、ポーランド政府の検閲を受けていたという背景があります。そんなこともあって、YouTubeのCEO自身も表現の自由というものを非常に重要視しています。

 一方で、自由は責任を伴うものです。そのため、コミュニティガイドラインというYouTube上での交通ルールのようなものを設けています。2012年辺りは、YouTubeにとっては一番の成長期だったこともあり、いかにユーザーに使ってもらうプラットフォームになるかを重点的に考えていましたが、ここ数年では単に成長させるのではなく“Responsible Growth(責任ある成長)”をかなり意識するようになりました。「4つの責任(Remove・Raise・Reduce・Reward)」を定め、プラットフォームの健全性や安全性を追求しながら運営することで、責任ある成長を成し遂げられるように心がけています。

ーーサービスの成長を優先し、知名度やユーザーを獲得していく段階においては、刺激的でインパクトのあるコンテンツも目立っていましたが、ガイドラインとしては、より有益なものを届けるという方向性にシフトしてきましたね。

イネス:YouTubeは、クリエイターや視聴者など、YouTubeに訪れる全てのユーザーの皆様が安心してYouTubeをご利用いただけることが最優先事項だと考えています。そのために最初からコミュニティ ガイドラインを設け、YouTube で許可されること、禁止されることを定め、動画、コメント、リンク、サムネイルなど YouTube プラットフォーム上のあらゆる種類のコンテンツに適用します。

 社会の変化や時流を捉え、コミュニティガイドラインのポリシー見直しも行なっていますし、ユーザーやクリエイターさんの声も反映できるように意識しています。繰り返しになりますが、オープンな場でありクリエイターさんが自由にコンテンツを作れることも重要視しているので、それに伴う「責任」とのバランスを考えることがとても重要です。

ーー今後について、YouTubeにどんな機能を実装し、成長させていきますか。

イネス:クリエイターさんに対して、今ある収益化の機能に加えて何かプラスできるものはないか。あるいは既存のやり方以外にファンと繋がる仕組みはないのか、ということを常に気にしています。トレンドの変化によっても新たな機能追加を検討していきますし、たとえばアメリカでは、ショッピング機能の開発に動いていて、これがきちんと実装されれば、クリエイターさんにとっては今後注目のプロダクトになるだろうと予想しています。また最近はYouTubeをテレビで観るユーザーが増えているので、スマートフォンをリモコンにして動画を視聴できる機能も注目されています。

ーーよりクリエイターとユーザーにとっての利便性を上げていく、ということですね。最後に、今後注目が集まりそうなクリエイターやジャンルがあれば教えてください。

イネス:今後も多様なクリエイターさんが評価されればいいなと考えていますが、例えば、コロナ禍が続いて学校に通えない日が続いたとき、YouTubeのコンテンツで勉強や習いごとをする、というユーザーも増えたように、状況に応じて注目を集めるジャンルは変わっていくでしょう。個人的にはゲーム実況なども大好きですし、偏りなく、さまざまなクリエイターさんが活躍できる場になるよう、引き続き尽力していきたいと考えています。

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